スポンサードリンク




 
マルスより、本日も公務にて






メディウスとの戦いが終わって一年…


祖国アリティアの復興の為、日々寝食を忘れ励んできた。

その甲斐もあり、一時は敵に奪われ、荒れ果てた街々も再び元の賑わいを見せている。


しかし、戦争前より豊かになったわけでもないし、失われた国民の命が戻ってくるわけでもない。


民の生活と平和を守る為、より一層国務に励まなければいけない。


我がアリティアの王として…




ジェイガン「マルス様、そろそろお時間です。演習場の方へお願い致します」


マルス「…おっと… もうそんな時間か… 今日は新人騎士の選抜試験だったね」



公務の合間、ふと昨日の日記を読み返していた僕にジェイガンが声をかけてきた。
もう大分歳の彼だが、下手な若い連中より頼りがいのある、僕が生まれた頃よりの家臣だ。



ジェイガン「はっ。マルス様の元に仕えようと集まった者、総勢百余名。多くの者が集まっております」


マルス「かなりの人数が集まったものだね…僕なんかの為にとても嬉しいけど、全員を召抱えるわけにはいかないからね…」



国全体が復興に向けて活気づいているからだろう。
自分の中の持て余している力をぶつけたい者、出世を夢見る者、多くの若者が集まった様子。



ジェイガン「勢いだけの荒くれ者も混ざっておりましょうからな。資格ある者かどうか見定めを致しませねば」


マルス「そうだね…ちゃんと人は選ばないとね…前の戦争の一番の教訓だし…」


ジェイガン「…ほとんどタダ飯喰らいでしたからな…」



誰とは言いませんけどね。オグマとか。



マルス「よし、進行は全てジェイガンに任す。僕は集まった者達の顔を後ろでよく見ているとしよう」


ジェイガン「はっ。では参りましょう」


マルス「うん」



そして試験会場…



マルス「へー ホントに大分集まったもんだねえ」


ジェイガン「何人が残るかわかりませんが…有能な者が多いといいのですが」


マルス「選抜方法はどうするの?」


ジェイガン「模擬戦を予定しております。腕を見るには手っ取り早い方法ですので」


マルス「う〜ん…でも…あからさまに戦闘に向いてなさそうな子もいるようだけど…(集まっている志願者の一人に目を落とす)」



カタリナ「(キョロキョロと辺りを見渡しつつウロウロ)あ…!?」


??「(ぶつかってきたカタリナを支える)大丈夫か?」


カタリナ「ご…ごめんなさい…私急いでて…」


??「気にするな。可愛い子なら全て許される。ブスは常に犯罪だが」


カタリナ「え?」


??「いや なんでもない」


カタリナ「あ もしかしてあなたもアリティア騎士団を目指してこのアリティア城へ?」


リョウジ「ああ ここで騎士試験を受けられると聞いた。俺はリョウジ。セラ村から来た騎士志願者さ」


カタリナ「リョウジ…良い名前です。じゃあ一緒ですね私達。私はカタリナと申します」




ジェイガン「(遠くから)…これはまた、ひ弱そうな女子ですな…」


マルス「もう一人、話してる彼の方はかなり腕がありそうだけどね。…若干下品な空気をまとっているけれど」



しかし、なぜだろう。どことなく他人と思えない。

始めて見た男だが、なんとなく長年一緒にやってきたような感がある。



ジェイガン「魔術に長けているか、知識が売りか…なんにせよお側へお仕えするならば、ある程度の腕は必要となります」


マルス「模擬戦で全て決めるって事だね」


ジェイガン「はっ」


マルス「わかった。ではそのように」


ジェイガン「はっ!」


マルス「彼の実力もそれでよくわかるだろうからね…」



とりあえずは彼に注目して、成り行きを見るとしようかな…



カタリナ「私もマルス様にお仕えしたくてここへやってまいりました」


リョウジ「まぁ ここにいるんならそうだろう。でなきゃなにしにいるかわからねーじゃねえか」


カタリナ「(き、厳しい…)あは… そうですね。…でも志願者の方々はこんなに大勢いるのですね…あちらの人々もそうですし、向こうも…」


ルーク「くー!ここからだ!俺の輝ける騎士伝説の始まりだぜ!後にアリティア一の名騎士とうたわれる予定の俺が今まさに騎士としての第一歩を!」


ロディ「…先行くぞルーク」


ルーク「おわっ!?待て待てロディ!相棒を置いてくなって!」


リョウジ「あの二人も俺達と同じ志願者か。落ちたら笑ってやりたいところだが、受かってもある意味笑えるな」


カタリナ「…(汗)…え〜と私達も行きましょうリョウジ。騎士団長ジェイガン様からお話があるようです」


リョウジ「おう」



マルス「おや…始まるみたいだな…」



演習場に志願者が整列し、ジェイガンが前に出る。
試験前の挨拶とか説明とかだろう。歴戦のおじいちゃんを前に若者達はどんな顔を見せるのか。



ジェイガン「諸君らはアリティア騎士にならんとして今日この門を叩いた。アリティア騎士は有能ならば家柄を問わず選ばれる。だが、その道は容易ではない。今ここにいる諸君ら百余命のうち、試験を突破して騎士となれる者は数名であろう。」


