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◆ 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 第三話 投稿者:リョウ@管理人  引用する 
武 フィアッセ・クリステラが引っ越したマンションでは住人が日々安心して生活できるように、セキュリティ対策が取られていた。

まず建物の外周には防犯カメラが設置されており、建物内に入るためにはオートロックによる解錠が必要となる。

二重のセキュリティシステムが備わっているマンションだと、アリサと妹さんがマンションを一瞥して説明する。何故か案内したなのはが感心して頷いていた。


セキュリティ概念を知っている二人に驚くべきか、セキュリティの何たるかを全然知らないなのはに呆れるべきか、ちょっとだけ悩んだ――ちなみに俺も知らなかったので、逆に呆れられた。


『リョウスケ、来てくれたんだね!』

「……画面越しの再会って、あんまり感動がないな」

『ふふふ、今すぐ開けるから待っててね』


 オートロックは、扉が自動で施錠されるセキュリティシステム。マンションのエントランスから住宅内のインターホンを使って解錠する必要がある。

オートロックが備わったマンションではこうやってエントランス画面をカメラ越しに確認して、不要なセールスを断る等の部外者の侵入を防ぐことができる。

エントランスにいる俺からはフィアッセの声だけだが、フィアッセから見れば一応再会という事になる。脅迫状なんぞ来ていて落ち込んでいるかと思ったのだが、元気そうだった。


マンションの中に入れてくれた後、念の為に確認してみる。


「妹さん、マンション周辺及び内部に不審な"声"は聞こえるか」

「身元まで特定することは出来ませんが、怪しい行動をしている存在はありません」


 月村すずかはマンション全域に及ぶ生物の存在を探知できるが、不審な存在は居ないとの事だった。ただ当然だが、知らない人ばかりなので内面まで察することは出来ない。

マンションはエントランスと玄関の2ヶ所のカメラで来訪者を映し、住戸内のモニター付きインターホンで確認する程セキュリティ性が高いようだ。

モニターを通して来訪者の顔が分かるため、不審者や勧誘などに対してはその場で断ることができる。なのはに聞いたところ、今まで特に不審な来訪者は居なかったそうだ。


マンション内は少なくとも素人が不法侵入することは不可能であるらしい。その点はアリサ達も太鼓判を押してくれた。


「おかえりなさい、リョウスケ。会いたかった!」

「うおっ……大袈裟な奴だな」

「あれ、突き飛ばされるかと思ったのに意外な反応。大人になったね、リョウスケ」

「苦労の多い人生だから」


 玄関先で出迎えてくれた女性はフィアッセ・クリステラ、光の歌姫の異名を持つイギリス人の女歌手である。

長い金髪が特徴的な英国美女で、翠屋のチーフウェイトレス。高町家の長女的存在で、家長の桃子とも非常に仲が良い。

高町恭也や美有希の幼馴染であり、高町なのはの事は妹のように接している。基本的にのんびり屋のお姉さんだが、去年片思いの末に失恋して落ち込んでいた。


月村忍に負けない抜群のプロポーションの持ち主に抱きつかれても、邪険にしない程度には俺も慣れてきたようだ。


「来てくれてありがとう。ごめんね、忙しかったんでしょう」

「大事業を起こして忙しなかったが、ようやく落ち着いてきたところだ。骨休みするにはいいタイミングだったよ」

「帰郷と言わないあたり、まだまだ尖っているかな」

「俺がいずれ旅立つと志しているぞ、まだ」


 フィアッセにウインク混じりにつつかれるが、俺は頑なに主張して見せる。まだ人前で海鳴を故郷と呼ぶのは嫌というか、抵抗がある。

武者修行という名の放浪だったので別に向かう先はなかったのだが、ここで落ち着くにはまだ俺も若すぎる。旅に憧れる気持ち自体は残っていた。

ただどうしたって一人旅なんぞ出来ないので、道中にゾロゾロ連れても単なる旅行にしかならない気がする。長旅でも平気そうな連中ばかりで、へこたれたりしないからな。


フィアッセとの再会に盛り上がるのはこの辺にして、彼女の部屋にお邪魔することにした。


「むっ、内装を見ると一人部屋ではないと見た。男を連れ込んでいるな」

「えー、リョウスケじゃあるまいし連れ込まないよ」

「おい、俺だったら連れ込むと言いたいのか!?」


「でも家族が増えているんだよね?」


「俺の家族構成をバラしたのはお前だな」

「いたたたたた、ごめんなさい、ごめんなさいー!」


 俺のゲスな勘ぐりに対して、ジト目で反論するフィアッセ。事実を知らなければありえない反撃に犯人の頬をつねると、良い子ちゃんのなのははあっさりバラした。

女を増やした訳ではないという強弁は無意味すぎるので、口を閉ざす。俺の仲間の比率は男と女で1:9ぐらいなので、女に囲まれていると疑われても仕方がない。

どいつもこいつも一癖も二癖もある連中なので、カテゴリが女であると言うだけの怪物連中なのだが、それらを全て説明するのは頭が痛くなるのでやめる。


俺となのはのやり取りに機嫌を直したフィアッセが、真相を語った。


「仲が良いルームメイトがいるよ。リョウスケにはいずれ紹介しないね」

「紹介しないの!?」

「"アイリーン"と気が合いそうだから、リョウスケには紹介したくない」


「アイリーンって……あの「若き天才」"アイリーン・ノア"!?」


「? 知っているのか、アリサ」

「なんで元幽霊のあたしよりあんたが知らないのよ」


 不機嫌な顔でそっぽを向くフィアッセに代わって、アリサがこの場にいないルームメイトについて教えてくれた。

アイリーン・ノアはフィアッセが関係するクリステラソングスクールの卒業生で、「若き天才」の通り名を持つアイルランド系アメリカ人の歌手。

世間的にはエレガントイメージで売り出されているが、本人は活動的な性格から自分のイメージを好んでおらず、世界的有名人であるにもかかわらず、イメージのギャップがあるらしい。


世界的有名人らしいが、一年前まで新聞やテレビなんぞ見ていなかった自分は認知していなかった。この一年間も海外や異世界へ飛び回っていたからな。


「クリステラソングスクールってお前の母ちゃんの学校だよな。アイリーンとはそこからの繋がりか」

「子供の頃入退院を繰り返していた私を病院から連れ出してロンドン市内で遊びまわったりしてくれた、わたしの家族のような人なの」

「へえ、お姉さん的な存在か」

「うーん、保護者代理のような関係かな。公私ともに私を支えてくれているよ」


 今回引越し先を探していたフィアッセに付き添って、現在は活動拠点を日本に移して同居してくれているらしい。

年齢はフィアッセより1歳年上であり、性格は荒っぽい姉御肌で活動的。幼少時に自動車事故で両親を失った際、祖母の紹介で同世代の少女が居るクリステラ家で養育を受けたとの事だった。

