000000

このフォームからは投稿できません。
name
e-mail
url
subject
comment
小説投稿掲示板

[ 指定コメント (No.987) の関連スレッドを表示しています。 ]

◆ 始動 投稿者:シリウス  引用する 
トーレ 戦場ほど命に平等であり、冷酷な場所はない。

誰もが命を奪い、そして、奪われる。

其処に慈悲も無ければ救いも存在しない。

其処にあるのは常に流血と鋼鉄と戦火のみ。

そう……地獄のような戦場。

この中で生き、死んでいく。

これまでも、これからも何も変わらずに其処は在る。

己の命が燃え尽きるその日まで―――。




スーパーロボット大戦OG アストレイ

プロローグ『平和の終わりへ』




新西暦186年。

戦艦「ヒリュウ」によって、冥王星宙域まで移動が出来るようになった現在。

多くの者は今後の世界に期待と喜びに胸を震わしながら平和な日常を過ごしていた。

その平和な町を車の中から見つめる視線が二つ。


「相変わらず地球は平和そのものって感じだな、隊長」

「ああ。だが、それが普通だ」

「そりゃあ、何も知らなければね」


彼ら『ハヤト=アカミヤ』と「アキト=アイザワ』は知っている。

この平和が偽りに過ぎない事を……。

どれほど多くの隠蔽や偽りで隠そうとも、脅威が迫っている事を自分達は知っている。

こうして人類が平和を謳歌していても、既に地球と人類に平和に暮らす時間が残されていない。

もし脅威が襲ってきた時、人類は剣を手にして立ちあがるか。

それとも、今の連邦政府のように何もしないまま従属するか。

だが、どちらを進もうと地獄に変わりない。


「それでも俺たちはこの選択肢を選んだ」

「そう。例え後世、恨まれる事になろうとも」

「……そんなモンがあったらの話だけどな」

「あったらじゃない。この手で勝ち取るんだよ」


例えその地獄の果てが、更なる地獄であろうとも進み続ける。

その果てにこそ、平和は勝ち取れるものだと信じているから。

その為ならば喜んで、逆賊や反逆者の汚名も受け入れる。

でなければ、剣を手にする意味などない。


「その為に色々と動いてるんだからな」

「つっても、そういう交渉や政治に関して、アンタは基本艦長とかに丸投げだろうが」

「事実、艦長の方がこの手の事は上手とお前も分かっている筈だろ」


ハヤトはアキトが自分達の隊長と分かっていながらも、思わずため息を吐く。

結局の所、その力を十全に発揮に出来る場所は戦場しかないのだ。


「(そりゃあ俺も似たようなモンかもしれねえけどな)」


しかし、その隊長に着いていくと決めている自分もそういう人種だと分かっている。

早い話、自分達は交渉や政治は向いていない。

だから、それが出来る艦長や副官に任せてしまう。


「この前、艦長が愚痴ってたぞ。交渉ごとを任せる隊長が何処に居るんだって」

「そこは諦めてもらうしかないな。それともお前がやるか?」

「却下。アンタだって俺がそういうの苦手だって知ってんだろうが」

「まあな。だからこそ、この手の話は優秀な奴に任せる方が効率が良いからな」

「まあ、そうだな」

「それに重要なのはこれからの事だ。例の奴はどうなんだ?」


アキトの言葉に真剣な表情で見つめるハヤト。

真っ先に連想されたのは現在開発されている最新機体。

対空戦に特化した人型機動兵器『リオン』。

仮想電子空間内で乗った時、真っ先に感じたのはその性能だった。


「能力は上々。現状の空戦機体に比べても遥かに優秀」

「恐らく能力差を見ても、量産が決定されれば今後の対空戦では奴らの独壇場になるだろう」


今までは航空機が主流であった戦場は今後大きく変わっていく。

小型化されたテスラ・ドライブは機体次第では、さまざまな機体を空中へ飛翔させていく。

ハヤトは其処から来る可能性に興奮を隠せずにはいらない。


「そのうえ、まだ他にもあるって噂もある。つまりそれだけ上層部は本気って事かよ」

「それ位でなければ勝てねえ相手って事になる」

「だろうな」


これから起きる戦争を考えれば、少ないなど決してあり得ない。