カタリナ「き、緊張しますね」


リョウジ「望むところだ。この日の為に村で修練を積んできた。六角鉄棒とか振り回してな」


カタリナ「ろ、六角鉄棒…?」


リョウジ「こっちの話だ」


ジェイガン「では、諸君らが今日の為にどれだけ己を鍛えてきたか、それを示してもらおう。騎士見習いは二人一組となれ!模擬戦を行う!相手は我々アリティア正騎士である!」


カタリナ「え!?いきなり戦闘ですか!?こ、困りました…リョウジ、お願いします!私と一緒に組んでくれませんか?」


ョウジ「あ?お前何しに来たんだ」


カタリナ「ひぃ…そんな怖い顔で睨まないでください…私、軍師志望なのです…」


リョウジ「軍師?んなの騎士と一緒に募集かかってんのかよ?」


カタリナ「うぅ…試験さえ通れば適正とか見てもらえるかと思って…」


リョウジ「…お前一人でやるしかなかったらどうしてたの…?今この時点で頭が良いとは思えないんだが…」


カタリナ「い、いえ!戦いさえ始まれば助言はバッチリです!ホントです!戦う力だけないだけです!」


リョウジ「…まぁ わかったよ。俺も下手な奴と組みたくねえしな。サムライの力を見とくといいぜ」


兵士「そこの二人!次はお前達の番だ。武器を構えて位置につくのだ。急げ!!」


リョウジ「あーい。行くぞカタリナ。すぐ戦いになる」


カタリナ「は、はい!よろしくお願いします!」



こうして試験は始まった。

多くの若者が我がアリティアの正騎士と剣を交え、そして大体が落ちていった。



マルス「お 彼の番だね」


ジェイガン「あの娘と一緒ですな。さて、私が直に腕を見てみますか…」


マルス「君自らかい?」


ジェイガン「なかなか腕が立ちそうですからな。私を相手に敗れたとしても、内容によっては合格と致しましょう」


マルス「ふむー… わかった。じっくり拝見させてもらうよ」


ジェイガン「はっ」



そしてジェイガンと兵士が一人、彼等の相手をすることに。

剣を片手に悠々と構える、騎士志願の彼。え〜と…名前は…



カイン「リョウジという名前だそうですな。いやいや、結構な雰囲気ありますね」


マルス「…! カイン、君も試験の採点あるんじゃなかったっけ?」


カイン「あの男の相手をするはずだったのですが…ジェイガン殿に代わってくれと…兵としては引退を考えてるご様子ですし、最後の大仕事と思っておいでではないでしょうか」


マルス「君も前の戦いではおじいちゃんと将棋しかやってなかったのにねえ…」


カイン「う… あれから一年鍛えに鍛えたんですよ!もう二軍行きなんて…」


マルス「あ 始まるよ〜」



剣を構え、号令を待つ四人。

ピリピリとこちらにも緊張が伝わってくる。



カイン「あの構え…やはり只者ではないですね…」


マルス「うん…だけど問題はもう一人の子だ…どう見たって素人だよ…」


カイン「ですね…何か隠しているものでもあるのでしょうか…」



そして…



兵士「はじめぇえ!!」



号令が下ろされる。

兵士は裂帛の気合と共にリョウジへと走り、対するリョウジは待ちの構えだ。


あの子は…!?



カタリナ「リョウジ!お願いしますね!(ダーッと走って端へ逃げる)」




いきなり逃げたー!?


なんの迷いも無しにダッシュで逃げたー!?




