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◆ 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 第六十二話 投稿者:リョウ@管理人  引用する 
高町なのは  海鳴の高級ホテルで起きた爆破テロ事件。表沙汰にこそなっていないが、さざなみ寮で起きたマフィア襲撃事件。
龍というチャイニーズマフィアが展開した二面作戦は失敗にこそ終わったが、影響力は計り知れなかった。
俺達は出来ることをして撤収したが、関係者各位は何も終わっていない。事件こそ解決しても無事とはいい切れず、警察を始めとした政府関係者は大変な騒ぎとなった。

そもそも爆破事件を解決したのはシルバーレイ達、マフィア襲撃を防いだのはディアーチェ達。どっちも表沙汰に出来ない存在である。

『私は各方面の調整を行いますので、くれぐれもこれ以上動かないようにお願い致します』
『わ、分かった……ディードの治療も終わったし、俺達は休むよ』

 御剣いづみは護衛専門かと思いきや、俺関連のあらゆる出来事を解決するエキスパートであるらしい。
俺達の存在を表沙汰に出来ないのであれば、各方面で起きた事件をどのように解決したのか、辻褄を合わせないといけなくなる。
そうなると、事件解決の功績は奪い合いになる。俺は手柄なんてどうでもいいので任せると、御剣いづみは俺に注意した上で調整に出向いてくれた。

今回は英国議員まで脅迫されているので、日本だけの問題には留まらない。海外諸国にまで波及してその夜、海鳴で起きたテロ事件は世界中に広がっていった。

『あんたが緊急事態だとセインまで動かしちゃったから、管理局や聖王教会から滅茶苦茶問い合わせが来ているのよ』
『えっ、なんで管理局まで?』
『海鳴には今クロノさんやクイントさん達がいるでしょう。
あの人達、最高評議会の中では左遷扱いだけど、聖王教会の中ではあんたの調整役になっているの。
あんたは聖地の乱終結後に人々の時代だと言って神輿から降りたけど、教会があんたに誰もつけずに野放しにするはずないでしょう。

取引相手のレジアス中将にいたってはあんたが改革の生命線なんだから、こっちとも連絡を取っているのよ。こっちはあたしがなんとか収めるから、あんたは動かないでね』

 ホテル爆破を防ぐべく緊急要請をした結果、事件は解決したが異世界ミッドチルダにまで波紋が広がったようだ。アリサが対応してくれている。
他に手立てがなかったので仕方なかったが、緊急コールがそこまで波及するとは思わなかった。
てっきり"聖王"の世界――地球は対岸の火事くらいにしか思われていないと思ったは、緊急という言葉を真に受けて騒ぎになっているらしい。

ということで事件が解決したと思っている俺の周辺は夜通し、大変な騒ぎとなった。




―――次の日。


「……結局政府と警察が解決したことになったようだな、父よ」
「妥当な落としどころじゃないか。俺達はあくまで事件解決の協力だからな」

 隔離施設の食事処で俺達は全員集まって、朝ご飯を食べている。
海鳴の夜はどこもかしこも大騒ぎだったが、俺達は全て大人達に任せて休眠を取った。神経質な人間なんておらず、全員図太く熟睡した。
大怪我したディードも戦闘機人だけあって、翌朝には立てるほどに回復。包帯とガーゼが痛々しいが、オットーの解除でパンを食べていて安心した。

食事処のニュースを見ながら、ディアーチェが世間への感想を述べている。

「お前も折角活躍してくれたのに、世間には出せずで悪いな」
「なに、さざなみ寮の住民が守れたのだからよい。それに他でもない父が我の活躍を知ってくれている。それだけで十分だ」
「おこちゃまはいいですねー、アタシなんて丁稚奉公させられただけですし」

 ディアーチェが満足そうに胸を張るが、同席していたシルバーレイは不満そうにサラダをつついている。
一協力のつもりだったが、爆破事件の解決にまで協力させられて大層不満であるらしい。
ディアーチェほど高潔な精神を持ち合わせていない彼女は、タダ働きさせられて文句が多い。

まあそれでも悪態をついたりしない辺り、根はオリジナルのフィリスに似て人が良いようだ。

「大丈夫、お前のことは俺も評価しているぞ」
「撫でポ反対派なんで、褒められたり撫でられたりしても、絆されませんよアタシ」
「撫でポってなんだ!?」

 キャベツをパリパリ食べながら可愛くないことを言うクローン女。褒め甲斐のない奴である。
ちなみにフィリスからもシルバーレイの活躍は絶賛されたが、本人はハイハイと手を振るだけだった。なんてやつだ。

パン派のオットーはクロワッサンをモグモグしながら、声を上げる。

「結局主犯は取り逃がしたようだね。僕としてはディードを怪我させたあいつを追いたいけれど」
「まだ公表はされていないが、御剣を通じて主犯格は政府側にも伝えている。
日本でここまで好き勝手された以上、関連各所とも協力して追跡するだろうよ」
「うーん、少し納得行かないけれど……そもそも今まで居所も掴めなかったんでしょう。捕まえられるのかな」
「何ともいい難いが、少なくとも簡単に国外へは出さないだろうよ」

 結果を出せていないのだから無能というほど、いい加減俺だって世間知らずではない。警察や諸外国の治安組織は長年国を守ってきた実績がある。
犯罪者を称賛する気はないが、各司法の手を逃れられる程主犯格が優秀だということだろう。日本にも潜伏先を用意しているに違いない。
爆破犯はともかく、襲撃犯はディードが手傷を負わせている。すぐには動けないはずだ。その間に捕まってくれれば御の字だろう。

このまま待っていればこちらの勝ちかもしれないが、言い換えると勝つまでは待たされることになる。

「お時間ありましたら私に剣を教えて頂けませんか、お父様」
「駄目、怪我が治るまで休んでいなさい」
「ですが……!」
「休めと言って大人しく休むような奴じゃないな、俺の娘なら。分かった、俺にいい考えがある」
「考え……?」

 今回の件を通じて学んだことがある。
護衛という立場に甘んじて専守防衛に努めていたが、埒が明かない。
とはいえ勝手な行動に出れば、各所に迷惑をかけてしまう。そのジレンマが続いてしまっていた。

ならば自分が動くのではなく――動ける人間を増やそう。


「剣に詳しい兄妹がいる。お前はその人から剣の基本から学ぶんだ」


 ここ海鳴は地元ではないが、今となっては俺のフォームでもある。
クセのあるやつは多いが、それでも頼りにはなる。

まず各方面から協力を求めていこう。




































<続く>


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2024/02/03(Sat) 12:49:54 [ No.1065 ]

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