そういう意味ではフィアッセとは事実上姉妹のような関係とも言えるが、クリステラ家の家庭方針に則り彼女も日本語教育を施されて、ソングスクールにも入学したようだ。


なるほど、そこまで深い繋がりであれば同居していても何の不自然さもない。


「日本に来てまで同居してくれているということは、お前に来た脅迫状の事も知っているのか」

「うん、流石に隠し立てすることはどうしても出来ないから……なのはから話は聞いてる?」

「文面も聞かせてもらったが、とりあえず脅迫状を見せてもらえるか」


 フィアッセは神妙な顔で頷いて部屋へ戻り、一つの封筒を持ってくる。一応封筒を一通り確認するが、特に怪しい部分はない。というか差出人も、送り先も何も書いていない。

中身を確認したところ、日本語で以下の文面が無機質に記載されている。


『チャリティーコンサートを中止しろ。さもなくば、フィアッセ・クリステラの命を奪う』


イギリス人のフィアッセに対して、何故か思いっきり日本語で書かれていた。慥かに本人は日本の生活にも長いが、見た目は容姿端麗な英国美女だ。どこからどう見ても日本人には見えない。

これで通じると思っているのであれば、犯人はフィアッセの私生活も把握していると考えたほうがいいだろう。だからフィアッセも高町の家から引っ越してきた。

生憎と名探偵ではないので、脅迫状から手がかりを探すのは難しい。とにかく、事情を尋ねる。


「この脅迫状はどうやってお前のところへ届いたんだ」

「それがね、桃子の家のポストに入っていたの」

「この封筒、住所も何も書かれていないぞ」

「うん……でもある日ポストを確認したら入っていたみたいなの」


 ――という事は誰かが直接高町の家に来てポストに投函したようだ。

住所を知っているのに郵送しなかったのは、逆に辿られない為の配慮だったのかもしれないが、直接家に持ってくるほうがリスクが高い気がする。

ストーカーにでも追われているのかもしれないが、脅迫状の文面からすると、フィアッセ恋しさとは思えない。命を奪うとまで書いてあるからな。


不幸中の幸いというのは変だが、高町家は夜の一族が俺の関係者ということで警護対象となっている。非常に嫌だが、後で夜の一族に確認を取っておこう。


「それでまずリョウスケに相談したかったんだけど、まだ帰ってきてなかったからまず安全確認をするべく――」

「まてまて、まずは警察じゃないのか」

「何を言っているの、リョウスケ。まず真っ先に相談するのは、リョウスケだよ。リョウスケが一番頼りになるんだから、そこからだよ」


「えっ、まず俺に相談してから他にも相談しようと思ってたのか?」

「うん、だからまず引っ越して桃子達を巻き込まないようにしてから、リョウスケが帰ってくるのを待ってたの」

「他にやること腐るほどあるだろ!?」


 フィアッセ・クリステラの笑顔に満ちた信頼感に、テーブルに突っ伏した。コイツ、馬鹿すぎる。

こいつの話が本当なら事態が刻一刻と迫っているのに、こいつは俺が帰ってくるまで何もしとらんということになる。何で無事だったんだ、こいつ。

いやまあ護衛を引き受けた以上、留守にしていた俺が悪いと言えばそれまでなのだが、たとえそうだとしても危機感がないだろこの野郎。


フィアッセはニコニコしている。


「リョウスケも帰ってきてくれたから、これで事件は解決だね」

「おい、どうなっているんだ。俺が留守中にアホンダラになっているぞ、こいつ」

「こういうのって恋愛脳というのでしょうか……」


 高町なのはの言い分に、俺は心から頭を抱えてしまった。

事態が起きる前に帰ってこれたので手遅れではないのだが、何だか違う意味で手遅れになっている気がする。

なんか今までミッドチルダのテロ事件や、惑星エルトリアの政治闘争とかに関わってきた反動か、スケールが小さすぎてその温度感に震えてしまう。


しかし今までがそもそも異常だったんだというだけで――日常で起きる事件ってこういうものだよな。






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2023/04/02(Sun) 11:15:53 [ No.1005 ]

◆ 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 第二話 投稿者:リョウ@管理人  引用する 
武 時間つぶし目的の思い出場所巡りも一段落したので、俺達は待ち合わせ場所へ向かった。

本日の同行者はアリサとすずかの二人のみ。最近集団行動が多かっただけに、三人だけの行動は久しぶりだった。集団生活も最近でこそ馴染んできたが、多人数だと落ち着かない面はまだある。

平日子供二人を連れて歩いていると若干目立つが、注目されるほどではない。むしろ最近日本での生活が縁遠かっただけに、平和な日常の光景に懐かしさすら感じられる。


同じ感慨を抱いているであろうアリサがふと気になったように、尋ねてくる。


「あんた、将来的にどうするつもりなの?」

「将来……?」

「日本で生活拠点を構えるのか、海外で立身出世をするのか、異世界でファンタジックな生活を送るのか、宇宙に出て惑星開拓に勤しむのか。
あちこち手を広げるのは別にいいけど、そのうち回らなくなるわよ」