むしろ未だ人類は目覚めていない以上、これでも少ないのかもしれない。

何時終わるのかも分からない戦争が待ち受けている。

そんな中で自分達もまた生き残れるかどうかすら怪しい。

何故なら戦場において絶対に生き残るなんて保障は一切存在しない。

戦場にあるのは常に、撃つか、撃たれるかの二つだけ。

だからこそ、自分達は引き金を引く。

こんな所で死にたくないと常に思っているから―――。


「だが、何が来ようとも俺達のする事は何も変わらないがな」

「どんな敵だろうが撃つだけ、か」

「それしか能がないからな」


例えどれだけ血塗られた両手であっても、平穏を築く事こそが自分達の役目なのだから。

その為に自分達はあの方の下へと集う。

その先が地獄を作る事になろうとも、これは必要な事だと知っている。

ただ己が成すべきことを果たす為に男達は行く。

自分達を待つ戦場の下へと―――。








★ ★ ★ ★ ★






スペースコロニー。

そこは宇宙に旅立った人類が新たに手に入れた居住地。

しかし、問題が発生すればコロニーと共に運命を共にする危険性もある世界。

地球連邦政府より独立国家として建国が認められた。

それでも道のりは楽では無かった。

過去三度に渡るテロ行為が多くのコロニー居住者の記憶へと焼き付く。

二度と起きないようにコロニー側は新たに地球連邦とは違った軍を設立。

コロニーに駐在していた地球連邦宇宙軍を再構成された『コロニー統合軍』が出来上がる。

彼らもまた地球圏を護る剣の一つであった。


「おらあッ!」


コロニー・ホフヌングに新たな兵士が戦場へと飛翔しつつあった。

『ベイル=シュノームベルト』。

18歳という若さを持ちながら、自らの意志で志願した兵士。

仮想電子空間で今後渡される機体『リオン』に搭乗し、宇宙の闇を駆け抜けていく。

その姿に恐れはなく、寧ろ戦場を喜々としている雰囲気が感じ取れた。

まるで其処に行く事を待ち望むように―――。

その姿を観察する軍人が二人。

一人は上官らしき老齢の男性。

もう一人は20代前半と見られる男性だった。


「戦い方が兵士のそれではないな」

「はい。このデータを見ても、反射速度と直感に頼っている面が大きいですし」

「ふむ……」


そのシミュレーションを観察しながらも、思わず若い男がため息を吐く。

『リョーヤ=アマカゼ』

彼もまた若くして軍属に入った人間。

老齢の男は眉を歪める。


「しかし、この戦い方では他者との連携が取り辛い筈だ」

「ええ。加えて……」

「加えて、何だ?」

「その……なんというか……性格の方にも問題がありまして」


リョーヤはベイルに関する情報のファイルを手渡す。

その情報の数々に上官の眉間の皺がより深くなっていた。

其処に書かれていたのは問題の数々。

命令違反や暴力行為、果ては女性士官に対する中傷的な言葉など記入されていた。


「よくもまあ、これだけの問題を起こしたものだな……」

「彼も必要最低限の命令は守っているつもりなんでしょうが」

「しかし、これでは……」

「ええ。まず軍隊の中では成立しないでしょう」


軍属において命令や規律は絶対順守。

停職に降格とさまざまな罰則をその身に降りかかっているにも関わらず、彼は気にも留めない。

まるでそんなものは無意味と言わんばかりに行動していく


「この大変な時期に面倒な男を押し付けられたものだな君は」

「まあ、自業自得な面もありますから」


これに関しては同じ部隊のリョーヤも弁明する気はなかった。

何故ならリョーヤがこの男の面倒を見るようになったのも自分の問題が原因なのだ。

ベイルとは違い、自分は断じて志願して入った訳ではない。

そんな中で本気を出す気など毛頭ない。

周囲はそんなリョーヤを見逃さず、敢えてこの問題児であるベイルを寄越したのだ。


「(やっぱり怠け過ぎたのがいけなかったかな)」


おかげでこんな面倒を背負い込む嵌めになった。

そんな自分に思わずため息を零す。

すると、シミュレーターのハッチが大きく開かれていく。

其処にはシミュレーションを終えたばかりのベイルが居た。

その表情は苛立ちそのものがハッキリと表情に浮かんでいた。


