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◆ まだまだ暗躍中 投稿者:シリウス  引用する 
トーレ アイドネウス島

そこは地球人が異星人を知る切っ掛けの場所。

『メテオ3』という巨大な隕石から地球では手に入らない超技術が検出された事が始まりであった。

その技術を用いた事で多くの分野や軍事技術が発展。

そして、異星人に対する人々の思惑が生まれた場所である。

『EOTI機関』

其処では異星人に対抗する為に新たな兵器が製造・量産されている。

その地下ドックの一角、銀髪の長髪をした女性は自分が預かる事になった戦艦『ストーク』を見つめる。

彼女が28歳という若さにして艦長『セフィリア=ローザ』である。

そして、アキトやハヤトが携わる小隊を預かる艦長。

艦を預かる者としての、乗組員や小隊の命を預かる責任と重圧。

その事に恐怖や怯えが無いと言ったら嘘になる。

しかし、その責任こそが自分の果たすべき役割であり、己の在り方。

そして、其処から退ける所には自分は居ない。


「セフィリア艦長、こちらに居ましたか」


後ろから聞こえる声にセフィリアは振り返る。

其処に居たのは明らかに50代を超えている老齢の男性。

彼もまた自分が扱うことになった乗組員の一人。

その男性を見たセフィリアは小さく笑みを浮かべる。


「あぁ、やはり自分が預かる艦はこの目で見てみないとね」

「ふむ。で、見たご感想は?」

「悪くはないさ。少なくとも今の私に見合ったものだ」


艦長に選ばれるという大役を仰せつかっても、未だ若輩の身である事は変わりない。

それでも、スペースノア級やマハト等の総司令官クラスの戦艦を扱いたい願望も持ち合わせている。

その為の努力も経験も一切惜しまない。

そうでなければ自分が預かる事になった小隊を扱えない。

今までは二人しかいなった小隊も、コロニー統合軍から二人の兵士が更に来ることになった。

渡された資料を見る限り、性格に難があるものの実力はあると書かれていた。

まだ見ぬ期待で、思わずくすりと笑みを零れる。


「艦長?」

「いや、小隊の事を思い出してね」

「……彼らですか」


艦長の言葉に真っ先に小隊の事を思い出す男性。

しかし、その表情は艦長とは逆に苦虫を噛み潰したように酷く歪む。


「本音を申してもよろしいでしょうか?」

「あぁ、構わないよ」

「何故あのような者達が我が艦隊に入る事になったのですか?」


男性にとって何故あんな連中が自分達の下へとやってきたのか全く不明だった。

確かにあの二人の能力や実力の認めている。

しかし、あまりにも性格や経歴に問題がありすぎる。

これではこの艦隊は敵を撃つまでに内側から崩壊してしまう。

来るべき時が迫りつつある中で、少しでも憂いを無くしたかった。

セフィリアは数秒間を開けて、苦笑交じりに答えた。


「はっきり言えば、私達は貧乏くじを引かされたのさ」

「貧乏くじですか?」

「そう。命令に従わない駒に用はない。しかし、実力がある以上は処分は出来ないのが上の本音だ」

「……そんな理由で自分達はあの者達を」

「でも、私は彼らを使うかな」


男性はその言葉に驚いた表情をする。


「私は別に言われた通りに動く従順な犬だけが欲しい訳じゃない」

「は?」

「そう。自らの判断で動き、必ず結果を遂行出来る猟犬が欲しいんだ」

「……同じ軍属としてその発言はどうかと」


軍属として命令は絶対順守。

その在り方はどの世界でも変わりない。

しかし、セフィリアの発言はそれを離れていた。

どのような性格や経歴があろうがなかろうが構わない。

ただ行動に見合った結果を残せと彼女は言う。


「それにそれ位で無ければ、この先は生き残れないだろう」


どちらにしても戦争が始まれば、油断や慢心、力が無い者から死んでいく。

どういう人間が戦場に求められていようとも、力を示し続けなければ生き残れない。

それをセフィリアは知っている。


「それにもう遅いよ」


セフィリアは手元に置いていたファイルを男性へと渡した。

男性は訝しながらファイルの中身を読んでいく。

読んでいくにつれて段々と顔色が悪くなっていき、更には表情すら歪んでいく。


「艦長!!」


そして、大きな声を出して、叫んでしまった。