「うーむ、実際事件が起きる度にあちこち飛び回っているからな……」


 海鳴へ流れ着いて一年間が経過、自分の人生を振り返ると怒涛の日々の連続だった。しかも別に今全て終わったのではなく、今もまだ色々と続いている状況。

全てが落ち着いてから決めると言っても、まだまだ終わりそうにない現実。老人にでもなった時に自分の終生が決まるのかもしれないが、生憎とまだ先である。

今のところ海鳴を離れるつもりはないのだが、冷静になって考えてみるとこの海鳴も元々は旅の途中で立ち寄っただけである。故郷みたいになっているが、実のところ違う。


どこでも生きていけるというのは旅人の特権かもしれないが、やるべきことが多いので自由とは程遠い。


「アリサはともかくとして、妹さんもずっと連れ回しているからな。さくらにもそろそろ何か言われそうだな」

「私は剣士さんの護衛が人生の使命ですので」


 妹さんはありがたい事にそう言ってくれるが、クローン体である彼女は平穏とは無縁の出生である。

頭が良く判断力にも優れているが、学歴は何もない。もし日本で生きて行く場合、彼女は経歴書に記載できる履歴が存在しない。というか、表沙汰に出来ない。

夜の一族の王女という特殊な立場に学歴や職歴なんて求められないかもしれないが、日本で生きるという選択を取った場合は考えなければならない。


まあその点はさくらやカレン達、夜の一族の連中に頼めばどうとでもなりそうだが。


「海鳴で生きるという選択肢も悪くはないんだけどな。都市開発がずいぶんと進んでいるようだし」

「あたし達が帰ってくる度に、町並みが変わっているからな。国際都市化が急激に進められているようね」


 一年前は平和でありつつ退屈な街だったのに、今では国際都市が急激に進んで見事な発展を遂げている。

自然豊かな街の長所を一切崩さずに、平和的かつ国際的に都市計画が運営されている。湯水の如く資金と人材が投入されて、開発が進んでいるらしい。

夜の一族の世界会議以後なので、カレン達が主導しているのはまず間違いない。あいつらが経営する多国籍企業がどんどん介入し、店舗を並べて商売繁盛している。


強引な都市政策は地元との乖離を生むものだが、地域密着型で絶大な支持と支援を受けているようだ。市長も突然代替わりしたようだし、役所にも手を入れているのは間違いない。


「フィアッセさんが今住んでいるのも、国際都市化の影響で建てられた新築マンションなのよね」

「……俺が居ない間に、引っ越ししていやがるとは」


 俺達が国際都市化しつつあった建設予定地を歩いていた理由――フィアッセ・クリステラは高町家を出ていた。

以前居候していた俺が高町家を衝動的に飛び出したのと同じでは決してなく、事情があって引っ越しを行ったらしい。桃子達とも話し合って決めており、別に疎遠にもなっていない。

とはいえあの家から家族同然の人間が出ていくのは衝撃的であり、同時に以前の俺がなのは達に同じ動揺と混乱を与えていたのだと今になって分かり、肩を落とした。明日は我が身とはよくいったものだ。


マンション前に到着すると、既に一人の少女が待っていた。


「おにーちゃん、おかえりなさい!」

「冷静になって考えてみると、別にお前と再会しなくても直接本人に聞けばよかったのではないだろうか」

「感動の再会なのにー!?」


 感激して抱擁の手を広げる高町なのは、小学生。平日なのだが、今日は午前様らしい。こいつとの待ち合わせのせいで、そもそも思い出巡りをして時間を潰さなければならなかった。

平凡な少女のくせに会う度に色んなトラブルを抱えているガキンチョだが、暖かい春を迎えていつもの笑顔を取り戻している。まん丸ほっぺの女の子に、魔法少女の面影は微塵もない。

会うのは数カ月ぶりなので別段大きな変化はないのだが、こいつと知り合って一年ともなると背丈は伸びた気がする。少しばかりしっかりとしてきて、自分なりの行動を自発的に行えてはいる。


とはいえ甘え盛りなので、大人からなのちゃんと可愛がられる愛嬌さは健在だった。


「遠い星から呼び出しちゃってごめんなさいです。フェイトちゃん達も一緒だと聞いていましたが、みんな元気ですか」

「うむ、惑星開拓は思いの外順調で、何とかこうして帰ってこれた」

「わ、惑星開拓ですか……なのはのような小娘には想像もできないです……」


 俺がよくそう呼んでいるせいなのか、自分を小娘呼ばわりして苦笑いしている。まあ、気持ちはよく分かるけれど。

俺も宇宙へ出て惑星開拓なんぞしている自分が今でも実感できない。エルトリアの夜空を見上げて、月が見えないことに気づいて実感が湧いたくらいだった。

自分の友達まで夜空の彼方へ出向いていることに、高町なのはは空を見上げて息を吐いている。友達の心配をするあたり、こいつも変わっていないようだった。


まだまだ子供らしく、アリサやすずかとも再会して喜び合っていた。


「アリサちゃん、すずかちゃんも久しぶりだね!」

「なのは、これお土産に持ってきた星の石」

「アリサちゃんから子供のお土産を聞いて、これ積んできたの。星の砂」


「わ、わあ……ありがとう、嬉しいな……」


 ――どう見ても普通の石と砂です、本当にありがとうございました。

分析とかすれば地球に存在しない成分とか出てきそうだけど、子供にそんなもの求めるほうが酷だろう。真面目に渡されたなのはも困った顔でお礼を言う。

一応アリサ達の擁護をすると、エルトリアという未開拓の星の土産となると何を用意すればいいのか分からない。いずれ特産品を作る予定ではあるが、子供向けの開発はまだ途中である。


連邦政府の世界都市なら色々販売されていたが、子供のお土産を買う余裕がなかった。今度はきちんとしたものを用意しておこう。


「帰ってきたばかりで申し訳ないですが、フィアッセお姉ちゃんのところへ案内しますね。
今日はおにーちゃんが帰ってくることを連絡していますので」

「引っ越したと聞いた時は驚いたぞ」

「はい、詳しくはお姉ちゃんから話しますが、色々事情がありまして……脅迫状のことも関係しています」

「……その様子から察するに、フィアッセさん本人だけじゃなくご家族も脅かされているのかしら」

「セキュリティの高いマンションへ移り、なのはちゃんのご家族にも迷惑がかけないようにしたのかな」

「わっ、すごい。アリサちゃん、すずかちゃん、名探偵だね!」


 なのはさんよ……あなたの目の前にいる女子達はうちのブレインと護衛なので、一般的女の子と一緒にしないほうがいいぞ。

しかしアリサや妹さんの推察を聞いて、俺も引っ越しには納得した。高町家は一般家庭だからな、セキュリティの高いマンションへ引っ越した方が誰も巻き込まなくて住むという点では正しい。


ただあいつ自身きちんと分かっていなかったようだが――俺の留守中を守る警護チームがいたんだよな。


俺がドイツで世界会議やっていた頃にトラブルが発生した為、夜の一族の連中が気を回して俺の関係者を守ってくれているのである。

加えて高町の家には恭也や美有希もいるので、警護面では問題はない。二人は実力者であり、剣士としては若いながら一流の強者である。

フィアッセの事だから誰も巻き込みたくなかったんだろうが、よく高町家を説得して出てこれたものだ。


「肝心の脅迫状についてはお前からなにか聞いているのか」

「はい、おにーちゃんへの連絡に必要だからと、おかーさん達にはこっそり内緒で教えてくれました」

「一般人のフィアッセさんはマンションへ引っ越してまで脅迫を受けているなんて……どういう内容なのよ」



「それが、その……

『チャリティーコンサートを中止しろ。さもなくば、フィアッセ・クリステラの命を奪う』

――と、明記されていたそうです」


 それは一応脅迫にはなるが……立派な殺害予告なのでは?

