000000

このフォームからは投稿できません。
name
e-mail
url
subject
comment
小説投稿掲示板

[ 指定コメント (No.990) の関連スレッドを表示しています。 ]

◆ クリスマス? アルバイトでした 投稿者:シリウス  引用する 
トーレ

パーソナルトルーパー、通称PT。

異星人の襲撃を受けた事に際して開発が決定した人型機動兵器。

その機能の高さに加えて、あらゆる状況に対応出来る汎用性の高さ。

従来の戦場の主流であった戦車や航空機に代わって出てきた量産兵器であった。

これ以上の量産兵器は出てこない。

地球連邦軍に所属する者は誰もがそう思い、戦ってきた。

しかし、兵器もまた既に新たな段階に秘密裏に進んでいたのだった。



スーパーロボット大戦OG・アストレイ

第三話『リオン』



アイドネウス島、地下ドック。

其処では来るべき戦場に向けて、新たな兵器を量産、開発を行っていた。

そう、アーマードモジュール『リオン』を―――。

その姿にひと際、興奮するあまり、笑みを隠しきれない男が一人。


「あはははははははははは! こいつはすげえ! 随分と面白え兵器が出来上がってんじゃねえか! なあ、おい!」


ベイル=シュノールベルトであった。

そんな姿に周囲に呆れながら見つめていた。


「お前は新しいオモチャを手に入れて喜ぶガキか?」

「おいおい、つれねえ反応すんじゃねえよ。アンタ達だって分かってんだろ? コイツ等が意味する事をよ」

「それでもオーバーリアクション過ぎると思うよ」

「そんな事を言っても、少尉だってあんま信じて無かったでしょうが!」


呆れながらも彼らもまた分かっている。

リオンの性能や特徴。そして、今後の戦争の状況を大きく変えることを―――。

何故ならこのリオンが本格的に量産が行われれば、航空機の時代に終わりを告げる。

その理由はたった一つ、小型テスラ・ドライブの搭載された事である。

従来の航空機は燃料を燃焼させて、その反動で飛行するものだった。

しかし、このテスラ・ドライブは従来の飛行ユニットとは大きく変わっていた。

周囲の重力に干渉・制御を行う事で「無重力状態」にすることで、重力圏内でも自在に飛行が出来る代物。

結果、従来の航空機では不可能だった変幻自在の飛行も可能になったのだ。

それでも今までは欠点があった。

それはテスラ・ドライブの大きさにあった。

現在までテスラ・ドライブが使われたのは戦艦級にしか搭載出来ず、小型化など到底不可能と言われていた。

それが今、この『リオン』の中に搭載されている。


「確かに資料を見ても信じ辛かったけど、こうして生で見るとね」

「まあ、無理もないさ。こいつの登場で恐らく戦場は一変するだろうな」


アキトの言葉に内心同意するメンバー達。

現在地球連邦軍が所有するPT『ゲシュペンスト』。

その汎用性の高さと質の高さも彼らは知っている。

しかし、その機体の重量やテスラ・ドライブを持っていない為、空中での移動が制限されてしまう。

このリオンは違う。

空中を自在に飛び回り、PTサイズの大きさを持つ人型機動兵器。

彼らは自らの頭上を支配されたようなものだった。


「ふふ、どうやら気に入ってもらえたようだね」

「ええ、そりゃあもう!」

「私達も見せた甲斐があったというものかな」


セフィリアは目の前に並ぶリオンの下へと近づいていく。

その後、すぐに乗り手であるアキト達へと視線を向ける。


「一応君達にはそのままリオンに乗ってもらう事になるだろうね」

「それはまた突然ですね。てっきりあそこで開発しているF−32型の航空機からと思っていましたが」

「そんな事はさせないさ。少なくとも私の部隊に居る以上は君達には窮屈な思いはさせないつもりだよ」

「そりゃあ随分と大きく出たな、艦長」


ハヤトは苦笑する。

此処のメンバーを窮屈にさせない等、ほぼ難しいと言える。

経歴を見た限り、誰もが手を引くような連中を集めたような小隊。

一切命令を効かず、己が信じる人間にしか従属しないベイル=シュノームベルトが良い例。

ハヤトもアキトもリョーヤですら経歴に問題があるのだ。

そんな連中が一か所に集まった小隊に対して、どうして窮屈な思いをさせないと言える。

経歴を知るものが居れば、それだけで注目の的になる連中ばかり。