セフィリアは思わずクスクスと笑みを零してしまう


「いや、すまない。だが、既に彼らはこちらへと向かっている」

「いや、しかし、これでは……」

「これについては既に決定事項であり、こちらに決定権も拒否権もない」


真剣さを醸し出しながら、どこか楽しげに語るセフィリア。

そのファイルの中身には本日、自分の部隊に来る彼らの名前や経歴が記されていた。

『ベイル=シュノームベルト』軍曹。

『リョーヤ=アマカゼ』少尉。

コロニー統合軍から派遣されてくる曰く付きの兵士。

セフィリアが所有する二人組の小隊を含めて、合計四人の小隊。

隊長の『アキト=アイザワ』中尉。

そして、『ハヤト=アカミヤ』少尉。

全員が曰く付きの兵士達。

それでもセフィリアは構わなかった。

既に賽は投げられている。

ならば、彼らの能力を十全に扱うのが自分の役目。


「どちらにせよ、私達のやるべき事は変わらないさ」

「そんな……」

「さて、彼らを迎えに行こうか……レミリス副長?」


セフィリアは男性の肩を叩き、通り抜けていった。

老齢の男性『レミリス=アーベン』副長。

この艦隊を取り仕切るナンバー2であり、この戦艦を取り纏める一番の苦労人であった。


スーパーロボット大戦OG・アストレイ

第二話『集結』


「あー……だりぃ」

船の甲板からベイルは気だるげに海を見つめていた。

この体全体に圧し掛かる重力を浴びている感覚。

生まれも育ちもコロニーで生きてきたベイルには慣れない感覚であった。

そのうえ、何処を見ても空と海しか存在しない世界。

このままでは目的地に着く前に退屈で死んでしまう。


「どうかしたか、ベイル?」


そんなベイルの後ろから声を掛けるリョーヤ。

そんなリョーヤにベイルは一切敬礼も身嗜みも整えず、気だるげな視線を向ける。


「いや、なんつうか、この重力が聞いてたのよりもキツイんっスよ」

「ん? というと、地球は初めて?」

「そりゃあ生まれも育ちもコロニー」

「なるほど。ならば、気をつけないと」


その言葉に訝しむベイル。

少なくともシミュレーターではあらゆる状況に対応できるように戦ってきた。

無論その中には地球での戦い方も供えられていた筈。

それを今更何を気を付ける必要があると思ってしまう。


「重力だよ。宇宙とは違い、地球では重力が機体やパイロットにも負荷が掛かるって事さ」

「そんなのシミュレーターって散々学んできたことじゃねえか」

「シミュレーターにあるのは情報を元に創られたものだからね。実戦と情報とじゃあ変わってくる」


特にベイルのように若く、宇宙でしか実戦経験のないパイロットではよくある危険な認識の一つ。

どれだけシミュレーターで経験を積もうとも、それはあくまでも情報にしか過ぎない。

地球では常に重力が発生し、其処に掛かる重力を常に想定しなければならない。

こればかりは常に認識と感覚で覚えてもらう以外に無い。


「(そういう意味でも、この任務は実戦経験が豊富な人に任せるのがベストなんだけどなあ)」


少なくとも今回の任務はリョーヤは自分やベイルのような若輩者が行うべき任務ではないと思っている。

彼らが上官より与えられた任務―――コロニー統合軍から派遣兵としてEOTI機関へと行くこと。

そして、来るべき時に備えて、地球で待機しろとの命令が下されたのだ。

自分達も軍人で在る以上は命令なら従うだけ。

しかし、納得がいくかどうかは別。


「(とんだ貧乏くじを引かされたなあ。やっぱり一回厄除けに行った方がいいかなぁ)」


どちらにしても此処まで来た以上、今更何を言った所で遅い。

その為に自分も周囲も引き返せない所まで動いているのだから。


「少尉……まだ着かねえんスか」


そんなリョーヤを尻目にベイルは退屈そうに海を眺めている。

船場からアイドネウス島に向かって三時間。

未だに島が見える兆しが見えてこない。


「というか、何で海で行くんスか。飛行機に乗れば直ぐじゃねえか」

「確かに飛行機の方が楽なんだけど、流石に今の状況だとね」

「あー……アイツ等スか」


現在アイドネウス島にあるEOTI機関にはパスが無ければ、簡単に入る事は出来ない。

特に自分達のような身分を明かせない存在なら尚更である。

その理由はたった一つだけ。