身近で起きている事件というのは、ミッドチルダの次元犯罪より規模は比較にもならないが――とても生々しい。

ユーリ達がいればテロ組織ですら壊滅できるが、生憎とあいつらは現在エルトリアで惑星開拓に励んでいる。


心配だから自分達も行くと涙目で訴えていたユーリ達の申し出を断ってしまった自分の判断に、頭を抱えた。





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2023/04/02(Sun) 11:15:11 [ No.1004 ]

◆ 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 第一話 投稿者:リョウ@管理人  引用する 
武  ――今でも鮮明に思い出される、出会いの季節。

ようやく寒い冬が終わりつつあった初春、酷い寒さから逃げるかのように海と山に囲まれた街へと流れ着いた。

野宿していた山で木の枝を拾い、剣と見立てて自分を慰めていた時期。孤独と疲労に震えて町へと下り、お腹が空いてコンビニの残飯を漁ろうとしていた惨めな自分。


今の自分はどれほど変わったのか、見当もつかない。それほどまでに様々な事件があり、多くの出会いがあった。


「手持ちのお金が723円?」

「うむ、この町に辿り着いた時の所持金だ」

「無一文じゃなくて、地味に小銭持ってるのが生々しいわね」

「生活苦に死ぬほどあえいでいたんだよ!?」


 海鳴へ着いた時はまず山で一晩過ごした後、俺は本格的に町への第一歩を踏み出したのを覚えている。

あの時確か一昨日の昼に食べたのが最後で、丸一日以上水しか飲んでいなかった。しかもその時食べたのがオニギリ一個というのだから悲しすぎる。

健康的な十七歳の肉体を持つ、成長期だった自分。考えてみれば今年18歳になり、学戦さんなら高校卒業から進路を決める時期であった。


ゴミ捨て場で拾った財布――今にして思うとそんな財布呪われていそうだ――を手に、腹を空かせて徘徊していた。


「嘘だろ……ここにコンビニがあったはずだぞ!?」

「見事な駐車場になっているわね……」

「あの時コンビニのサービス弁当求めて残飯漁りしていた思い出が、消えてしまった」

「早く忘れなさい、そんな思い出」


 あの時、道の端沿いに建てられたコンビニエンスストアが完全に無くなってしまっていた。たった一年でコンビニが閉店してしまったというのか。

何か栄養を補給しないと死にそうだった俺は店の横手へ回り、廃却処分予定だったコンビニのゴミを漁っていたのだ。

アリサに聞いたところ今はゴミ管理も徹底されており、残飯処理等は出来なくなっているらしい。俺のような浮浪者はますます居場所を無くしているということだ。


過去の自分なら悲嘆に暮れていたのだろうが、店を運営する側として考えられるようになると迷惑だったというのは分かる。


『あのー、そういう事はやめたほうがええですよ』

『何だよ。ガキは帰って学校にでも行ってろ』

『うちはあんたのやってることを止めにきたんや。
ここのコンビニでの余り物を拾うのは禁止されている筈やで』

『お前が言わなかったら、万事オッケー』

『うち、ここの店長さんと知り合いやからそれはでけへんな』


 ――最初に当時の自分を止めてくれたのが、レンだった。

高町家の居候である鳳蓮飛。仲良くなった今だからこそ聞けた話だが、本名は"フォウ・レンフェイ"というらしい。

中国人的な名前だが、血筋としては日本人と中国人とのハーフとの事。心臓病で苦しんでいた彼女は難しい手術を受けて、今は奇跡的な回復をしている。


ようやく自分に興味を示してくれたのかと、本人は本名を名乗ってくれて笑っていた。


「それで追求してきたレンちゃんから逃げた先が、この公園だったのね」

「当時浮浪者だった俺なんぞほっとけばいいのにしつこく追求してきやがったから、コンビニ弁当抱えて逃げたんだ。
レジの店長も騒ぎに気付いて何事かとやってきたから、ついでにレンに責任押し付けてやった」

「……なんでこんな奴の友達やってんのかしら、あの子」

「うるさいな。大体変わった女というのなら、この公園で出会ったあの女だろう。あいつのせいで、俺の人生が狂い出したんだぞ」

「――ここでお姉ちゃんと出会ったんですね、剣士さん」


 海脇に沿って柵が敷かれており、夜には輝くであろう街灯が並んでいる。

柵の前には歩道が綺麗に舗装されており、人口の森林に並んでいるベンチと憩いの場。

朝日を反射している海からの風が、肌に優しく触れて気持ちがいい自然の公園。さすがに公園は無くなっていなかったので、ちょっと安心した。


まさかと思って周りを見渡してみたが、護衛として同行している月村すずか――その姉の姿はなくてホッとする。


『大丈夫か? 怪我しているみたいだが』

『あ、はい。軽く擦っただけですから……いたた』

『何か車のブレーキ音がしたけど、事故ったのか?』

『私はもう大丈夫ですから、どうぞお気にならず。心配してくださってありがとうございました」』


 月村忍、夜の一族の女。あいつと出会ったせいで、俺の人生が劇的に変わってしまった。

当時の頃を話す機会に恵まれたのだが、あいつはあの頃から月村安二郎とかいう財産狙いの叔父に狙われて事故ったらしい。

最初は財産狙い、次にノエルとファリンの自動人形。そして最後に月村すずかという正統後継者を狙ってロシアンマフィアと手を組み、自滅した。


綺堂さくらに聞いたところロシアンマフィアの制裁を受けて、命こそ拾ったが命を狙われる身であるらしい。


何処で何をしているのか、正直分からない。さくら達は楽観しているようだが、俺としては若干の不安はある。

ああいう輩こそ一番しぶとい。マフィアに命を狙われているのなら尚の事、切羽詰まっている。それでいてまだ命があるのであれば、悪運はある。


こちらを狙う余裕はないはずだが――どうだろうか……


「ディードとオットーが行きたがっていた前先道場がここね」

「くそっ、何処で知ったのか分からんが当時の道場破りを武勇伝として憧れているらしい」

「動機は分かるけどあえて聞くわ。なんで道場破りなんて時代遅れなことをしたのよ」

「俺の身なりで試合を申し込んで、受けてくれると思うか」


「……あたしが悪かったわ」

「謝られるのも結構きついぞ!?」


 シグナムが師範代役として通っている剣道道場は駅からやや距離があり、場所には少々難ありである。自転車通いの者には申し分ないが、歩いていく分には距離的な疲労を伴う。

考えによっては体力トレーニングとも言える立地で、シグナムより聞いた話では道場生達の中には自ら走りこみで通う者もいるらしい。

住居的条件としては不便さがあるが、通り魔事件の一件があった後も剣道道場に通う者は二桁を優に超えている。


道場を興した会長による実戦的信念と新開拓による指導――師範は通り魔として逮捕されたが、シグナムと道場生達によってもり立てていた。


「ディアーチェ達は聖地で所用を済ませた後、この町へ来る。俺はシグナムの事を道場に連絡してくるから、ここで待っていてくれ。
エルトリア復興と開拓で、まだしばらく帰れないだろうからな。シグナムを推薦した手前、責任はある」

