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◆ ロボットもの初戦闘 投稿者:シリウス  引用する 
トーレ


南極事件。

その日、多くの人々は自らの平和が偽りであると知る。

異星人『エアロゲイター』の侵略。

地球連邦政府がその事実を隠蔽していたこと。

驚愕、動揺、怒り、絶望などの感情がたった一つの真実によって溢れだす。

しかし、さまざまな感情が湧きたつ中で民衆は悟る。

平和な時代は終わりを告げ、この地球に逃げ場は存在しないことを―――。

この日、世界は戦乱と混沌が入り混じった時代が幕を開ける。



スーパーロボット大戦OG・アストレイ

第5話『ディバイン・クルセイダーズ』





アキト達は自らの艦の中で画面越しに映る光景を眺めていた。

その視線の先には壇上に立つビアン博士。

否、これからはビアン総帥と呼ばれる人物の姿を片時も離さない。

これから起こる事は彼らは忘れないだろう。

何故なら自分達は地球連邦を相手に戦争を仕掛ける為に宣誓を行うのだから。

そして、ビアンはゆっくりと語りかけるように言葉を発する。


『もはや人類に逃げ場などない!』


ビアンはそのまま起こった出来事を話していく。

エアロゲイターに襲撃されたヒリュウの事件。

その技術力に屈した地球連邦政府上層部の隠蔽。そして、主権委譲による降伏。

多くの隠されてきた真実が明るみにさらされていく。


『地球も、宇宙に上がった人々の暮らすコロニーも等しく侵略という未曽有の危機にさらされている事は事実で

ある! 我々に必要なものは箱舟ではなく、異星人に対抗するための剣である!』


その為に自分達は雌伏の中で暮らしてきたのだから。

その中でリオンなどの多くの兵器を開発し、来るべきに備えてきた。

全てはこの地球圏を護る為に―――。


『本日ここで、我々EOTI機関は『ディバイン・クルセイダーズ』として新生し、地球圏の真の守護者になる

ことを宣言する! そして、腐敗した地球連邦政府を粛清し! 異星からの侵略者を退け! この宇宙に地球人

類の主権を確立するのだ!』

「はっ! 随分と大きく出たもんだな。地球人を主権にするとかよ」

「でも、そうでもしきゃあ結局地球は何度でも襲われることになるからね」

「ええ。それに私達は外宇宙へと飛び立つことが出来ても、その先がどうなっているかが分からない以上、下手

に外へと戦力を送る訳にはいかないでしょ?」

「まあな。侵略している間に地球が落とされました、じゃあ洒落にもならねえからな」


外宇宙に戦争を仕掛ける力は未だに持ち合わせていない事は彼らもまた分かっている。

だからこそ、彼らは迎撃という方法を選んだ。

例え何度戦うことになろうとも、敵の意志が挫けるその日まで。


『侵略の脅威に晒された今の地球圏に必要なものは強大な軍事力を即時かつ的確に行使出来る政権である! だ

が、それは人民を恐怖や独裁で支配するものであってはならない! 我々は護るべき対象である人民に対して刃

を向けるようなことはせん!』

「民間人には攻撃しないか。この辺はビアン総帥とマイヤー総司令の手腕次第か」

「そうですね。一応コロニー側も釘を刺してはいますけど、それでも納得できない者もいるのは確かだから」


リョーヤはコロニーと地球連邦政府が抱える問題を知っている。

その中でも一番根深い事件が『ホープ事件』であった。

多くの犠牲者を出しながら、未だに禍根を残す事となった事件。

コロニー側にとって、あの事件が齎した悲劇は連邦政府に対して深い疑念と憎悪を植え付けられてしまった。

多くの者はその事件で人生を狂わされたのだから。

そして、自分もまたあの事件によって人生を狂わされた一人なのだから。


「リョーヤ。思い出すのは勝手だが、泥沼にハマるなよ。俺達はお前等の私怨に付き合う暇はないぞ」

「分かってます。それに自分にどうこう言える立場にないのは確かですから」

「そうか。それならいいさ (まあ、問題を抱えているのはこちら側も同じか)」


何処の組織も抱える問題は変わらない。

獅子身中の虫も復讐者もビアンやマイヤーの手腕によって何処まで抑えられるか。

あるいは抑えきれずに彼らの方が動き出すのか。

しかし、兵士である自分達にとって上層部の問題だけは関わりたくないのが本音であった。


『ディバイン・クルセイダーズの意志を理解し、地球圏と人類の存続を望む者は、沈黙を以てその意を示せ! 

