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マルスより、本日も公務にて






新人の選抜から早いもので三ヶ月。

見習い騎士団員達の訓練も佳境に入り、根を上げる者も出てきた模様。

元々狭き門ではある騎士への道。
当然と言えばそうなのだが…やはりアリティアの為、僕の為と思って集まった者達。
全ての者に栄光を与えられたならば、と考えてしまう。

王として、いや、人として甘いとは思う。

しかし、せめて僕に関わった人ぐらいは…幸せを感じさせてあげたい…





ルーク「うーん」

ライアン「またどうしたんですか?ルークさん」



というわけで、今日も第七小隊詰所前のマルスです。

やはり新人の中で一番の注目株のこの小隊。
隊長のリョウジといい、動向が気になるので時間が空けばつい見に来てしまう。

今日もまた、アホのルークが何かアホな事を考えているのか、ため息を吐いてなんかボヤき始めた。



ルーク「なあ みんな、俺の髪型どう思う?」



やはりルークは今日も通常営業である。

逆に言えばこんな調子で訓練をやり通してきているのだから、実は凄い奴なのかも知れない。




ロディ「髪型?」

リョウジ「また何か下らない話の出だしか?」

ルーク「そう言うなよー。実はロマンスのために他の小隊の女の子に声かけてるんだが、イマイチもてなくてさー」



誰もが「それは中身の問題だ」とツッコんだであろう、ロマンスたっぷりのセリフ。

騎士になろうという訓練の最中に、何を言ってるのかこのアホは。



カタリナ「確かに、女の子達の間では、ルークは軽そうって思われてるみたいですね。
     ライアンが可愛い、とかロディがかっこいいって言う人はいるみたいです。
     あと、リョウジも密かに人気があるみたいですよ」



と、思ったら他でもなんか余裕でくっちゃべってる模様。学生か。

年齢的にはそんなもんなんでしょうけど、騎士候補生がそういうの姿勢的にどうなんでしょう。

ってかリョウジも人気なのか。僕への忠誠心を取ったらタダのケダモノじゃないのか。



ルーク「そう!そうなんだよ!納得行かないぜ!俺の何がだめなんだ!?」



結論は出ている。

アホだからだ。



ルーク「そこで俺は考えたんだ。俺に足りないのは髪型だと」



だからアホだからだって。そして今、更にそれを証明した事に気づけ。



リョウジ「…今までの流れからその結論に達したのが大したもんだな…」

ルーク「だろ!?例えばだ、俺もリョウジみたいな髪型にするんだ。
     そしたら…そしたら俺もリョウジみたいに男らしくて素敵、って思われるだろ?」

ロディ「無理だと思うが…というかリョウジは皮肉を言ってるわけだが…」

カタリナ「ルークは普段の言動を変えた方が女の子に人気が出ると思いますよ」

リョウジ「そりゃつまり中身が駄目だって事だろ」



その通り。



カタリナ「そんな事よりそろそろ時間です。今日は訓練前にジェイガン様からお話があるそうです」

リョウジ「やれやれ、やっとか。ここに居るとアホの話ばかりでうんざりだ」

カタリナ「リョウジも下半身の話だったら、ルークよりずっと危険なわけですが…」



具体的に君の貞操が危険ですね。



ロディ「その手の話はまた時間食いそうだから後にしてくれ。ほら、それより急ぐぞ」



後にされても困る話なんだけど…

んじゃ、僕も見に行こうかな…



ジェイガン「諸君らが初めてここへ来た日から三ヶ月が過ぎた。
       訓練に耐えられず脱走した小隊、成績不良により落第した小隊…残ったものは僅か二十名だ」

カタリナ「や、やっぱり凄く厳しいんですね…」

リョウジ「あったりめえだろ…むしろなんでお前が残ってるのかと前から疑問なわけだが…」

カタリナ「しっ!ジェイガン様のお話の途中ですよ!余計な事しゃべらない!」

リョウジ「…(後で殺そう…)」



どこへ行っても仲良さそうで何よりです。

しかし…残り二十名か…リョウジ達の隊で五名いるってのに…

他の隊の女の子と話した、とか言ってたけど、このうちどれだけ女の子が残ってたって言うんだ?