「ディード達との待ち合わせは、今晩だからね。街案内が終わったらいい時間になるでしょうし、フィアッセさんに会いましょう」


 厳しい修練によって心胆を練り技を磨き、各道場相互の親睦を深めるという道場の理念。

青少年の健全なる育成を志そうと言うこの高き理念が、剣を志す者達の共感を呼んでいる。

あの頃の俺は馬鹿にしていたが、今となってはむしろ共感すら出来る。この道場の門を叩いて挑戦に挑み――俺の物語は始まった。


海鳴へ流れ着いてから、そろそろ一年が過ぎようとしている。


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2023/04/02(Sun) 11:13:54 [ No.1003 ]

◆ 神よ、あなたの大地は燃えている!12話について 投稿者:  引用する 
高町なのは いつも楽しませてもらっています
12話なんですが、なぜかNot Foundになってます
毎週アップを10年近く行ってきて本当にお疲れ様です
これからもお体にはお気をつけて頑張ってください
2021/04/21(Wed) 21:24:10 [ No.1001 ]
◇ Re: 神よ、あなたの大地は燃えている!12話について 投稿者:リョウ  引用する 
武 お伝えくださってありがとうございます。
再更新しておきましたφ(..)メモメモ

こうして今まで書き続けてこれたのも、読んで下さる方々のおかげです。
今後ともよろしくおねがいします。
2021/07/04(Sun) 01:24:44 [ No.1002 ]

◆ バックレてないよ、本当だよ? 投稿者:ユウMK−2(決戦型)  引用する 
フェイト・T・ハラオウン ※この内容はTOP告知不要にございます

仕事が忙しいぞオルステッドォォォォォォ!!(挨拶

こんばんわ、おはようございます、こんぬずわ、いつも財布は無限獄のユウです。
リアルが死にそうになってるのでSSが打てず、バックレ疑惑も出てるかもしれないのでとりあえず
ドラクリキャラのメカ設定なんか作ったので、張っときます。

妄想ネタの材料にでもしてください。
ついで、第三話はもう少し待ってください orz


妄想ネタでクレイル、出しても良いのよ?(チラッチラッ





氏  名:矢頼 美羽
出  展:DRA−CURIOT!
C  V:夏野 こおり
B G M:無限のフロンティアより『白銀の堕天使Ver.EF』
性  格:超強気
成  長:射撃系万能型
エ ー ス:援護攻撃の与ダメージ+10%、射撃攻撃のダメージ+10%
精  神:必中、ひらめき、信頼、熱血、狙撃、愛
ツ イ ン:同調
特殊能力:援護攻撃
――――:収束攻撃
――――:ガンファイト
――――:アタッカー
――――:E−セーブ
――――:B−セーブ
P  R:
 クレイル=ウィンチェスター駆るアルトアイゼンと対になる高機動型の砲戦機、ヴァイスリッタ―駆るコールナンバー・アサルト4の少女、17歳。
リョーヤ・アマミヤ、御風エリスとは同期であったが、ほとんど会話を交わすこともなく各々の部署に配属された(お互いに存在を把握している程度)
士官学校時代から射撃能力に高い適性を見せ、将来を羨望されるも、意地っ張りが災いした対応を繰り返した結果、周囲から人間が離れた経緯がある。
士官学校を経て、アクアエデンに配属され軍人としての日常を過ごしていた結果、出張に来ていたリョーヤ=アマミヤの目にとまり、高機動型砲撃機
ヴァイスリッターのパイロットの適性があると見いだされ、クレイル=ウィンチェスターの承認を経た上でATXチームに配属される事となり本人は
困惑しつつも生来の意地っ張りな性格から状況に対する熱意を見せており、それを時折上官であるクレイル=ウィンチェスターにからかわれている。


機体名称:ヴァイスリッター・アーベント
操 縦 者:矢頼 美羽
B G M:無限のフロンティアより『白銀の堕天使Ver.EF』
H  P:4200
E  N:150
運 動 性:125
装  甲:950
移 動 力:7
タ イ プ:空・陸
地形適応:空・S 陸・B 海・C 宇・S
Wゲージ:50
サ イ ズ:M
機体特性:射撃
ボーナス:固定武器の残弾+2
スロット:2
特殊能力:ビームコート(※1000までのB属性ダメージ軽減)

武装説明
スプリットミサイル    (中に多数の子弾を収めた特殊ミサイル。より多くの子弾を内蔵したATX型)
三連ビームキャノン    (左腕に搭載された速射効率の高いビームキャノン)
パルチザン・ランチャーE (パルチザンランチャーの収束エネルギー砲で敵を薙ぎ払う)
パルチザン・ランチャーB (パルチザンランチャーの実弾砲による射撃を行う)
パルチザン・ランチャーX (パルチザンランチャー最大出力形態による砲撃を行う)

機体説明
 アルトアイゼンと対になる形で開発・設計された高機動砲戦機であり、飛行能力と高い機動性・運動性を備えた『ヴァイスリッター』の強化改修機。
新型テスラ・ドライブを実装する事で更なる機動性・運動性の向上を実現させ、大出力ビーム砲形態を備えたパルチザンランチャーによる火力の向上
を実現させているが、根本的な問題だった『脆弱な装甲による致命的な耐久力の低さ』は改善されておらず、被弾は即時撃墜の危機に繋がりかねない。
こちらも余剰ペイロードを切り詰めて性能向上させているが、アルトアイゼン・ナハトほどでは無いので『一応ながら』共有武器の携行は可能である。
高速機動を行いながら攻撃を行うと言う、パイロットの技量が求められる機体なのは相変わらずであり、ATX系列機体の宿命とも言うべき扱い辛さ
を継承しており、当機もやはりパイロットを選ぶピーキーな仕様の機動兵器へと仕上がっている。





