新人の選抜も終わり、集まった者達の中から、騎士見習いが数十名選ばれた。
しかし、騎士となれる者はさらにこの中から僅か数名…彼等としてはここからが本番となろう。
どうか厳しい訓練にめげることなく、出来るだけ多くの者が騎士として僕の下に仕えて欲しい。
共に苦労を分かち合う仲間として…
マルス「(一仕事終えて散歩中)ふ〜(コキコキ)流石に連日の疲れがたまってきたなぁ…シーダが肩揉んでくれるけど、もっと根本からなんとかしないと体が持たないぞ…ん?」
気づけば騎士見習いの詰所の方まで歩いてきてしまった。
彼…リョウジは第七小隊の配属だったっけ…部屋からなんだか声がする。
折角だし、ちょっと覗いてみようか…
カタリナ「リョウジ、私達は第七小隊とのことです。あなたと一緒になれて良かったです。」
…普通にあの子も採用されてる…
一体何に価値を見出されたのかわからんが…まぁ…良いのか可愛けりゃ…
一方のリョウジは切れる直前の大魔神みたいな顔して立っている。怖い。
リョウジ「…ああ 俺もだ」
カタリナ「…ならなぜそんな怖い顔してるんです…?」
リョウジ「お前こそ、どうしてそんなに距離を離してる…?」
カタリナ「だ、だって!乱暴しようとするじゃないですかぁ!」
リョウジ「やらいでか!?始まった途端、素敵なエスケープかましやがって!なんでお前受かってんだよ!?あぁ!?」
ごもっともである。
まぁ それについては何度も繰り返したので…とりあえず成り行きを見守ろう。
カタリナ「あ、あなたと同じチームでしたから!一人なのに凄い強いし!どっちにしろ私の出番なんて無かったですよ!」
リョウジ「そういう問題じゃねえだろうが!とりあえず服脱げ!代金払ってもらおうじゃねえか!」
カタリナ「いやぁあああ!!お母さーん!!」
…カオスすぎる…
なんか僕が前の戦争で抱えていた不満とかぶるけど…
ストレートに表現するとあんな感じなのか…反面教師として今後注意しよう…
ってか いいのかあれほっといて…
他のメンツは…?
ルーク「…おーい 痴話喧嘩は後にしてもらえねえか…?」
リョウジ「…む…?誰だお前?」
ルーク「おいおい、同じ小隊メンバーだよ。俺はルーク。暁の聖騎士、ルークと呼んでくれていいぜ!」
リョウジ「わかったぜ。暁の聖騎士ルーク」
カタリナ「よろしくです。暁の聖騎士ルークさん」
ルーク「…う」
リョウジ「どうした暁の聖騎士ルーク」
カタリナ「さっきまでの元気どこ行ったんですか?暁の聖騎士ルークさん」
ルーク「うぉおおおおおお!(涙ッシュ)」
暁の聖騎士は恥ずかしい二つ名を連呼され、涙を流しながら部屋の端へとうずくまった。
そんなに悲しむなよ、暁の聖騎士ルーク。
ロディ「…(実際に呼ばれると恥だな…)私はロディ。君の腕は拝見させてもらったよリョウジ。これで全員かな?」
リョウジ「ん〜?わからん。全員だったら少ないとこだが…」
ライアン「(影からこそ〜っと)…あ、あの…僕もいます…僕、ライアンと申します…弓兵です…」
お…あの子は…
確かゴードンの弟のライアンじゃないか。
無事に選別試験は通ったみたいだな、良かった。
カタリナ「ライアンですね、よろしくお願いします」
リョウジ「これで全員か?んで、今日はなにすんの?」
カタリナ「ジェイガン様からご命令がありました。今日の任務はこの小隊の小隊長を決めること」
…隊長を決めるって…
見習いとはいえ軍隊だろ…
あれか、「六人一組になって、その中から班長を決めてくださ〜い!」ってあれと同じか。
ルーク「隊長!?わかった!皆がそこまで言うなら俺が隊長にな…へぶし!?」
リョウジ「(ルークに正拳叩き込み)…隊長を決めるのが任務…?」
カタリナ「は…はい…」
リョウジ「そりゃ上の人間がやることと違うんか…?」
ロディ「…そう思う」
僕も思う。
リョウジ「ってかこの小隊には上官がいないのか…?」
ライアン「…いや、僕らまだ見習いですから…指揮系統の中には加われないというか…訓練をこなす為の臨時の隊というか…」
リョウジ「学生の班分けかっつーの! …まぁ半人前って意味じゃ似たようなもんだがよ…」
カタリナ「そ…そうですよ!まずは騎士になってみせてからですよ!」
ロディ「…で…肝心の隊長だが…(ルーク見)」
ルーク「…(ノックダウン中)」
カタリナ「…私はリョウジを推します…」
ロディ「異議なし…下につけて抑えられる自信がない…」
ルーク「(よろよろと立ち上がり)…流石はあのジェイガン様が見込んだ男だぜ…」
予想通りリョウジに決定か…
まぁ…ぶっちゃけロディ以外まともに大人じゃないし…
この中からなら、ブッチ切りで強い人間を選んで正解だろう。
ルーク「とりあえずあらゆる意味合いを込めて、リョウジに全部任せるぜ…」
リョウジ「…まぁ 俺の好きにやれそうでいいけどよ」
ルーク「そうだ!隊長就任祝ってことで、リョウジの通名を考えよう!」
通名。そのまんま、いわゆる通り名である。早撃ちなんとか、とかレッドウルフとかあのへんである。
さっき自分で暁の聖騎士とつけて、呼ばれて泣いたあれである。
まだ何も実戦で活躍してないのに、通り名持つってどうなの。
カタリナ「あ いいですね」
ちっとも良くない。
リョウジ「… …あ?」
ルーク「英雄になる人物ってのは何かしらの二つ名があるもんさ。そうだな…お前の目からして…傷だらけのリョウジだ!いいだ…へぶわ!?」
リョウジ「(右ストレート)」
ロディ「不安だ…」