もっともそんな視線に気にするような自分達でもないが―――。


「別段大きく出たつもりはないよ。さっきも言った通り、私は君達の命を預かる事になる。ならば、相応のモノをもって返すのが礼儀だろう」


それにとセフィリアは言葉を続ける。


「これは君達の方が分かっているだろ? 他人の目に怖気付くようなら最初から戦場に出なければいい」


人の視線に怯えるような存在なら戦場に出ても死ぬだけ。

戦場に出れば死の恐怖と常に隣り合わせで生きなければならない。

常に生き残るという保証もない。

まさしく生きるか死ぬかの世界が戦場なのだ。


「だから、私は君達を信じよう。どんな状況でも打ち砕けるだけの力を持っている事をね」


セフィリアの口上に真っ先に反応したのはベイルだった。

最初はくつくつと笑いを浮かべるだけであったが、次第にそれも大きくなっていく。


「あははははははははははは! なんだそりゃあ! 急に何を言い出すかと思えばそんな事かよ!」

「おや、これでも多少は自信を持って言ったつもりなんだけど」

「いやいや、自信がどうこうじゃなくてだなあ。まあいいや、どうせやる事は変わんねえしよ」

「ということは期待して良いって事かな?」

「ああ、期待してくれても構わねえぜ、セフィリア艦長」

「それは何よりだよ、ベイル軍曹」


『リオン』にこの小隊に艦長。

これほど愉快な事は無いと言わんばかりに笑いが止まらない。

ならば、自分もそれに見合ったものを戦場で返そう。

元より自分はそれしか能がないのだから。

まだ見ぬ戦場とこの小隊で待ち遠しさを隠しきれないベイル。

そんな姿にセフィリアは笑みを浮かべる。

寧ろそれ位の方がこの戦争を乗り切れる自信も着く。

無論むざむざと死ぬつもりもないが―――。

アキトはそんな艦長の様子に呆れ顔を浮かべる。


「はぁ……何をアンタはそんな当たり前の事を言ってるんだ」

「ふふ、口下手な君の代わりに私が恥ずかしい思いをして演説してあげたんだけど?」

「なら、少しはそういう風に見せたらどうなんだ?」

「そういうのは若い乙女がやるものだよ。それに三十路前の私がやっても誰が得をするのかな?」


セフィリアは口元にくすくすと笑みを浮かべながら、アキトの言葉を流す。

アキトはため息をつくと、直ぐに真剣な眼差しで見る。


「それにな、コイツ等を活かすのが前線指揮官である俺の仕事だろ?」

「当然その辺は君に任せるさ……『ゲシュペンスト・イエーガー』」

「……ああ、分かっているさ」


アキトに向けて放たれた言葉。

ゲシュペンスト・イエーガー。

その意味を知らずに訝しむリョーヤとベイル。

逆に言われた本人であるアキトと、その意味を知っているハヤトは眉をしかめる。

セフィリアはそれに気づき、申し訳なさそうな表情をする。


「ごめんなさい。少し言い過ぎてしまったみたいね」

「いや、構わんさ。結局その過去は変えられないしな」

「そう言ってくれると助かるよ」


セフィリアは苦笑を浮かべる。

資料に書かれた経歴を見れば分かる事とはいえ、それでも不用意過ぎた。

彼らとて触れられたくない過去がある筈なのに。

自らの未熟さに自嘲する。

しかし、何時までも引き摺っている訳にはいかない。

直ぐに小隊の方へと視線を向ける。


「さて、さっき言った通り、リオンは4機そのまま君達の下に配備される」

「しかし、良いんですか? 量産されるとはいえ、4機も貰ってしまって」

「ああ、それな「それについては君達が心配する事じゃないさ!」……何故あなたがこちらにいるんですか」


セフィリアの言葉を遮るように発せられた男の声。

小隊達は思わず声が発せられた方に視線を向ける。

其処に居たのは白衣を着た長髪の細身の男性。

彼は笑顔で一歩ずつアキト達の下に近づいていく。


「別に問題はないだろう。いくら私でも休憩というリラックスタイムは必要だよ」

「そんな事に聞いているのではありません。例のモノの開発はいいのですか?」

「それこそ問題ないさ。実際あんなのは其処まで難しいものではないからね」

「あの、こちらの方は?」


にこやかに話す男のペースに終始流されそうになるものの、リョーヤは現れた男に疑問を投げかけた。


「ああ、自己紹介がまだだったね。私は『ヴィンセント=クロイツァー』、このEOTI機関で働く者の一人さ」