氏  名:エリナ=オレゴヴナ=アヴェーン
出  展:DRA−CURIOT!
C  V:鈴木 恵莉央
B G M;第二次SRWZ・クロウ=ブルースト専用BGM『CLOSE GAME LIFE』
性  格:楽天家
成  長:射撃系格闘重視型
エ ー ス:獲得資金+25%、気力130以上で与ダメージ1.1倍
精  神:集中、加速、直感、友情、熱血、脱力
ツ イ ン:大激励
特殊能力:強運
――――:ヒット&アウェイ
――――:ガンファイト
――――:アタッカー
――――:E−セーブ
――――:B−セーブ
P  R:
 ATXチーム所属となった戦闘用機動兵器ブラスタのパイロットの、ロシア出身の少女、コールナンバーはアサルト5、本人は6が所望だった。
強化人間系列の機関に所属していた経緯を持つが、本人はそれをあまり気にしてはいない。(所属機関はクロウ=ブルーストにより壊滅されいる)
その経緯から、士官学校へ入るまでの間、彼から機動兵器の操縦技術、戦闘機動『ACP・ファイズ』に加えて銃器の扱い方等を伝授されている。
士官学校に入学するも、その生い立ちより周囲に疎まれ右往左往していた際にリョーヤ=アマミヤ(及び御風エリス)に世話を焼かれていた経緯を持つ
前述の訓練の甲斐あって射撃に対する能力は高いものの、説明が抽象的・擬音だらけで何を言っているか分からないとは隊長であるクレイルの発言。
銃の展示会に行く趣味もあるが、それに同伴してくれるのがクレイル・ウィンチェスター及びリョーヤ・アマミヤ程度しかいないことが悩み。



機体名称:ブラスタ
操 縦 者:エリナ=オレゴヴナ=アヴェーン
B G M:第二次SRWZ・クロウ=ブルースト専用BGM『CLOSE GAME LIFE』
H  P:4800
E  N:160
運 動 性:115
装  甲:1100
移 動 力:8
タ イ プ:空・陸
地形適応:空・A 陸・A 海・A 宇・A
Wゲージ:――
サ イ ズ:M
機体特性:射撃
ボーナス:移動力+1、EN回復・小追加
スロット:2
特殊能力:シールド防御可能

武装説明:
バンカー・ブレイク    (シールドの先端を射出し、敵を攻撃する。なお、射出せずにそのまま攻撃する事も可能)
EAGLEショット    (電磁加速式ガンランチャーによる射撃。非常に高い初速と威力の高い弾を発射可能)
ベイオネット・スパイカー (EAGLEより電磁ネットを射出し、スタンロッドを撃ち込んで高速。そしてビームランスを生成して突撃する)
クラッチ・スナイパー   (ロングバレルジャケットを装着したEAGLEによる狙撃を行う)
ACP・ファイズ     (とある男がエリナに教えた戦闘機動パターン。曰く『呆れるほど有効な戦術だぜ……』)
SPIGOT−VX    (四基のSPIGOTと共に連携攻撃を行い、最後にSPIGOTによって強化されたスパイカーで貫く)

機体説明:
 技術特区領アクアエデンにある機動兵器企業『シエン・インダストリアル』が開発した高機動型の機体であり、優れた機動性と単独飛行能力を持つ。
元々はアクシオン財団第13防衛研究所『スコート・ラボ』にて開発・建造された機動兵器だが、同財団が解体されてスコート・ラボが独立した際に
シエン・インダストリアルがスコート・ラボを買収した事により、同社にて製造・販売される経緯となり、アクアエデンに少数が卸された経緯を持つ。
索敵能力・情報分析能力に加えてステルス性能まで併せ持つ機体であり、あらゆる状況下において単独で敵と交戦し、その情報を持ち帰る情報戦闘機
としての側面を有する等、非常に高性能ではあるがその充実した装備故に一機あたりの製造コストが凄まじく、そして整備性も悪いと言う欠点もある。
新型の電磁加速式ガンランチャー『EAGLE』を装備しており、銃身や弾装を組み替える事で近距離から遠距離まで幅広く対応し、距離的な死角の
無い、安定した戦闘行動を行える機動兵器に仕上がっている(※そのお陰で更にコストが高くなったのは最早、冗談の領域に達している皮肉だろう)
過剰な出力を誇る機体ジェネレーターが生み出すエネルギーを生かすべく、SPIGOTと言うリング状の随伴機がセットとなっており、多彩な攻撃
が可能になっているが……言うまでも無く、この装備によるコストも当然の如く高価であり、開発元が如何に性能だけしか考えていないか窺い知れる。





氏  名:ニコラ=ケフェウス
出  展:DRA−CURIOT!
C  V:浅野 ゆず
B G M:SRW・SC2 ケイジ=タチバナ専用BGM『まだ見ぬ明日の歌』 
性  格:超強気
成  長:格闘系万能型
エ ー ス:格闘攻撃のダメージ+10%、最終被ダメージ−5%
精  神:努力、ひらめき、直感、友情、熱血、激励
ツ イ ン:魂
特殊能力:インファイト
――――:アタッカー
――――:リベンジ
――――:闘争心
――――:E−セーブ
――――:サイズ差補正無視
P  R:
 ATXチームに所属する少女、年齢は17、コールナンバーはアサルト6、漆黒のヴェールを纏いし夜の支配者を自称するも、誰も呼ばない。
子供のころから戦隊ものやロボットアニメに憧れたことをきっかけに軍関係の進路を希望し、努力を重ねて結果をたたき出してきた経緯を持つ。
そんな経緯を持っている故に重度の中二病という不治の病を患っているが、それ以外の部分に関してはいたって常識的な感性を持っている苦労人。
戦闘中に叫ぶ、機体の武装に妙な名前をつける、大出力の攻撃時に独自の必殺技の名前を声に出す(偶に噛む)といった悪癖があるが、直す気なし。
それでいてメンタルはあまり強くはなく、細かい突っ込みを入れられることで部屋の隅でいじけていたりする。なお立ち直りは超絶的に早い。
配属前には男装をしていたが、今回専用機を受理する際の条件として、しっかり女性士官服を着ることを提示され、苦渋の選択の上受諾した。
 


機体名称:ハバキリ
操 縦 者:ニコラ=ケフェウス
B G M:SRWSC2・ケイジ=タチバナ専用BGM『まだ見ぬ明日の歌』 
H  P:6000
E  N:180
運 動 性:100
装  甲:1600
移 動 力:6
タ イ プ:空・陸
地形適応:空・A 陸・A 海・A 宇・A
Wゲージ:――
サ イ ズ:M
機体特性:格闘
ボーナス:装甲・運動性+15%
スロット:2
特殊能力:剣装備