異議あるものは力を以て、その意を示し、我らDCに立ち向かうがいい!』

「この映像を見て、どれ位の人間がこっちに来るんですかね」

「それこそ俺達じゃあ分からんさ。ただ信念や義憤に駆られて、こっちに来る連中ならまだマシだがな」

「あぁ? そりゃあどういう意味だよ」

「連邦に勝ち目がないと思って、鞍替えするような連中が来られても迷惑って話だよ」


アキトは今後に起こりえる事を懸念する。

このビアンの宣言によって世界は大きく変わっていくことは誰もが予想が着く。

民間人だけではなく、軍人や政府すら秘密にされ続けていた情報が明かされたのだから。

この情報が明かされた時、人々がどういう行動を行うのか。

現政権からの変革を求めて、DCに組するのか。

今ある世界を護る為に地球連邦に組するのか。

それならば護るモノの為に戦うのだから、特に言うことはない。

しかし、問題は信念も大義もなく、勝ち負けや生死しか考えない人間。

彼らに大義はなく、我が身の可愛さで簡単に味方にも敵にも成りえる。

そんな兵士を集めても、結局は烏合の衆でしかない。

真の意味で一つの組織となる以上はこの大義や信念、理想に共感しなければならないのだから。


「総帥が求めているのはそうした人間ではないのは確かね。恐らくこの地球を護る意志を持った人をあの方は待

ち望んでいるんでしょうね」

「地球を護る、か。実際あの人ならそれも頷けるか」

「そう。でも、それは地球連邦じゃない……私達がなるのよ」


所属や理由はどうであれ、自分達は此処に集った。

その為の兵器を開発し、その兵器を扱う技術も身につけてきた。

全てはこの日の為に雌伏の時を歩んできたのだから。


「さて、これより『オペレーション・サザンクロス』及び『オペレーション・カシオペア』を発令します。各自

速やかに持ち場に着き、準備の方を」


オペレーション・サザンクロス。

そして、オペレーション・カシオペア。

その二つのミッションの発令と同時に周囲の顔付きが変わる。

そこに一切の油断もない真剣な表情。しかし、気負いや恐れはない。

セフィリアは彼らの表情に頼もしさを感じるのだった。


「それとアキト中尉。あなた達のコードは『ハウンド』で登録していますから、忘れないで下さい」

「ハウンド……猟犬か。了解」

「では、良き戦争を」

「戦争に良いも悪いもないだろう」

「ふふ、そうですね」


そのままアキト達はブリッジを去っていく。

残されたセフィリアは副長やオペレーターや操縦士などの顔を見つめる。

これから始まる戦争に皆が昂揚し、心のどこかでは恐怖もしているだろう。

だからこそ、自分は常に冷静ならなければならない。

彼らや小隊の命を預かる人間である以上、恐怖や責任に押し潰されないように―――。

ゆっくりと息を吐き、心を落ち着かせていく。

そして、目の前にいる乗組員の声を懸けた。


「さっ、行きましょうか。その基地担当のキラーホエール隊から何時でも繋げれるようにしといてね」

「了解」

「本命の一矢も大事だからこそ、彼らの連繋が必要になるわ」

「ええ。使用される兵器がMAPW(広域戦略兵器)である以上、タイミングを誤らせる訳にはいけませんから」


MAPWから放たれる威力は基地を軽く吹き飛ばす事など容易。

しかし、その前段階としてリオン及びF−32型航空機が迎撃システムを撃破を行わなければならない。

その為、そのMAPWを放つ時間を予め知る必要がある。

MAPWに巻き込まれて、戦死など隊を預かるものとして失格と言える。

そうならない為にも原子力潜水艦『キラーホエール』との連繋が必要不可欠であった。


「まあ、全てはやるべきことはやってからか。少なくともこの程度の局面を乗り切れないようじゃあ、今後なん

てモノは夢のまた夢だろうしね」


初陣で躓くようでは今後の戦争は生きれない。

何故なら自分達の敵はもっと後にも続いているのだから。

セフィリアもこの場所で死ぬ気など毛頭ない。

それは彼らもまた同じだろう。

だからこそ、自分達はこの場に集まり、戦う事を選んだのだから。



★ ★ ★ ★ ★



無音にすら感じる中でアキトは久しぶりの感覚に苦笑する。

恐怖。そして、昂揚。