「ヴィンセントさんですか。では、何故あなたがこちらに?」

「いやあ、正直テスト機体のロールアウト寸前なのだが、人目を盗んで満足に休憩というものをね」

「ようするに逃げてきたってわけか」

「常に人は回り続ける歯車ではないよ? 時には立ち止まり、視野を広げる事も大切さ」


一切口が止まらない男に呆れる一同。

ヴィンセントはそんな周囲を見つつも、笑顔を絶やさない。


「それにだ。面白い話をしていると無性に聞きたくなるのが人の本分じゃないか」

「そっちが本音じゃねえかよ」

「イエス! 正直毎日専門用語について話す連中と一緒に居るのも結構肩が凝るものでね」

「それがあなたの仕事でしょう」

「まあいいじゃないか。君達とてこのリオンの開発者の一人に出会えた事を多少の敬意は持ってほしいからね」

「はぁ!? この男がかよ!?」

「正確には機体造型を手伝ったまでだが!」


ああ言えばこう言うヴィンセントのペースに終始かき回されてしまう。

しかし、アキトは先程この男が口走った事が気になっていた。


「それよりさっきロールアウト寸前というのはどういうことだ?」

「ああ、君はこの小隊の隊長さんかな?」

「そうだが」

「ふむ、まあいいだろう。君達はリオンが我らEOTI機関の切り札だと思っている性質かな?」

「まさか。こんなものは見せ札の一つだろ」

「こんなんでは切り札にはなり得ないさ。しかし、見せ札は多いに越したことはない」


本命の一矢を隠す為の一矢。

しかし、どれが本命の一矢と見せないからこそ本命。

あるいは全てが本命かもしれない。

そう―――質にものを言わせた戦い方か、あるいは数に物を言わせた戦い方もある。

この場合、ヴィンセントが提示したのは数の戦い。


「あくまでもこのリオンはプロトタイプさ。これより更に改良を加えて、宇宙や海に対応したリオンも開発される予定だ」


これよりリオンはさらに多くの改良をされていく。

その適性や状況を変わるように、リオンもそれに合わして変化していく。


「それにコンセプトも変われば機体も変わってくる」

「つまりそれがさっき言っていたロールアウト寸前の機体ですか」

「そう。『ガーリオン』と『バレリオン』だ」


出来上がったオモチャを自慢するかのように言うヴィンセント。

ガーリオンとバレリオンという新たな兵器に期待を膨らませてしまう一同。

そして、同時にそんなものまでも開発してしまうことに改めてEOTI機関の技術力に驚くばかりだった。


「いいんですか? そんな大事な事を教えて」

「構わんよ。第一これは機密事項でもないし、ロールアウトが終わり次第に最前線へと配備される機体だ」

「つまり俺達も乗れるって訳スか」

「適性があればね。ただガーリオンについては生産数が少なく、指揮官機として扱われる予定さ」

「では、バレリオンは?」

「それこそ適性だろう。あれは航空する移動砲台だからね」

「なるほど。射撃が上手い人間でなければ扱い切れない機体という訳ですか」

「そういうこと。まあ、操縦に関してはリオン同系列だからさほど苦にはならんだろうがね」


ガーリオンとバレリオン。

操縦に関してはリオンシリーズである為、変わらない。

しかし、問題は特性をフルに活かせるかどうか。

それこそが乗り手としての役目と言えた。


「今君達に有用なのはこれ位だろうな」

「俺達に、ですか」

「そっ。君達にだ」

「そうですか。分かりました」


これ以上、話す事はないと言わんばかりに言葉を閉じるヴィンセント。

つまり彼らが何を作ろうとも恐らく自分達には回ってこない。

それほどのモノとなると、恐らく幹部のみが乗れる機体か戦艦。

興味がないわけではないが、乗れない以上はどうする気もない。

少なくとも今はこのリオンを乗りこなせるかが最重要事項であった。


「それに心配しなくても時期に見れるよ。あとは最終調整をすれば終わりだ」

「はっ……つまり俺達の勝利は揺るぎねえものになったわけか!」

「これで組織が生きて、俺達が死ねば意味ねえぞ」

「そりゃあ違いねえ!」


大局的な面で見れば、数も切り札揃えられたことで勝利は盤石となった。

しかし、最前線に立っている自分達が死ねば勝利も何もない。

あるのは死のみ。

だからこそ、大局の面がどうであれ自分達は死ぬわけはいかない。

自分達が為すべき事を成す為にも―――。


