第十五話 「転成」 | ||
『お前などワシの息子ではない』 父親――父と認識している男からの言葉。 侮蔑と嫌悪をありったけこめて、父は実の息子に吐き散らした。 説教の常套句。 どの親でも大小違いはあれど、子供を否定する言葉をぶつける。 親としては子供に反省を促す為――もしくは、過ちを犯した子供に対する苛立ちから発したのかもしれない。 子供は傷つく。 本当に何気ない、ほんのはずみから出た言葉でも鋭利に幼心を斬り付けてしまう。 そしてシフォンは――顔を合わせる度に言われ続けてきた。 父ビリアーノ・ノーブルレストにとって、シフォンは本当に不出来な息子だった。 容姿は母を受け継ぎ、外面も内面も自分に似ない息子。 後継者としての教育を行ったが、何一つ成果を出さなかった。 シフォンには才覚がなかった。 勉学の成果はまるで無し。 剣技は発達せず、魔力は皆無。 反抗ばかり繰り返し、親の目を盗んでは庶民の町へと飛び出していった。 折角この自分の息子として生み出してやったのに、自分に何一つ役立とうとしない。 見切りはあっさりとつけた。 才ある息子なら立身出世を望め、一族を繁栄させられるがそれも無理。 せめて王族か貴族との縁談を持ちかけ、血統の連なりに期待するしか望みはない。 ビリアーノは不遜な息子を出世の道具に、可憐な娘を自分の道具に仕立てようとした。 まだまだ女を味わいたい。 権力を手にし、味わった事のない栄華をこの手にしたい。 欲望にギラついた領主。 彼は知らない。 見放されているのは、己であるという事に。 シフォンは――そんな父の下を離れた。 親にすら価値がないと、見捨てられた。 積み重なった劣等感と鬱積は限界に達していた。 一人で、生きていく。 親が価値を認めなくても、この世界はきっと――誰にでも平等だから。 元始に神、天地を創造りたまえり。 神とは在りて在るもの。 命とは創造し、創造されるもの。 蒼穹にかがやく幾千万の星は光と闇を生む。 闇を照らし出し、闇は光を投影する。 心は大世界をもって形づくられ、聖と魔は力を律する。 それが世界の成り立ち。 そして――歴史の根幹。 映し出されるのは、生と死の螺旋。 知る由も無い世界が紡がれる。 による統治期を除いて、中華民国は国内的・国際的要因から政府が分裂状態にあり、中華民国の代表政府が同時期に 2つ存在する時期もあった。またチベットのガンデンポタン、モンゴルのジェプツンタンパ政権は、中華民国を単なる漢人の 政府とみなしてその支配下にはいるこし始める。クタイ王国は、インドからマカッサル海峡、フィリピン、中国に抜ける交易 ルートに位置していたためにインドからの船が寄航し中継貿易の利で繁栄したと思7世紀から11世紀にかけてスマトラ島南部 パレンバンを本拠とするシュリーヴィジャヤ王国が南海貿易をコントロール世紀前葉に古マタラム王国とシャイレンドーラ朝が建国。 ャイレーンドラ朝により8世紀末から9世紀初めに建設されたボロブドゥール1808年 - ヴィルナのガオンの16人の弟子がサフェドに 農業定住地を創設 1827年-1828年 - モージズ・モンテフィオーレ(Moses Montefiore)、聖地を旅行、エルサレムに巡礼し、 エジプトのスルタン・ムハンマド・アリー・パシャと交友関係を結ぶ。 1840年 - モンテフィオーレ、ムハンマド・アリーとの 『――やめろ』 中世のようなデマで訴えられて拘束されていたダマスカスのユダヤ教徒数名を解放、身の安全を保障させる1855年 - モンテフィオーレ エルサレムに病院と女性のための学校を設立 1856年 - ルートヴィヒ・フォン 『――頭が――』 フランクルユダヤ教の聖地ツファットで、アラブ人テロリストの襲撃により133名のユダヤ教徒が虐殺。 ヘブロン事件:ユダヤ教の聖地ヘブロンで60名のユダヤ教徒が虐殺され、3000年の歴史を持つヘブロンのユダヤ人コミュニティーが滅亡 1930年 - ダニ・カラヴァン生まれる 1931年 - 第17回シオニスト会議:ダヴィド・ベングリオン 『――壊――』 二つ以上の民族が、どちらが支配権を得るのでもない二民族共存国家構想を支持ユダヤ人の地下抵抗組織・エツェルが創設1933年 ファイサル・フサイニー暗殺 ハダサー、パレスチナで活動開始 1933年〜1939年 - 第5次アリヤー:主としてドイツからの大規模な帰還 1934年 - ダニエル・カーネマン生まれる シモン・ペレス帰還1935年 - イツハク・シャミル帰還 1936年2月16日 - エリアフ・インバル 『――ァ』 1936年〜1939年 - アラブ人の過激派・武装勢力による反ヨーロッパ 地中海世界 西アジア 中央アジア 東南アジア東アジア 日本 - 飛鳥時代、奈良時代 アメリカ -アフリカ 『――ァ――』 9世紀 - 10世紀ヨーロッパ - 地中海世界 - 西アジア - 中央アジア -南アジア -東南アジア 東アジア - 日本 - アメリカ - マヤ文明の中部の諸都市が衰退、アフリカ -[11世紀-12世紀ヨーロッパ - 十字軍、ドイツ騎士団の植民、12世紀ルネサンス 南アジア 東南アジア 東アジア 日本アメリカ存在の無底的な、世界の存在、人 『――――ァ』 『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!』 