息を吸う度に、呼吸が重たく感じる。

相反する感情に襲われつつも、心の奥底では待ち望んでいたのかもしれない。


「(結局何も変わらず、か)」


過去の出来事から戦場を離れようと考えた事は何度もあった。

何度も死の恐怖を味わい、その中で生きて帰ってきた。

それこそ味わった地獄など数えきれないかもしれない。

軍から抜け出した時、別の人生を歩めたのかもしれない。


しかし、結局自分は戦う事しか出来ないのだ。


もはや身に着いた習性や血は拭えない以上、戦い続ける事を選んだ。

その果てが何であろうとも―――。


『こちらクイーン1どうぞ』


すると、無音だった空間に響くオペレーターの声。


「こちらハウンド1。どうした?」

『既定のポイントに到着しました。MAPWの時間の確認はよろしいですか?』

「ああ、既に叩き込んでいるさ。ハウンド1から各機、お前達はどうだ?」

『こちらハウンド2。特に問題ない』

『こちらハウンド3。こっちも問題ありません』

「ハウンド4。そんな下らねえ事聞いてんじゃねえよ』


ハウンド1のアキトから順にハヤト、リョーヤ、ベイルと答えていく。

彼らに確認を終えた後、通信を切る。


「だそうだ。こっちの方は問題はないが、向こうの方はちゃんと出来てるんだろうな?」

『……はい。向こう側も問題はないそうです』

「了解した」


アキトは操縦桿をこれから起こる事を噛み締めるように握りしめる。

既に賽は投げられているなら、あとはそれを行うのみ。

ゆっくりと目の前に開かれていくハッチ。

此処を出たら、その先に待っているのは戦場。


『ハッチ開放、カタパルトセット。射線クリア。コントロールを委譲します』

「了解。アイハブコントール……アキト・アイザワ。リオン出るぞ!」


カタパルトより射出されるリオン。

一気にペダルを踏み込むと、呼応するかのようにブースターが噴射する。

そのまま機体は最高速度に達し、上空へ上がっていく。

そのスピードは直ぐに雲海の上に到達すること出来、これほどのスピードを出したのにも関わらず、反動や衝撃

が抑えられている。

改めてこの機体性能にアキトは思わず感心してしまう。

そのまま飛行を続けていると、レーダーより自分の後方より3つの反応があり、直ぐに確認した。

そこには三機のリオン。

直ぐに自分の小隊だと気付き、そのまま回線を開き、彼らに呼び掛けた。


「こちらハウンド1、各機へ。俺達の任務はサザンクロスを上手く活かせる為に基地内の対空銃座やミサイルの

撃破だ。少なくとも深追いはするなよ」

『あぁ? なに甘っちょろい事を言ってんだよ。片っ端からぶっ壊せばいいじゃねえか』

「そういうのはMAPWが勝手にやってくれるさ。俺達の任務はそこまで上手く運んでやることだ」

『それに一々ぶっ壊してたら弾の方が追い付かなくなるだけだぞ』

「そういうことだ。それにMAPWの巻き添えという死に方なんて嫌だろ」

『チッ! 分かったよ』


ベイルはこの日を待ち望んでいた為に、張り切っているのが直ぐに分かった。

その姿に苦笑しつつも、釘だけは刺しておく。

実際限りがある以上は消費は抑えなければならない為、深追いはせず、確実に狙える所から狙う。

それがPTや戦車などの兵器であっても関係ない。

ただ目標を定めて、撃つだけなのだから。


『……どうやら向こうも気付いたようですね』


今度は前方より航空機『メッサー』が3機近づいてくる。

少なくともリオンの敵ではない。

しかし、アキトには別の懸念があった。


「(予想よりも早いな。弾も温存したかったが、仕方ないか)お前等、油断して落とされるなよ」


現状の優先項目は敵の排除。故にその最適解のための行動を思案する。

アキトはペダルを踏み込み、それに呼応するように機体のブースターが唸りをあげる。

その加速を阻むかのようにメッサーはバルカンによる牽制を行い、機関砲の銃声が戦場に響き渡る。

しかし、その牽制のみでは阻む事は出来ず、機体は最高速度へと到達し――

結果、彼らの真下を駆け抜けてゆく。

機体の姿勢と推力の調整を行い制動を掛け、敵機体を射程圏内に捉えると同時に

先ほどの牽制のお返しとばかりに、バルカンが火を噴いた。

