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マルスより、本日も公務にて






新人騎士見習い達の訓練も段々と本格的に厳しいものとなってきた。

遠目に様子を見ているが、根を上げる者もチラホラ見え始めている。


アリティアの正騎士となるのだ、当然甘いわけがない。


辛い試練を乗り越えられる力あってこそ…いや、そもそも力無くしては務まらないのが騎士なのだ。


ただ、どうか、一人でも多くこの試練を乗り越え…騎士となってほしいと…切に願う…




ルーク「はー」



というわけで、今日も危険物所持に定評のある第七小隊の様子見中のマルスである。


勿論、暇ではない。


ただ、時間が空いた時、たまたまここがなんかやってる時なのである。


流石に連日の辛い訓練で疲れているのか、アホのルークがため息を吐いた。




ライアン「どうしたんですか?ルークさん」


ルーク「どっかに若くて綺麗で、可愛いシスターいないかな?」




全然そんなんじゃなかった。


やっぱりアホだった。


多くの者が根を上げるこの訓練の最中に、女の子としか考えてなかった。


流石ルークだ。歪みない。




ライアン「ど、どうしたんですか…ルークさん…」



どうもこうもいつも通りな気がする。



ルーク「騎士にはロマンスが必要だろ?戦いで傷付いた俺を優しく癒してくれるような…」


リョウジ「…(つかつか)」


ルーク「う…!?なんだよリョウジ!!」



そこへ第七小隊の隊長、我らが核弾頭リョウジが厳しい顔で歩み寄る。


隊長らしく「たるんでるな!」とか気合いを入れてやるのか?


いや、そんなわけはない。




リョウジ「(がっしりと握手)同士よ!」




やはり色ボケには賛成かこいつ。


ところどころというか、頻繁にというか、下半身に関する下品な発言は伊達じゃない。



カタリナ「(リョウジの後頭部を引っぱたく)…下品な事ばかり言ってないで下さい。
     癒し手なら見つかりました。私達に助力してくれるそうです」


リョウジ「ほう!?」


ルーク「キタ!マイシスター!」



おや、騎士見習いの中にそんなのがいたのか。もしくはどっかで助力を頼んだのか。


勝手に小隊メンバーが増えていくのも何かと思うが、この先回復役がいないのは辛いだろう。


さて、どんな人なのか…



リフ「私は僧侶リフ。戦いはできませんが、治療の杖が使えます」




ジジイー!!結婚してくれー!!


ってリフかよ!?


…まぁ 流れとしてはこうなるだろうとは思っていたが…


美味しすぎるだろ…お爺ちゃん…



ルーク「…」


リフ「ジェイガン殿から話は伺いました。よろしければ癒し手として力をお貸ししましょう。おや?どうしました?顔色が良くないようですが?」


ルーク「…orz」


リョウジ「…orz」


カタリナ「(後頭部を引っぱたく)…あなたまでなにやってんですか…よろしくおねがいします。リフさん!」



新人の辛い訓練に老人引っ張りまわして大丈夫なのだろうか…



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


カイン「では実戦訓練を始める。全員準備は出来てるだろうな!?」


リョウジ「うす!」



というわけで訓練開始のようである。


完全に体育会系なノリの我らが第七小隊隊長。


頼もしいが騎士としては多分よろしくない。


さて、こないだからの流れだと、誰かしらが教官として特別に相手をする感じみたいだけど、今回は…?



カイン「今回の教官だが、珍しい方に務めていただくこととなった。
    アカネイア王国から我が国に来訪されていたジョルジュ将軍だ」


ジョルジュ「ゴードンに弓を教えに来たんだが、話を聞いて面白そうだと思ったんでな。
       無理を言って参加させてもらった。」



ジョルジュか。


そういえばゴードンのお師匠さんになったんだっけ。


前の大戦ではゴードンの方が強くなっていたけど。



カタリナ「ジョルジュさん…大陸一の弓使いと呼ばれる弓の達人ですよ…」


リョウジ「…ふーん」



全く興味なさそうである。


というか疑ったような目である。

ジョルジュの実力がどうか、とかではなく、多分色々疑心暗鬼になってるんだろう。今までの流れ的に。




カタリナ「リョウジ!頑張りましょう!」


リョウジ「おし!全員配置につけ!」




さて、模擬戦開始だ。


リョウジの実力は高いが、ジョルジュに狙われてしまうと少々きついだろう。

さて…?