和気藹々と「どの男がかっこいい〜」とか集まって喋るほど余裕無いとちゃうんか…




ジェイガン「これからの実技はさらに厳しいものとなるだろう。そして、新たに講義も行われる」

リョウジ「講義?」

ジェイガン「うむ。そしてその講義を担当する教官を紹介する」



はて、講義とな。

戦闘技術以外の何かか、それも含めて講義するのか。
なんにせよ、そんなのを担当するに相応しい役いたっけか…



フレイ「講義を担当するフレイだ。講義では騎士たる者に必要な知識を学ぶ」





誰!?


あ…いや…え〜と…フレイ。うん、フレイだった。
前の戦争では全く姿を見せなかったけど、我がアリティア騎士団の重鎮フレイだ。

いや〜…なんでだろうな忘れてたの。



ジェイガン「ここからが訓練の本番だ。気を引き締めてかかるのだ」

フレイ「では初めに、戦いの前に行う準備について話そう。実際の戦場では敵と戦う前に十分な準備が必要となる。
    戦場に出る者と必要な装備を整える、リョウジ、隊長である君の役目だ」



…当たり前すぎる…

遠足にですら準備が必要なのに、戦争するのに何も考えない馬鹿がどこに居る…

それより、もっとこう、気づきにくい注意事項とか、普段思いつかないけど意外と便利な物とかそう言うのはやらないのかい…



リョウジ「…了解しました」



ほら、微妙そうな顔してる。



フレイ「もう一つ大事なことがある。仲間との会話だ。仲間と話すことで戦いの手がかりを得ることも出来るだろう」



それも当たり前である。

ホントこんな講義しかやらんつもりか…フレイ…



リョウジ「…あい」



返事もめんどくさくなったらしい。




…とりあえずまぁその後、逃げ出した他の小隊に一人残った隊員をカタリナがスカウトしにいった話とか、
ついでに武器の調達してきた話とかリョウジのお爺ちゃんの話とか色々しつつ、訓練は始まった。

さて、今回の教官は?




カイン「では本日の模擬戦を行う。ここからはお前達の今までの成績適正に応じて、教官を用意する。
    第七小隊の相手は…」

ドーガ「アリティアの重騎士ドーガ。私が相手をしよう」



そろそろ来ると思ってましたー。

自分で重騎士とか言ってるしー。

まぁ重騎士ではあるよね。すぐに二軍落ちした、重いだけの戦士ドーガ。



カタリナ「ドーガさんは守りの堅い重騎士です。リョウジ、強敵ですよ」

リョウジ「まぁ そうかもねー」

カタリナ「…あなどりまくりですね…油断はマズイと思いますよ…?」

リョウジ「油断してるわけじゃねえけどさ。マルス様の視線的にあの辺の人達全く頼りにして無い感じでよ」



よく見てらっしゃる。

その通りです。はい。



リョウジ「ま なんにせよ課題はこなさないとな。よーし全員配置に…ん?」



おや?

一騎ソシアルナイトがこっちに向かってくるぞ?