装甲の薄い航空機は貫通され、一機は地上に落下しながら爆発。

それを横目に確認すると、今度は旋回しながら向かってくる2機のメッサー。

しかし、その二機を無視し、一気に目標の基地までブースターを加速させる。

2機のメッサーがどうなったか、見るまでもない。


何故なら彼らの背後には既にリオンの銃口が彼らを標的にしていたのだから。


その背後で響き渡る爆発音。

こちらの損傷は特になく、またレーダーを確認しても誰一人撃墜されていない。

問題がない以上、任務である目標地点の迎撃に意識を集中させる。


「これ以上時間を費やす訳にはいかない。発射までの時間は?」

『MAPWの時間は残り15分です』

「15分もあれば十分だな。行くぞ」


4機のリオンは加速を維持したまま、上空より降下していく。

メッサーが迎撃された時点で、連邦軍側も既に防衛システムを機動されていることは予測済みであり、其処には

PT『ゲシュペンスト』の存在も重々承知している。

だからこそ、任務を成功させる為にも不安要素は確実に叩いておく必要がある。

そして、ついに彼らの肉眼でも基地の存在が確認する事が出来る位置に辿りついた。

そのまま加速を維持しながらも、レールガンを常に撃てるように装填する。


しかし、彼らを阻むように対空迎撃用機関砲が火を噴く。


無数の弾幕が迫りくる中で最低限を回避を行いながら、照準を定め―――。

アキトは一切の躊躇いもなく、右手の引き金を引く。

轟音と共に放たれた弾丸はまっすぐと機関砲を貫通し、爆発する。

ベイルもそれに続けと言わんばかりに他の機関砲を撃ち抜いていく。


「ハヤト、リョーヤ、お前等はそのまま迎撃装置を壊し続けろ。俺とベイルはまず敵の足を潰すぞ」

『了解した。なるべく多く壊してこい』

『おいおい、そんな事は言われなくても分かってらぁ』

『まあ、落ちないように気をつけてくれたらそれでいいですよ』


こんな状況下でも何時もの反応にアキトは思わず苦笑する。

むしろこれ位の方が却って頼もしさも出てくるもの。

ペダルを踏み込み、一気に拠点に迫っていく。

そのまま接近しながら今度は右腕に搭載されているホーミング・ミサイルを発射。

ミサイルは基地の滑走路に着弾し、爆発。

一発また一発とミサイルが爆発を起こし、滑走路は破壊されていき、火の海と化していく。

これでメッサーなどの航空機が出撃される恐れも無くなった。

しかし、これではまた足りない。

MAPWを成功させる確率を上げる為にも少しでも多くの兵器や防衛機能を破壊しなければならない。

油断や慢心をすれば戦場で自分で死ぬのは自分であると彼らは自覚しているから―――。


「……ようやく来たか」

『重役出勤御過ぎて、寝ぼけてたんじゃねえのか?』


だからこそ、火の海の中で一つの巨大な影が佇んでいる事を直ぐに察知する事が出来た。

人型機動兵器『量産型ゲシュペンストMKー2』

アキトとベイルはすぐさま間合いを取るべく、上空に浮上する。

少なくとも肉眼で見る限り、長距離狙撃の武装は持っていない。


「(M950マシンガンか。なら、そこまで射程は広くないが……)」


ゲシュペンストの滞空時間も考えても、このリオンで空中戦で戦うことは難しい。

しかし、此処でハヤト達の方に向かわれたら任務に支障が来たす可能性がある。

ならば、自分達の方に引きつけなければならない。

少なくともMAPWが放たれる時間までは―――。


「ベイル、聞こえるか?」

『なんだよ。まさか退けとか言うんじゃねえだろうな?』

「逆だ。今此処でアイツが動かれたら後々厄介だからな」

『へぇ、てっきり無視しろって言うと思ってたぜ』

「だが、熱くなり過ぎるなよ」

『ハッ……んなもんは出来た試しがねえんだよ!』


ベイルの声から喜びの感情を含みながら、彼はそのままゲシュペンストに向かって突撃。

その後を追うようにアキトもペダルを踏み込むと、同時にブーストが唸りを上げる。

まず牽制として右腕に装填されているミサイルを発射。

ミサイルは地面に着弾するも、爆撃は轟音と共にゲシュペンストの周囲を吹き飛ばしていく。

反動と衝撃によりゲシュペンストの足が止まる。

そんな隙を彼らが見逃すわけもなく、追撃のレールガンを放った。