連邦安全保障委員会の主幹メンバー13人によって構成された組織「EOTI特別審議会」の存在であった。

その行動の目的はビアン博士やEOTI機関の監視、妨害であった。

今彼らに知られるという事は、後の宣誓に気付かれてしまう可能性がある。

それを避ける為にも少しでも安全な方法で行かなければならない。


「しかし、我が身可愛さのあまり地球を売る連中が政府トップとはねえ」

「そういうものだよ。結局彼らは自分の事しか見えていないんだ」

「いいや、アイツ等は分かっちゃいない……」

「うん?」


ベイルはEOTI特別審議会を嘲笑する。

自分の命欲しさに異星人に地球を売り渡した所で、意味がない。

何故なら異星人は彼らの命を求めてはいない。

寧ろ求めているのは、彼らとは真逆の存在。


「俺には分かるんだよ。異星人はあんな奴らの命を求めてなんかいねえのさ」

「……お得意の勘?」

「ええ、まあ、そんな所ですかね」


もっともベイルにとって異星人や地球連邦が何を考えていても関係ない。

結局他人が何をどうしようと知った事ではない。 

己が為したいように為すのみ。


「おっと、ようやく見えてきたか」

「そうみたいだね」


船旅をして3時間半。

ようやくアイドネウス島が見えてくる。

★ ★ ★ ★ ★

それから船は無事、アイドネウス島に着いた。

其処でリョーヤとベイルを待っていた二人の兵士。

『アキト=アイザワ』と『ハヤト=アカミヤ』だった。

二人はそのまま船の側まで近付いていき、敬礼した。


「リョーヤ=アマカゼ少尉とベイル=シュノームベルト軍曹だな」

「ええ、あなたは?」

「アキト=アイザワだ。階級は中尉だ。一応お前達の上官になる事になっているな」


上官という言葉に二人の表情がわずかに険しさが増す。

この男が自分達の小隊のリーダーになる。

流石の二人もアキトがどういう人物かを探るような視線で見つめる。

そんな二人にアキトは思わず口元を緩める。


「といっても、殆んど階級が上だった所為で押し付けられたようなもんさ」

「と言うことは、そっちの人は?」

「俺はハヤト=アカミヤ。階級は少尉だ」

「つまり自分と同じですか」

「まあ、そうだな」


リョーヤが見た限り、階級だけではなく年齢も離れているようには見えない。

しかし、ベイルにはない戦場独特の落ち着きが其処にはあった。

実戦経験を相当積んできていると見てとれる事が出来た。。

少なくともベイルを御守を自分だけが背負い込む嵌めにならずに済み、リョーヤは内心ほっとした。


「で、一つ聞きてえんだがな。本当にこの中にアレがあるのかよ」


上官に対して一切敬意も労いも無い言葉が放たれる。

思わずハヤトは眉をひそめ、アキトは苦笑する。

資料に書いてあった通りの人物像。

アキトは彼の資料を見た時、面白いと内心思った。

軍属に居ながら、まったく従属しようとしない思考。

その時点で罰則であるにも関わらず、それでも改めようとしない。

そうした存在を如何に操れるかに隊長としての手腕が問われる。


「アレとはリオンの事か?」

「そうだよ。ほんとにそいつはあるのかって聞いてんだよ」

「ああ。既にテスト機のロールアウト済みで、量産も進行中だ」

「かはっ……そりゃあ良いねえ。そいつを扱える日が待ち遠しいぜ」


一機でもロールアウトが完了すれば、その後は量産していけばいい。

その量産についても着々と進行中。

そして、それを扱う兵士もまた揃ってきている。

あとは時期を待つだけ。

その時が来れば世界は大きく変わる。


「二人は一応リオンについては?」

「渡された資料ならば頭に叩き込みました」

「同じく」

「なるほど。それなら行くぞ」

「行くってどちらにですか?」

「決まっているだろ……俺達の艦長の下にだよ」


アキトはそう言うと踵を翻して、一歩また一歩と進んで行く。

その後を着いていく三人。

リョーヤは進みながらも周囲をじっくり見渡していた。


「そう警戒すんな。どうせこの島にはスパイなんて居ねえよ」

「……どうしてそう言えるんですか?」

「決まっているだろ?」


ハヤトは答えをはっきりと言わなくても、それでも伝わるような言葉を告げる。

その視線と口元の浮かべる笑み。

それだけでリョーヤはスパイがどうなったか、直ぐに分かった。