機体武装:
ブラスター・ショット  (腕部から発射されるマシンキャノン。牽制目的で使用される)
クレスト・レーザー   (頭部のクリスタルから放たれる長射程のレーザー)
屠竜之太刀       (手に握る実体剣。ハバキリのメイン武装である)
コア・スタナー     (腹部から大威力と高出力のビーム砲を放ち、攻撃する)
ソニック・スラッシャー (屠竜之太刀による連続攻撃を行い、最後に横一文字に薙ぎ払う)

機体説明:
 グルンガスト系列とは違う計画で生み出された特機型機動兵器であり、実体剣『屠竜之太刀』と高い機動性を生かした近接格闘戦を得意としている。
十分な本体出力に加え、激しい攻撃にも耐えうる堅牢な装甲を備えた特機のお手本とも言うべき機体であり、更に単独飛行すら可能な機動兵器だった。
ロールアウトされた試作機をテストを行っていた際、テストパイロットとして乗り込んだ人間全員が不調をきたし、それでも乗り続けた者が危篤状態
に陥ってしまい、この事実を重く受け止めた開発陣は機体に封印処分を施した後、破棄しようとするのだが、テスラ・ライヒ研究所の科学者達が原因
究明の協力を申し出て、当機のジェネレーターがパイロットに影響を与えている事をつきとめ、グルンガスト用の大出力型プラズマ・リアクターへと
換装を行う事でようやく『まともに扱える機体』へとなったが、曰く付きとなってしまった当機に乗ると言う人間は誰一人として居なくなってしまう。
長らく使用される事の無かった機体が巡り巡ってアクアエデンへと回され、そして今回、ニコラの機体として受領・配備される事になった経緯を持つ。





氏  名:稲叢 莉音
出  展:DRA−CURIOT!
C  V:鮎川 ひなた
B G M;SRWOGs・ヒュッケバインMK−U専用BGM『VANISHING TROOPER』
性  格:強気
成  長:格闘系射撃重視型
エ ー ス:最終命中+10%、最終回避+10%
精  神:熱血、信頼、祝福、直感、突撃、加速
ツ イ ン:連撃
特殊能力:インファイト
――――:ガンファイト
――――:アタッカー
――――:見切り
――――:E−セーブ
――――:B−セーブ
P  R:
 今回の引き抜きでATXチームに所属する事となった、元アクアエデン所属の少女。コールナンバーはアサルト7、搭乗機はエクスバイン・L。
エリナ=オレゴヴナ=アヴェーンと同様の機関に所属しており、同期。しかしながら射撃の適性は低かったため、代わりに合気道を習っていた。
世話を焼いてくれた先輩であるリョーヤ・アマミヤ及び御風エリスを慕っており、今回の異動においてリョーヤの名前が出たことから即座に受諾
を行い、その後に御風エリスが合流したことを心から喜んでいる。(リョーヤやその件を関知していなかったが、伏せておくことに決めている)
周囲のことをとても大切に思っており、面倒なことを自分から買ってでる部分をもつ、ただし書類仕事は苦手(エリナ、エリスも同様だが)
リョーヤ・アマミヤから教わっていた料理は趣味となっており、時間の暇を見つけては調理を行い、同部隊の面々に差し入れをしている。



機体名称:エクスバイン・L
操 縦 者:稲叢 莉音
B G M:SRWOGs・ヒュッケバインMK−U専用BGM『VANISHING TROOPER』
H  P:4100
E  N:160
運 動 性:120
装  甲:1300
移 動 力:6
タ イ プ:空・陸
地形適応:空・A 陸・A 海・B 宇・A
Wゲージ:130
サ イ ズ:M
機体特性:回避
ボーナス:装甲・EN+10%
スロット:2
特殊能力:G−テリトリー
    :換装

武装説明:
ツイン・バルカン      (頭部にあるバルカン砲。ミサイル迎撃、敵機への牽制に用いられるがほとんど空気)
ロシュセイバー       (高出力型プラズマソード。有効射程が長いが消費もそれなりに高い)
フォトンライフル・S    (改良型の専用フォトンライフル。速射性と射程の長さが優れている)
ファング・スラッシャー   (左腕に搭載された投擲武装。ZOの刃を展開して敵機を切り裂く)
グラビトンライフル・Bst (母艦より射出される重力波ライフル。広範囲に重力波を照射する)

機体説明:
 T−LINKシステム、そしてトロニウム・エンジン等の装備を取り除き、一般のパイロット用に調整が施された廉価版のヒュッケバインMK−V。
それ等の装備が排除された以外はヒュッケバインMK−Vとの差異は無く、機動兵器としての性能は極めて高い上、単体での飛行能力まで有している。
元々はデータ採取用に製造された物だったが、今回の戦いが始まったと同時に稼動データ採取の為にATXチームに配備される事になった経緯を持つ。
大気圏内、強いては重力下での稼動データとテスラ・ドライブ内蔵バックパックによる飛行試験、そして実戦データを採取するのが目的なのだろうが
非常に汎用性の高い当機は癖の強い機体ばかり集まるATXチーム内で重宝されており、カーク=ハミル博士の思惑通りに各データ採取は進んでいる。
現在、月面でAMボクサーやAMガンナー等、各種AMパーツを装備した状態でのテストが行われており、そのテストが終了した際に此方にそれ等を
手配して貰えるらしい(※無論、ただでは無くエクスバインの各データをカーク=ハミル博士に提供する事と引き換えではあるが、些細な問題だろう)





〜恒例の作者の質疑応答コーナー〜
Q:「ね、ねぇ!私の機体は!私の機体は無いの!?」  質問者:布良 梓
A:世に平穏のあらんことを

Q:三話投稿はいつだヴォケ
A:時間なさ過ぎワロタ……ワロタ……

Q:「そろそろ、私たちの機体の設定つくろうよ」  質問者:高町 なのは
A:orz

Q:作者は厨二病
A:何を今更
2012/07/28(Sat) 23:06:36 [ No.1000 ]