しかし、ゲシュペンストも紙一重で避けると、すぐさま右手に持っているマシンガンを連射した。


「チッ……」


迫りくる弾丸を避けつつ、二人はマシンガンの射程が届かない上空へ浮上していく。

リオンの装甲では被弾次第では命取りに繋がる以上、不用意に突っ込むのではなく、足を止めるだけで良い。

問題は任務の要である迎撃システムがどうなっているか。

すぐに迎撃システムの破壊を担当しているハヤトとリョーヤに回線を繋ぐ。


「おい、敵の迎撃システムはどれ位壊せた?」

『7割弱って所ですね』

「そうか。なら、もう少し掛かりそうか?」

『恐らくな。だが、時間までは片づける』


そういうと、彼らの回線が切れた。

時間を確認すれば、既に残り時間は6分を切っている。

ならば、出来る選択肢が限られてくる。

ベイルに回線を繋ぎ、要点だけを述べた。


「このまま奴をこの場に引きつけるぞ」

『あ? 撃墜すんじゃねえのかよ』

「そうしたいのは山々だが、下手に深追いすれば時間を超えてしまう可能性が出てくるな」

『それまでに決着つけれるんじゃねえのか?』

「出来る可能性は低いがな。ならば、任務の方を優先させるぞ」


有無を言わさぬ命令。

任務優先ということは、ベイルもまた分かっている。

此処で深追いをすれば、自分達もMAPWの被害を喰う可能性が出てくる。

何を優先すべきか等を論じるまでもない。

しかし、そんなことは彼のプライドが許さない。

目の前の状況と任務の狭間で揺れるベイル。

それが分かっているからこそ、アキトは小さくため息を吐き、告げた。


「頭を冷やせベイル・シュノームベルト。お前が望む戦場はこんな所で終わらせるつもりか?」

『……チッ、了解』

「……それに見せ場くらいは容易をしてやるから安心していろ」


再びペダルを踏み込み、目の前のゲシュペンストに向かって加速していく。

今すべきことをあのゲシュペンストの足を止めること。

ならば、右腕に積まれているホーミング・ミサイルの照準をゲシュペンストにセット。

右手の引き金を引くと、同時に6発のミサイルが発射させた。

しかし、そのままミサイルはゲシュペンストに―――届く事はなかった。

ゲシュペンストは迫りくるミサイルをマシンガンの連射で全弾当てて、空中で爆発させた。

衝撃も反動もゲシュペンストには届いていない。

だからこそ、彼は思いっきりペダルを踏み込む。

噴き上がるブーストと襲いかかる加速による衝撃。

そんな事は一切構わずに彼はゲシュペンストに向かいながら―――上空を通りすぎた。

そのままペダルを弱めながら、右側へと操縦桿を振る。

右側へとブースターが振り向き、そのまま一気に旋回した。


「取ったぞ!」


既にその銃口はゲシュペンストに照準が合わせられている。

ゲシュペンストもそれに気づき、半歩を動くことで振り向こうとする。


『遅せえんだよ!』


その隙をベイルは見逃さなかった。

背後から迫りくるミサイルにとっさに防御を取るゲシュペンスト。

しかし、轟音と衝撃、そして、爆炎はゲシュペンストの足を確実に絡み取った。

ほんのわずかな隙。

しかし、そのわずかな隙がゲシュペンストのパイロットの追い込む隙となった。

照準が合わせられた銃口の引き金を引く


燃え盛る炎の中を一直線に迫る弾丸は―――ゲシュペンストの足を貫通した。


うち貫かれた箇所が一気に爆発を起こし、移動不可へと追い込まれる。

だが、それはこちらも同じことだった。


「ハウンド1から各機へ―――撤退だ。これ以上はMAPWの餌食となるぞ」

『了解。迎撃システムについては全て破壊が終わった』

「そうか。あとはこちらも指定の位置まで退くだけだ」


タイムリミットが迫っている以上、深追いをすれば自分達も巻き込まれかねない。

片足を無くしたゲシュペンストの射程圏から離れるように浮上する。

そのままMAPWの爆発に巻き込まれないように指定の位置まで一気にブーストで加速させる。

この基地やゲシュペンストがどうなるかなど興味はない。

既に自分達に果たすべき任務は終わった。

もしその基地の人間やゲシュペンストのパイロットが生きていようとも、戦場で出れば誰であれ撃つだけ。


それこそが自分達、兵士の役目なのだから。