「くそがッ! こんなんじゃ足んねえんだよッ!」

「何が足りないだ? 全機撃破でも十分だと僕は思うけど」


そんなベイルを臆さず、リョーヤは進んで行く。

その言葉に苛立ちを隠さないまま、思いっきり睨みつけるベイル。


「全機撃破だぁ? こんなオモチャが登録したデータじゃあ所詮そこ止まりなんだよ」


どれだけ数をこなしても、シミュレーションである以上はそのデータ以上の事は出来ない。

それはどんなデータがインプットされようとも変わらない。

寧ろ恐ろしいというべきは、どんな状況でも瞬時に対応出来るベイルの反射と直感力。

勘が良いと言えばそれまでだが、それは戦場に立つ者にとって必要な事の一つでもある。


「(人の直感っていうよりは獣並みの直感だなあ)」

「なあ、いい加減こんなオモチャじゃ満足出来ねえんだ。何時までもこんな下らねえ事をさせてんじゃねえ

よ少尉!」

「(そのうえ、この気性の荒さ……誰か変わってくれないかな)」


リョーヤは内心愚痴る。

もしこの男を従えさせる事が出来る人間が居るなら、それこそ見てみたい。

軍属や規律では、この男を縛る首輪にはならない。

あまりにも我が強過ぎて、周囲との折り合いがつかないのだ。

リョーヤにしても現状では上手く従わせる方法は無いに等しかった。


「ならば、君が相手をしてあげたらどうだリョーヤ少尉?」

「えッ!? 私がですか!」

「くはッ! そりゃあ面白え! いい加減アンタともやりあいたかったんだよッ!」


リョーヤとベイルの反応は正反対。

リョーヤの嫌そうな視線も無視して、上官は告げた。


「君の実力は私は知っているつもりだ。ならば、いい加減に小僧の鼻っ柱の一つでも折ってみたらどうだ?



「いや、それとこれとは話が」

「それに多少使い物になってくれた方が今後に役立つ筈だ」


今後。

その言葉に先程まで騒いでいた二人も静かに、また真剣な眼差しになる。

コロニー統合軍も戦場に打って出る事は秘密裏に聞かされている。

過去類を見ないほどの長く、恐ろしい戦争に入っていく。


「避けることはやはり……」

「ああ、もはや不可能だ」

「んで、俺らもそれに便乗して動くんですか」

「そうだ。それがコロニー統合軍の決定だ」


ベイルは上官の言葉にニタァと血に飢えた猛獣を連想させるような笑みを浮かべる。

ついに待ち望んだ戦場へと飛翔していく時を夢見るベイル。


「了解、了解。それが軍の決定なら俺は従いますよ」


リョーヤは上官の言葉にため息を零し、何処か憂いを隠せない表情をする。

兵士及び民衆からも犠牲者が出かねない戦争。

それを引き起こす側になってしまった自分に少し嫌気がさしてしまう。


「それが命令なら従います。もう逃げ場所なんてものがあるか分かりませんし」


両者とも在り方は反応は違う。

しかし、それでも逃げ出すという選択肢は無かった。

両名の言葉を聞いた上官は強い眼差しで大きく頷く。


「それと、そのシュミレーションが終わり次第、私の部屋に来てくれ。これからの君達について話したいこ

とがある」


その言葉を告げると上官はその場を後にしていく。

そして、その場に取り残された二人は―――。


「さあ、少尉。さっさと始めましょうや!」

「……やっぱりやるんだね」




こうして4人の兵士はまだ見ぬ戦場に集い始める。

まだ見ぬ戦場がどういうものであろうとも彼らは知っている。

これから始まる戦場は何処に行こうとも地獄であることを―――。






あとがき
お久しぶりな方はお久しぶりです
初めましての方は初めまして、シリウスです。
いやあ、つい書きたくなって書いてしまった。
ハッキリ言って、見切り発車も同然です。
ちなみにこの作品はリリカルキャラはいません。
全てオリジナルキャラとスパロボのキャラで構成されていくでしょう。
単純にそれらを扱える技量がないだけですが―――。
では、また会う日まで頑張ります。
2012/12/14(Fri) 03:35:35 [ No.987 ]

投稿者 No. 削除キー

- YY-BOARD - icon:MakiMaki
- Antispam Version -