悲鳴は絶叫に、理性は発狂に。 事実は理解を超えて、濃密な世界が脳髄を鋭く抉る。 視界は七色に染まり、溢れ返る文字列の渦が目の前を通り過ぎていく。 奔流する時代の流れは否応無く脳内に刻まれ、事実を刷り込んでいった。 人間・動物・植物・星・文化・権力―― ――科学。 カガク? 疑問に、答えが返る。 『世界を滅ぼした力。貴様ら人間が消去した技術。 フン――これ以上気安く我に触れるな、たわけ者』 怜悧冷徹な女性の声を最後に――映像は消えていった。 凝縮された炎と拡散された降雨。 噴煙が立ち込める廃墟の群れの周りを、圧倒的な濃霧が漂う。 パチパチと火の粉の滓が燃えており、腐臭が爛れた肉の異臭へと変貌している。 魔法使が消え逝く命を変換し、放った魔力の炎。 下級魔法使いだった男の魔法は、皮肉にも最後の最後で中級へと高位する。 魔法使の傍で倒れていたかつての仲間は瞬時に炭化。 中位に昇華した魔法はそれだけに留まらず、その火力を持って近隣を蹂躙。 回避する間もなかった。 シフォンが最後に目にしたのはオレンジ色の壁。 ただ、受け入れるしかなかった―― 顔を焼かれ、胸を焼かれ、腹を焼かれ、手足を焼かれ、目を焼かれ、鼻を焼かれ、口を焼かれ、耳を焼かれ、髪を焼かれ―― 「・・・・・・ゥ・・・・・・」 ――それでも尚、無様に生き残っていた。 小さく呻き声をあげて、シフォンは目を覚ます。 攻撃を食らって、ほんの束の間眠っていたようだ。 頭が焼け付くように痛い。 夢見でも悪かったのだろうか? うっすら目を開けようとして――――顔を顰める。 もう・・・・・・よく見えない。 視界の隅で着用していた赤いローブが燃えているのが分かる。 サングラスはひび割れて転がり、マスクは灰になっていた。 ニンファより受け取ったモノ。 そんな物を、我が身より気にする自分が可笑しい。 笑いたい気分だが、火傷で舌がヒリヒリする。 焼け付いた肺が新鮮な酸素を求めるが、喉はか細くヒューヒュー鳴るだけだった。 「・・・・・・ぁぅ」 両手両足はおろか、指先一つ動かない。 服は見る影も無く黒焦げており、破れた個所から覗く肌は焼け爛れている。 皮は焦げ、毒々しく染まった肉が気持ち悪く痙攣している。 生きているのが不思議なほどの重傷だった。 奇跡――ではないだろう。 苦痛が長引いているだけ。 このまま放置すれば、間違いなく死ぬ。 死。 避けられなかった運命。 決定された未来。 死する人間は生前の記憶を思い出し、指先から浸透する冷たさを味わうという。 ならば、自分は幸福か不幸か。 思い出せるものは何もなく、緩慢に燻る熱さしか感じない。 爛れた瞼の奥で、濁った目を開く。 霧と煙を背景に――――ソレはいたー――― 黒翼。 闇の世界にふさわしい、二枚の黒き羽。 神秘と呪詛に彩られた翼を広げ――黒衣の男がいた。 翼を持つ人間なぞ存在しない。 しかし――翼を持つことを許された種族が存在する。 (・・・・・・堕・・・・・・天・・・・・・使・・・・・・) 呪われた天使。 命を無慈悲に刈り取る、矛盾に満ちた聖の存在。 魔法使の放った魔法を咄嗟に回避する為、男は翼を広げた。 シフォンを置き去りに空を飛び、難を逃れて今も無傷で存在する。 傷一つない整った容貌が冷たくこちらを見下ろしている。 瞳に浮かぶのは――小さな怒り。 翼を見た者への、氷の殺意。 まだ――許せないというのか。 シフォンはもう死に体だ。 殴打された傷が火に炙られ、血生臭さしかない。 なのに――許してはくれない。 男がゆっくりと降下するのが見える・・・・・・ (・・・・・・もう・・・・・・いいや・・・・・・) 何故、こうなったのだろう。 どうしてこんな理不尽な目にあうんだ。 誰も、助けてくれなかった。 誰も、助けられなかった。 最後まで、無力だった。 親に見離され・・・・・・ 妹には会えず・・・・・・ お姫様は助けられず・・・・・・ 友人を死なせ・・・・・・ 世界にすら――見捨てられた―― "フン――" 甘い死の匂いが満ちる心に、冷たい刺が突き刺さる。 "己の不甲斐なさを他者にすり替えか。