マルス「背中向けて走ってちゃったよ!?」


カイン「戦場なら思い切り敵前逃亡ですよ あれ!」


リョウジ「てめー!?後でマジ犯す!!」



王宮内で犯すとか言わないように…


でも気持ちはわかるというか…なんだろうフラッシュバックというか…


ますます彼を他人と思えない僕がここにいます姉さん。



兵士「せあー!!」


リョウジ「やかましい!!(剣で受けて前蹴り叩き込み)」


兵士「げはぁ!?」



マルス「おぉ!?」


カイン「やりますね!」



思った通りの腕の持ち主だ。…かなり下品だけど…

しかしこうなると大丈夫かジェイガン…老体に遠慮するような人物じゃなさそうだよ…



ジェイガン「やるな!さあ!参れ!」


リョウジ「うっし!(飛びかかる)」


ジェイガン「なんの!(弾き返し、返す刀で当身)」


リョウジ「ぐっ!?…にゃろ…」



マルス「お〜 やるねジェイガン」


カイン「汗ビッショリですけどね。彼の目、殺る気満々ですし…」


マルス「勝ったとしてああいう人物を試験に通しちゃってもいいのかなって気はするよ…」



そういえばいきなりダッシュでとんずらしたあの子も、この場合合格とするのだろうか。

二人一組とはいえ、なんにもしてないのに受かっちゃまずいんじゃないだろうか。



カタリナ「リョウジー!!傷薬はマメに使ってくださいねー!!」


リョウジ「お前にはア○ルにローション塗りこんで、ケツからぶち込んでやる」



…百も承知の助言に、どうしようもない暴言のキャッチボール。


えっと…我が栄光あるアリティア騎士団の試験だったよね?



リョウジ「おらー!!死ねー!!」



老人に死ねとかやめて下さい。



ジェイガン「ぬう!?(剣を受け止めきれず) ぐはっ!? …なんと…!」


リョウジ「老人は猫でも抱いてるのが似合いだ」



不破北斗か。


とりあえず…条件的には合格…だな。


…色々認めちゃいけない気がするが…



ジェイガン「うむ!見事!今年の見習いたちは期待できそうだな」


カタリナ「やりました!勝利ですリョウジ!…とはいえ私はなにもしてないのですが…全てリョウジのおか…」


リョウジ「(カタリナの頭をつかんで茂みへ行こうとする)」


カタリナ「いやー!!?」


ジェイガン「コラコラコラ!模擬戦に勝利した者は集合だ!マルス様よりお言葉がある!」


リョウジ「ちっ しょうがねえ。マルス様のお言葉なら聞かないわけにはいかねえ」


カタリナ「た…助かりました…(ガクブル)」


ジェイガン「うむ…聞き分けが良くてよろしい。ではマルス様…」



海賊の略奪現場かここは…


とりあえずジェイガンに呼ばれたので、カインをついてこさせて、皆の前へ。



マルス「みんな、よく来てくれた」


カタリナ「あ マルス様ですよ!威厳ありますね〜!なんと言っても前の戦争の英雄ですから!マルス様の活躍の話、私大好きなんです。リョウジもご存知ですよね?」


ョウジ「勿論だ。マルス様こそ前の戦争を終わ…あれ?(ポロポロと涙)なぜだ…なぜか泣けてきた…」


カタリナ「ど、どうしたんですかリョウジ!?」


リョウジ「いや…マルス様の苦労を思ったら突然…」


カタリナ「暗黒竜メディウスや魔王ガーネフを打ち倒した話…大変な苦労だったでしょうけど…なぜあなたが…」


ジェイガン「そこ!私語は慎め!マルス様の御前であるぞ!」


カタリナ「あ…ごめんなさい…」




まがりなりにも騎士団入りしたのに規律とかどうなってんのかな〜と考えてしまいました。


子供の遠足でももうちょっとしっかりしてないか?


ま…とりあえず…



マルス「…オホン… みんな。アリティアの未来を担う者がこんなに大勢集まってくれたことを、嬉しく思っている」


リョウジ「うおー!マルス様ー!!」


カタリナ「駄目です!また怒られますよ!」


マルス「…戦争は終わり。今は平和な時代だ。でもその平和はただ生きていれば享受出来るものじゃない。平和とは僕たち国を治める者が、命をかけて守らねばならないものだ」


リョウジ「その通りです!平和すぎてボケてしまったアホどもに聞かせてやりたい!そこに痺れる!憧れるぅ!!」


カタリナ「なんの話してるんですか!落ち着いてください!」


マルス「…(なんか僕もよく言ってたセリフな気がする…)僕一人では何も出来ない。だからみんな、これから騎士として力をつけ、僕を助けて欲しい!」


カタリナ「はい!マルス様!!マルス様のお言葉が聞けて良かったですね、リョ…」


リョウジ「ジークマルス!ジークマルス!ジークマルス!」


カタリナ「なんの言葉ですか!?はっちゃけ過ぎですよ!誰かー!この人止めてくださーい!!」




その男のおかげで合格したんですよ貴方…



なんにせよ…なんかまた大変な事になりそうな予感…




 


メニューへ

次の話へ

WebMoney ぷちカンパ