恐らく見つかった時点で容易に想像が出来る。

殺されたか、あるいは洗脳されたかのどちらか。

リョーヤの胸中に苦さが浮かぶも、直ぐに押し殺す。

戦争をする以上は少しでも敵に情報を与えてはならない。

特に自分達のような未だ表舞台に出れない身の上で在る以上は尚更隠し通さなければならない。


「しかし、よく量産にするにしても此処まで隠し通せましたね」

「施設は表に出ているものだけじゃないからな。機関と繋がりを持った組織はいくらでもある」


それにとハヤトは言葉を続ける。


「お題目次第では幾らでも兵器の開発なんて幾らでも出来るさ。特に今回の場合では」

「異星人の侵略と防衛、ですか」

「確かにそれなら形振り構ってられなくなった連中から金をこってり絞り出せるわなあ」

「この辺が結社としての強みの一つだ。マオ社のように軍と正式に契約したわけではないから、政府に手の内を晒さずに済むしな」

「なるほどね。だから、こうして軍事力を蓄えられるってわけか」

「そういうことだ」


表向きは異星人の超技術による開発や調査をメインにしているEOTI機関。

連邦政府は嫌でもそちらの方へと視線を向けなければならない。

そして、結果的に別の方がおろそかになっていく。

それも一つの道理であった。


「まっ、どっちにしたって何もしないまま異星人に服従する気なんざねえさ」

「はっ! 違いねえ!」

「異星人が来るまで生きていけたらの話ですけど」

「生き残るさ、絶対にな」


地球や異星人の戦いがどれほど苛烈であろうとも死ぬ気など毛頭ない。

そもそも死にたがりが生きていられるほど戦場は甘くない。

あそこは救いも幸福も一切存在しない。

ただ力がある者だけが生き残れる世界。


「何の因果がか知らんが、それなりに面白いメンツがこうして集ったんだ。簡単に死なれても困るな」

「随分とお優しい事を言ってくれるじゃねえか、隊長さんよ」

「それにな、こちらも隊長を務める以上はお前達を生かす気で行うさ。それで死んだらお前達の力の無さをを恨め」

「そりゃあな。此処に居る連中だってそれ位は重々承知しているだろう」

「それに上官に恵まれないなんて今更珍しい話じゃないですしね」

「ふっ、言ってろ……おい、止まれ」


適度に軽口をたたき合いながら交流を図っていく。

そして、先頭に立っていたアキトは進むの止め、前方に向かって敬礼した。

その先に居た人物『セフィリア=ローザ』と『レミリス=アーベン』が居た。

すぐさまハヤト達も後を追うように敬礼する。


「どうやら交流はそれなりに進んでいるようかな」

「えぇ、艦長もどうして此方に?」

「私は自分の兵士はこの目で見ておく性質でね。でなければ、命を預ける事も預かる事も出来ないだろう」

「なるほど」


セフィリアはアキトと会話した後、直ぐにリョーヤとベイルの方へと視線を向ける。

その視線に思わず二人は敬礼しつつも身構えてしまう。


「そう緊張しないでくれ。資料で読んだとは思うが、君達を預かる事になった艦長のセフィリア=ローザだ。で、彼が……」

「レミリス=アーベンだ。階級は少佐。貴官達の艦の副長を務める」

「はっ! 自分はリョーヤ=アマカゼです。階級は少尉です!」

「あー……ベイル=シュノームベルト。階級は軍曹」


お互いに真逆の挨拶。

どういう人物かは資料で書かれていた経歴や情報で分かっている。

それでも形式とはいえ、しなければならない重要な事であった。


「さて、コロニーからの遠方ご苦労さま。こちらも諸手を振って歓迎させてもらうよ。お互い死ぬ時まで戦い合おう、この戦場をね」


これより戦場を乗り切る同胞として笑みを浮かべるセフィリア。

此処にEOTI機関とコロニー統合軍の合同部隊が設立されることになる。

曰く付きの兵士たちは戦場に何を見て、何を思うか。

それは誰にも分からなかった。


あとがき
お久しぶりです、シリウスです。
DCルートは地球連邦軍とは違って、暗躍する側だからどうしても影が薄いです。
リオンに乗って、ヒャッハーしたいなあ。
では、また逢う日まで頑張ります
2012/12/24(Mon) 01:41:54 [ No.989 ]

投稿者 No. 削除キー

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