何もせぬだけの小僧が" 安らぎの死を無意味と断じ、少年をただ罵倒する。 "汝は無力なのではない" 生者に手を差し伸べる神様ではなく―― "無価値なのだ" ――死者を冒涜する悪魔。 "価値無き存在を、何故救わねばならん" シフォンは―― "一人で死ね" ――顔を上げた。 死は眼前。 戦いに疲れ果て、実も心もボロボロになり、ゴミ屑同然に地面に転がされている。 戦況が――この夜に出会った者達の全てが自分を死に導いた。 言われなくても、自分は死ぬ。 ――――何故? 笑い話だ。 死ねと、明確に言われて初めて反発している。 相手側に死を強要する理由は十分にある。 目撃者、邪魔者―― しかし、それは相手の都合でしかない。 ここで死ななければいけない理由は、自分には無い。 自分にはないのだ。 犯罪を犯したくは無いから、今日だって必死で職を探した。 父のようにはならないと、決めていたから。 誰かを泣かせる人間にはならないと、定めていたから。 ただ自分は――自分に従って生きていきたかっただけだから。 ニンファにだって、死ぬ理由はない。 ニンファの友人にだって、ない。 なのに、この現実。 巻き込まれ、流されて、翻弄されるだけの自分達。 運命を勝手に決め付けて、泣き言だけ叫んで――その上、世界に縋ろうとしていた。 ありもしない奇跡を、心の何処かで願っていた。 馬鹿にしてる。 こんな事はもう真っ平だ。 ニンファに約束した。 また、逢おうと。 運命を強要する敵達。 目の前に訪れる死。 そのどれもに――今、心の底から腹が立った。 シフォンは決然し、高らかに宣言した。 お前らが、死ね。 初めて、言い返した気がする。 独り善がりな言葉ではなく、キッパリと否定する。 誰が話し掛けたのか、誰に答えたのか。 シフォンには皆目見当はつかないが、今は抵抗する事だけを考える。 降雨の中ナイフを煌かせる男は、こちらへ向かって羽を広げる。 こちらは無手。 短剣を失い、手足を失い、肉体も失った。 残っているのはこのしゃらくさい心。 舌は焼かれ、満足に悲鳴もあげられない。 相手は死神。 立ちはだかるのが死であるなら――――その死を殺す。 間もなく、男はシフォンを殺すだろう。 刺し殺し、内臓を解体し、小瓶を取り、ニンファを追って、彼女も殺す。 なんて分かり易い行動。 なんて――ふざけた行為。 許しては、いけない。 この身体はもう、死んでいる。 ガラクタ。 戦う手段は無いけれど――戦おうとする心はまだ残っている。 非力な人間が唯一奏でられる力の旋律――魔法。 シフォンには魔法の知識は無い。 魔力も無ければ、素養も無い。 世界に呼びかける声も、喉を潰して失った。 必要ない。 この世界に、今更助けなんて求めない。 いつだって助けてはくれないのだから。 奇跡を願う呪文も、構成する精神も、現実へ干渉する魔力も要らない。 祈りを捧げるのは自分のみ。 自分で――自分を助ける。 ("世界を殺す力よ") 奇跡は――自分の中から拾い上げる。 (Link――――to――――"princess") "き、貴様ッ!? 我に接触を――!?" 己が内に願いを繋げ、望みを詠う。 『"検索――――』 に古マタラム王国とシャイレンドーラ朝が建国。ャイレーンドラ朝により8世紀末から9世紀初めに建設されたボロブドゥール1808年 - ヴィルナのガオンの16人の弟子がサフェドに農業定住地を創設 1827年-1828年 - モージズ・モンテフィオーレ 351亜l@P』、』@P化赤@、k』亜、』@、』@、@』、亜@、亜@、亜4542..254743832^「ざ;;q―――― (ガ――アアアアアアッ!!) 押し寄せてくる情報量。 目まぐるしく到来する歴史の流れ。 訳が分からない世界の構成。 知らない時間、知らない人々、知らない世界―― "よさぬか!? 我の膨大な記憶量に、汝の脳みそは小さすぎる!!" 何もしなければ、死ぬ。 ならば抵抗してやるまでだと、シフォンはただ奮起する。 必死で歯を食いしばり、一字一句を見逃さない。 強さが、ほしい。 死神さえ殺す武器。 現実を滅する、力。 自分が何も出来ない子供だと、父は嘲笑った。 上等だ。 ならば自分は――――自分に依って、自分に助けを請う。 誰にも頼らない。 頼れるのは、自分。 この――僕だけ。 僕に――力を―― ・・・。 ・・・・・・。 ・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・。 『召還――――完了。 "回転式拳銃"』 最後の力を指先にこめて――シフォンは死を撃ち抜いた。 to be continues・・・・・・
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