そして、背後に広がる爆発と轟音と共に4機のリオンは空を駆けていく。

次なる戦場を求めて―――。



★ ★ ★ ★ ★



MAPWが連邦軍基地に着弾し、4人が帰還している頃。

その情報を己の戦艦『ストーク』の中で聞いていたセフィリア艦長とレミリス副長は胸をなで下ろす。

信頼や実力は認めているものの、戦場に居れば必ず生き残れる保障はない。

それは4人に限らず、自分達も変わりない。

この戦艦も対艦装備や機関砲も装備されているものの、わずかな損傷ですら乗組員の怪我にも関わりかねない。

少なくとも今は任務も終えて、少し安堵の息を吐く。


「各員、警戒態勢を1から2に変更。彼らが戻り次第、この戦線から離脱します」

「しかし、今回は無事に成功して何よりです」

「そうね。でも、流石にこの程度はこなして貰わないといけないというのは私の期待の持ちすぎかな?」

「さあ。それで彼らが言うことの聞くのでしたら、私は何も言いません」

「まあ、それで言う事を聞くんだったら安いものね」


しかし、それで言うことが聞くのであれば前任者達が上官の絶対命令について聞かせている。

つまり地位とは別のもので彼らに信頼を与えなければならない。

そう―――力や能力などでなければ、彼らからの信頼を得ることは出来ないのだ。


「(高い難易度であるけど、やれない事はないわね)」

「ところで、他の拠点はどうなっているのか、聞いていないか?」

「あの、艦長……」

「どうしたの?」


オペレーターの戸惑いを含んだ声にセフィリアは伺う。

その表情も戸惑いを隠し切れていないようだった。


「ラングレーを襲撃を行っていたテンペスト少佐の部隊から一報が入りました。任務失敗だそうです」


その言葉に周囲はざわめきだす。

テンペスト・ホーカーの実力はコロニー統合軍の中でも上位に入る人材であり、

かつて特殊戦技教導隊というPT用モーションパターンを産み出すほど操縦技術に優れたエリートパイロット達



その一人であるテンペスト少佐の部隊が任務に失敗するという事は周囲とっても驚きを隠せない。


「静かにしろ。で、その詳細は分かっているのか?」

「はい……地球連邦軍の新型2機及び特機、そしてヒリュウ改が実戦投入された後、MAPWを撃墜したとのこ

とです」

「そう―――向こうもただではやられない訳ね」


DCの先駆けと共に暗雲も立ち込めるような予感をセフィリアは隠し切れなかった。

そう―――向こうもまた自分達同様に己の剣を隠し、磨き続けていた。

どちらにしてもラングレーの落とせなかった事は手痛い。

あの地点は北米を護る最重要拠点の一つである為、落とした時の足掛かりも大きい。

しかし、その新型と特機がラングレーの拠点を抑えられては厳しくなるのが目に見えている。

少なくとも特機や新型の情報を見てみない事には後の対策も立てることが出来ない。

そう―――彼らがラングレーから出ていかないという保障など何処にもないのだから。

そして、自分達と戦わないという保障もまた存在しない。

その為にも今は情報を集める事を優先させる。


「今は4人が帰ったら、彼らの情報を共有しあいましょう」

「ですね。とりあえず送られてきた情報は何時でも開示出来るよう準備をしておいてくれ」

「分かりました」

「さて、ラングレーでこれなら他にも隠し玉があるとみていいでしょうね」


セフィリアは他の連邦軍基地にも秘密裏に開発している機体と読んでいる。

今回はゲシュペンスト一機で済んだものの、次はどうなるか分からない。

この日、4匹の猟犬は戦場へと放たれた。

しかし、その先は未だ先行きの見えない暗雲に包まれているのだった。




あとがき
お久しぶりです、シリウスです。
俺の精神力が尽きました。
生まれて初めてのロボットものの戦闘シーン。
正直此処まで難しいとは思ってみませんでした。
まだ始まったばかりなのに俺の方が先行きが不安です。
それでは、またいつの日にか会いましょう
2013/01/20(Sun) 01:06:49 [ No.992 ]

投稿者 No. 削除キー

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