カタリナ「どうしましょうか…リョウジ…」


リョウジ「お前が軍師だろ!?」


カタリナ「それはそうなんですけど…弓兵が多くて…迂闊に攻めればあっという間に狙い撃ちですよ…」


ルーク「シーダ様もいらっしゃるし、気をつけないといけないぜ?」


リョウジ「じゃあいつも通りしかねえじゃねえか。弓兵が近くに来る前に、戦士と傭兵を引きつけて片付ける」


カタリナ「ですね。じゃあルークとシーダ様は前に。リョウジは勿論一番狙われやすそうなとこいてください」


リョウジ「お前…」



ふむ。例によって引きつけてカウンター狙いか。


というかそれ以外に勝つ戦法無かったよね今まで。


リョウジとルークとうちの嫁が壁をやる模様。


…王の妃を迷いなく前線に配置ってどうなのだろう…




戦士「てりゃああ!」


リョウジ「うるさい(ガゼルパンチ)」


戦士「ぐわっ!?」




反撃で確実に倒すリョウジ。しかし余裕とはいかない模様。

彼も大分ダメージを貰ってしまっている。


シーダとルークも壁の役目を果たし、反撃の総攻撃で殲滅。

弓兵達はまだ間合い内にいないので、寄せる前にお爺ちゃんに回復してもらう。




ジョルジュ「やるな…よし!弓隊前へ!!」


リョウジ「出てくるぞ」


カタリナ「はい、でもまぁ向こうから出てきてくれるわけですから…」



なんだか軍師らしい感じの流れであるが、僕の考えどおりなら、
策がどうこうよりジョルジュのアホさ加減が暴露されるだけのはずである。



ジョルジュ「さあ!覚悟しろ!」




気合い十分で追っかけてくるアカネイア大陸一の弓兵。

弓の間合い内にリョウジ達を捕らえようと走る。




カタリナ「今でーす」




カタリナの合図と共に、リョウジ達三人が飛び出しジョルジュを囲む。


大陸一の弓の達人は、矢を一発も放つことなく、身柄を拘束された。


撃たせたら怖いなら、撃たせなければ良い。そうですそれだけなんです。
こんな簡単な事だけど、普通は絶対無理な罠にはまってしまったジョルジュさんパネェっす。


ちなみに囲み役にはリフも混じってます。お爺ちゃんパネェっす。


残りの弓兵もあっさりと殴られ、模擬戦はリョウジ達の勝利となった。




リョウジ「さて、ジョルジュ将軍。続けますか?」


ジョルジュ「いや…この間合では何も出来ん…大したものだ。見事な戦いだった。お前、名はなんという?」


リョウジ「リョウジ。アリティア従武士リョウジです」


ジョルジュ「《従武士…?》リョウジ、その名は覚えておこう。俺は手助けできないが…
       ゴードン、俺の代わりに頼めるか?」


ゴードン「はい、代わりに僕が彼等の力になります」


リョウジ「…個人的に手伝いとかじゃなく、なんだか義務的になってるぞ…」


カタリナ「いいじゃないですか、手伝ってくれるんですし」



助けにはなると思うが、どうかとは思う。


とりあえず今回の模擬戦も無事リョウジ達の勝利だ。流石だな。




ジョルジュ「リョウジ、お前達とはいつか共に戦いたいものだな。また会える日を楽しみにしている」



イケメンらしいキザなセリフを残して、ジョルジュは帰っていた。


対するリョウジはどことなく「俺は別にー…」という顔をしていた。正解。


さ…僕もそろそろ公務に戻ろう…


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

そして、しばらくの後。

本日予定の仕事も終え、自室に戻ろうとした時の事。



マルス「とりあえず一段落…と…でもやらなきゃいけないことが次々と出てくるなぁ…おや?あれは…」



前方に人影を発見。


あれは…リョウジだ。何かと縁のある男であるな。しかしどうしてこんな所へ?



リョウジ「しっかし、広い城だ…故郷の村とはえらい違いだな…」



どうやら道に迷った模様。

王宮内は入っちゃいけないところもあると思うので、内部を把握して無いと騎士として色々マズイと思うのですが。



と…そこへ…




エリス「あら…あなたは従騎士の方ですね…」


姉上登場。


王族が歩いてるところにうっかりやってきてしまった騎士見習いリョウジ。


僕の部屋も近いです。

下手すりゃ懲罰ものだと思います。



リョウジ「はい。従騎士リョウジです。アリティア騎士を目指し、ここへ参りました。あなたは…?」



気品から察知したのか、従武士とは言わなかった。


むしろ従武士ってなんだ。




エリス「私はエリス。マルスの姉です」


リョウジ「マルス様の姉君…!失礼致しました」


エリス「良いのですリョウジ。マルスの為に来てくれたこと頼もしく思います」



流石姉上、心が広い。

というか、王族の顔くらい知っとけよ!リョウジ!



リョウジ「英雄王マルス様のお力になれることは光栄です」


エリス「英雄王ですか…民達の間ではそう呼ばれているようですね。ですが…
    本当のマルスは…とても弱く傷つきやすい子です…」



むしろ既に傷だらけです。



リョウジ「マルス様が弱い…?」


エリス「ええ、確かにあの子は前の戦争でメディウスに勝利しました。
    あの子は高い理想と理想を持ち続ける強い意志を持っています。
    ですが…現実の世界は、あなたの知っている通り…理想だけでは救えません。」


リョウジ「はっ…」


エリス「今こうしてる間にも、私達が知らないどこかで民の命が失われてるかも知れない…
    マルスはその民を救うことが出来ません…」


リョウジ「しかし、それは…どんなに優れた王も万能の神ではありません。
     王も人間である以上、出来る事には限りがあります。」


エリス「ええ、その通りです。大抵の人間は現実を知り、現実と理想の折り合いをつけていく。
    でもあの子にはそれが出来ません。全ての民達を救いたいと本心から願っているのです」




姉上…!流石は我が姉上…!


僕の事を理解してくださっている!

思えば、もっともまともに女性らしかったのは姉上以外いなかった気がするよ!




エリス「戦争で、一人が倒れることもあの子にとっては耐え難いこと…
    強い意志で抑えこんでもその心は傷つき、血を流しています」



そうですね仲間は失いたくないです。オグマ以外。



リョウジ「…」


エリス「この厳しい世界で、あの子が理想を抱き続けることはとても困難です…
    リョウジ。もしあなたが騎士となったら…どうかあの子を守ってあげてください。あの子の理想を…」


リョウジ「はっ!」




それは戦力は申し分ないけど、品性で周りの評判を落としそうです姉上。




 


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