セシル「はぁはぁ…!間に合った…ねぇ、隊長のリョウジって人はどこ?」

リョウジ「リョウジは俺だ。君は?」

セシル「私はセシル、従騎士よ!急な話だけど、カタリナに誘われて、アンタたちの隊に入ることになったわ!」

リョウジ「駄目だ」

セシル「えぇ!?」

カタリナ「ちょっと!?(後頭部叩き)ありがとうセシル。助力感謝するわ」

リョウジ「ちっしょうがねえな。もう模擬戦が始まる。配置につきな」

セシル「了解、話が早くて助かるわ。あ、あとカタリナが用意してくれた強い武器も担いできたから!受け取って!」

リョウジ「む?鋼の武器か。これはありがたいな」

セシル「でしょ!感謝してよね!重かったんだから!!」



新戦力に懐疑的なリョウジだったが、持ってきた武器に関しては喜んだ模様。パシリですね、わかります。

さて、今回の相手はソルジャー×2、アーチャー×2、魔道士×1とドーガである。

ドーガ以外は手強そう。どうするリョウジ。



リョウジ「んじゃいつも通りでー」

カタリナ「はーい みなさん範囲ギリギリに下がってくださーい」



いつも通りの引き寄せて叩く戦法。

というかこれしか無い。


向こうから歩いてきては、リョウジやロディで壁をして反撃で叩き、リフで回復。

この繰り返しであっという間に残りはドーガだけに。

今回は楽勝ムード。

残りはドーガだけだし。



ドーガ「やるな!だがこの鎧を甘く見るな!さあ来い!」


やる気まんまんのドーガ。しかし、甘くないのは鎧だけである。中身はそうでもない。

が、今のリョウジ達では多少固い相手ではあるか。



リョウジ「削るのもめんどくせーな」

カタリナ「ではここは魔法に頼るってことで。マリクさーん」

マリク「やれやれだぜ」



不良魔道士マリク登場。

鎧意味なし。

マリクのファイヤーでドーガは鎧の中から美味しく焼きあがった。


ドーガ「ぬおおおおおお!?」

マリク「ふん…あっけねえ…リョウジ、何か言ってやれ」

リョウジ「防御力が10超えてるだけで重騎士などと」

カタリナ「速さが5は足りません」



何なんだその連携は。

というかマリクが全然魔道士に見えないんですが。



ドーガ「なんと…私の守りをこえた素晴らしい攻めだったな…」



攻めは素晴らしいと思うが、君が大した相手だったかと言うとそうではない。



ドーガ「リョウジ隊長、もし重騎士の力が必要になったら私を呼ぶといい」

リョウジ「…」



無言のリョウジ。

いや、呼ぶことねーから、という思いと先輩騎士に対する礼儀とがせめぎ合ってる顔だ。



カタリナ「やりましたね、リョウジ」

リョウジ「今回は楽勝だったな」




思ってても口に出して言わないであげてください。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



その夜…

寝る前に少し涼もうと、僕は部屋から出た。

中庭まで来ると、なにやら掛け声が。夜も遅いというのに鍛練を続けているリョウジだ。


うーむ なんという遭遇率。

まるでストーカーみたいじゃないか僕。

ちょっと場所を変えようか… ん?


見ると奥から人影がもう一つ。

カタリナがリョウジの所へやってきた。



リョウジ「気づけばすっかり夜もふけてきたな…鍛練に夢中になり過ぎたぜ…」

カタリナ「…あのリョウジ、少しよろしいですか?」

リョウジ「よくない」

カタリナ「うわーん!」



一蹴されるカタリナ。

可愛い女の子相手なら、下心満々でオーケーしそうな男だが、この子だけはもうめんどくさいらしい。



カタリナ「最近あからさまに扱いが酷いですよう!」

リョウジ「はいはい…わーったよ…で?なんすか」

カタリナ「あの…マルス様から言われた、近衛騎士の話。どう思いますか?」

リョウジ「ん?そりゃ尊崇するマルス様の近衛となれるなら、これ以上無い誉れだ」



僕としても身近にいたほうが逆に危険物の管理が楽そうでいい。



カタリナ「私は…リョウジと一緒なら近衛騎士になりたいです」

リョウジ「正直 俺はなれてもお前は無理だろ」

カタリナ「うわーん!」



リョウジさん容赦ねぇっす。

いじって遊んでいるのか、本心なのか、はたまたその両方か。

しかしまぁ、確かに今ンとここの子を近衛に置くメリットが…



カタリナ「私達二人で力を合わせてマルス様をお助けする…そんな未来を想像すると幸せな気持ちになるんです…」

リョウジ「まぁ…わからんでもない」

カタリナ「…あのリョウジはどうですか…?リョウジも私と…」


なんだ恋してるのか?カタリナ。よりによって自分を苛め抜いた男に。

しかし、そういう事言うとまた容赦無い一言が…



リョウジ「ま…ここまで来たら一蓮托生って思わなくもないな。そうなるといいな」



おや?意外な反応。

あれか、さんざん冷たくしておいて、ふとした拍子に優しくするってテクニックか。



カタリナ「ほ、ホントですか!?嬉しいです…な、なんか照れます…私、もう寝ますね…おやすみ、リョウジ。
     また明日頑張りましょう」

リョウジ「おう だけど寝るなら…」

カタリナ「え?」

リョウジ「俺の部屋でいいだろ(ずるずるとカタリナ引っ張り)」

カタリナ「心の準備がー!!?」



もう そういうプレイに見えてきたな。




 


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