「さて、私は此処で失礼するよ。これ以上遊んでいると皆に怒られてしまうからね!」

「ヴィンセント博士……手回しお願いしますね」

「君はもう少しオブラートに言ってくれると、こちらとしても嬉しいんだけどねえ」

「おかしな事を言いますね。こちらも私の小隊の命が掛かっているのですから、これ位のお願いはしないと」


セフィリアとて分かっている。

この部隊は経歴や性格、そうした問題のある人間が集められた小隊である事を―――。

加えて従属というものから最もかけ離れた部隊。

もし快く思わない存在が現れれば、下っ端である自分達はどういう状況に追い込まれるか分からない

最悪捨て駒扱いや、そうした命令を下す可能性もある。

そういう状況に追い込まない為にも彼女は自らの役割を果たす。


「それに此処で頼まなければ、それこそ無視されるような部隊ですから」

「確かに一小隊がどうなろうが、大局的に見れば何の意味もないからね」

「そういうことです。だからこそ、必要最低限のモノは揃える必要がありますから」

「ふむ……」


ガーリオンとバレリオン。

生産数を考慮しても先ず幹部達に渡される事は目に見えている。

それに、たった4機のリオンでどうにかなるほど戦争は甘くない。

ましてや地球連邦軍も隠し玉を用意していないわけがない。

だからこそ、今ここで行動を起こす。

少しでも繋がりを得たのならば、有用に使うまで。

自分も彼らも死なせない事こそが彼女の仕事なのだから。

数秒後、大きなため息を零すヴィンセント。


「まあ、私とて全てを手回しは出来んよ」

「それで構いません。少なくとも手札が幾つかあるだけで状況は幾らでも作れますから」

「まったく……君も大概だね」

「そうでなくては彼らの艦長は務まりませんから」

「ああ、そうだろうね。こちらも面倒な女性に引っかかったものだ」

「役得と思ったらどうですか?」

「そっちは当面は難しそうだよ。まっ、約束は出来んがやってみよう。ただし、それまで生きているかは君達次第だがね」


ヴィンセントはそう呟くとその場を去っていく。

セフィリアは一つの仕事が終えたばかりと言わんばかりに安堵の息を吐く。

そんな彼女に真っ先に声を掛けたのはアキトだった。


「お疲れだな、艦長」

「しかし、良かったんですか? あんなことを言って……」

「良くは無いかな。でも、さっきも言ったが私は君達や乗組員を活かすのが仕事。それに恩恵が与えられるなら平等に貰うことは必要だからね」


この部隊が曰く付きであろうとも、その恩恵が与えられない理由にはならない。

自分達もまた地球圏を護る為の同士なのだから。


「それに過酷なのは変わりないよ。いや、寧ろキツくなるんじゃないかな?」

「それこそ上等じゃねえか! 俺達は戦争しに来たんだからよ!」

「自分としては早く終わってほしいですけど」

「そこは人それぞれさ。今大事なのはそれを扱う事になった責任の重大さだよ」


量産型とはいえ、未だに限られているガーリオン。そして、バレリオン。

だからこそ、それに伴った結果を出せとセフィリアは言う。

その言葉に一同は―――。


「それこそ問題ねえんだよ! こっちもプロなんだからよ」

「同感だ。アンタは戦艦の中でドーンと構えとけ」

「どちらにしてもそれが命令なら自分は従うだけです」

「此処にはそういう馬鹿しかいないらしい。まあ、俺もその一人だけどな」


それぞれの思いを口をする。

今までどう歩んできたのかは関係はない。

ただ自分達は果たすべき任務や使命を果たす為に戦場を駆る。

行きつく先が戦火が燃え広がる地獄であろうとも―――。

己の両手が血で真っ赤になろうとも―――。

自分の目指す理想の世界を得る為に、彼らは進み続ける。

己が戦火の中で燃え散るその日まで。




あとがき
こんばんは、シリウスです。
第三話に関しては「リオン」についでです。
今回書いてて思ったんですが、やはりまだまだスパロボは勉強不足ですね。もっと設定を知らなければいけないな
次回はいよいよ原作キャラが登場。
リュウセイルートでお馴染みのあの人です。
では、また逢う日まで頑張ります
2012/12/28(Fri) 01:45:30 [ No.990 ]

投稿者 No. 削除キー

- YY-BOARD - icon:MakiMaki
- Antispam Version -