◆ もしもオサレ師匠の描いたツルギンSSにありがちなこと 投稿者:kai  引用する 
セイン ・作者の霊圧が…消えた…

・SSの前にツルギ師匠のポエムが始まる

・背景が真っ白

・タイトルが「スペイン語」

・チャドのデバイスが…消えた…

・チャドのカートリッジが…消えた…

・チャドの魔力が…消えた…

・陣「 変 身 !(セットアップ) 」

・ケーニッヒを刺したと思ったら雛森を刺していた



・主人公がデバイスを手に入れたのもなのは達と知り合えたのも月島さんのお蔭
<それを否定すると周囲の人間が物凄く切れて「謝れ」コール

・女性キャラはほぼ奇乳

・物語後半で強そうなナンバーズが出てくるも実はたいした事ない
<また戦闘中に数字が変化するも大した意味はない

・ 集団戦が始まるかと思いきや各所で1対1になる

・戦闘中にトレイターの特訓が始まる

・ケーニッヒを倒してもまだ物語の序章

・オリ敵がやたら多い
<またオリ敵の大半に幼女の部下がいる

・戦闘はいかに強い魔法や技を使用するかよりいかに「オサレ」に戦うかで強弱が決まる

・敵の変身→アランカル化

・ディバインセイバーの詠唱から発動まで3話

・戦闘中に変な幼女3人が大物っぽく出てくるもあっさりボコボコ

・敵を倒したら月島さんが倒した事になっている

・やっとケーニッヒにSLBが決まったと思ったら超長い過去編突入

・戦いが終わった後、1人戦場に置き去りされるキャラがいる

・セットアップするとデバイスが13qになる
<すんません…言うたほど長く伸びません…

・魔法発動に1話 1戦闘終了に25話  3期終了まで2
50話  251話から無色編
<無色編の前にリハビリ編が数十話入る

・青い子「見て見て!…このデバイス!…命を刈り取る形をしてるだろ!!」

・デバイスを構える前に互いに自己紹介

・「俺のデバイス返せよぉ…」と泣きだす陣

・チャドの魔法が途中で消える

・しまった―――(相手が)逆だ!

・機動6課を設立したと思ったら雛森を刺していた

・知ってるか?デバイスってのは両手で持った方がつえーんだよ

・ナンバーズ「13人だ」

・ 勘違いするんじゃねえ、今のは魔法じゃなくて。ただの風圧だ

・陣の好物がナンになる

・陣の好きな飲み物は極限まで薄めたカルピス

・陣の最大魔法の範囲は13q

・陣「お前の切り札は無力化したぜ」  敵「面白いことをいうね。ならばこちらも聞こう『いつからこれが切り札だと錯覚していた?』」  陣「なん…だと…!?」

・切り札が出てくるまでに4話
<更に切り札の説明で3話
<しかも途中までの説明で先の説明は嘘だったことが明かされる

・デバイスは片手で持つより両手で持つ方がいい事に気付く

・技を外すたびにいちいち「何…だと…?」

・陣「射殺せ、『ディバインセイバー』」

・ケーニッヒ「何時から私の獲物がこれだけだと錯覚していた?」  陣「12本ある…だと…」
<しかもパワーアップが腕の増殖

・デバイスの真システムは「霊圧システム」
<チャドの霊圧が…消えた…

・無色「何時から俺がラスボスだと錯覚していた?」

・ユーリの切り札が刀になる

・フルパワーのディバインセイバーを放ったと思ったら雛森を放っていた

・陣のBJがオサレになるが新キャラに盗られる
<そして返せよぉ…と泣く

・陣「俺自身がデバイスになることだ…」

・ケーニッヒ「
            心




            か





・新デバイスを手に入れても変わるのはオサレなBJだけ

・滲み出す混濁の妄想、不遜なる狂気の文章、浮き上がり・否定し・痺れ・瞬き・眠りを妨げる、爬行する鉄のPC、絶えず修正する文章、結合せよ、反発せよ、地に満ち 己の無力を知れ

破道の九十
            執筆!

・デバイスの名前を知る事でやっと変身出来る

・チャドの出番が…消えた…




何時からだ…何時から私があとがきを書くと錯覚していた?(ぁ


2012/07/11(Wed) 19:00:14 [ No.999 ]

◆ スーパーリリカルなんぞない大戦 投稿者:シエン  引用する 
八神はやて  静かだ。耳朶に届くは密林に微かに降っている雨音だけ。
先程の爆撃がまるで嘘のように静まり返っている。

「…………」

 固く握っていた操縦桿から力が抜け、離れかけたところでまたギュッと握り締める。
 汗が流れる。嫌な汗だ。空調が効いているとはいえ、またいつ攻撃が来るかわからない緊張を強いられ、止まる気配はない。
 少しでも落ち着こうとため息をつくが、出てくるのは嗚咽のような息ばかり。
 息苦しい。目眩がする。頭痛が止まらない。同じ体勢をもう何時間保っているのだろう。
いや、それはただの体感で、実際には数分も経っていないのかもしれない。もしくはその逆。
 雨音が少しずつ大きくなってきた。遠くの方では雷鳴が聞こえる。もうすぐ、嵐がくるのかもしれない。
もしそうなった場合、敵の爆撃機は飛べず、攻撃の手が一時だが留まるかもしれない。逃げるならばその瞬間か。
 それでも、今この場を動くことはできない。与えられた指令は二つ。
敵前線を襲撃。そして本部隊との合流。この作戦に味方の援助、増援はなし。敵の総数は不明。
 思わず口角が上がってしまう。なぜこの任務を受けたのか。この人数で行こうと思ったのか。
 報酬か。確かに報酬は良かった。だが違う。
 地位か。そんなものに興味はない。だから中尉で留まっているのだから。

「……雨」

 小雨だったものが本降りとなり、土砂降りとなる。敵の手は止まる。こちらも手を出せない。
しかし、動くなら今しかない。例え敵機に発見されることになろうとも。

「ベイル」

 音声通信を起動し、小さな声で問いかけると、奴は待ってましたとばかりに応えた。

「動きますか? 確かに、なにか行動を起こすなら今しかない。でも、それは相手さんも承知のうえですよ」

「ああ、そうだろうな。でも、今を逃したらこのままジリ貧だ。それはゴメンだろう?」

 ベイルの顔は見えない。だが、その声音は笑っているように感じられた。

「あったりまえでしょうが。泥仕合なんかに興味はねぇ。やるなら派手に行きましょうや。ねぇ、隊長?」

「じゃあ、行こうか」

 瞬間、ゲシュペンストMK=Uの背部バーニアが火を噴き、アキトとベイルは同時に動いた。
 攻撃を回避するための迂回などは考えない。ただ一直線に密林を突き進むと、哨戒機が飛行しているのを発見。
 それをベイルはライフルで撃ち落とす。これでこちらが動いているということは相手に伝わった。

「派手に行こうか」

「当たり前だろうがっ。チマチマやるなんざ性に合わねぇ。やるならでっかく散らそうぜッ。行くぜ隊長!」

 連絡が行ったのか敵戦闘機が乱雲の中、隊列をなして迫ってくる。中にはPT――ガーリオン――の姿も数機見える。
空戦特化の機体ばかりだからだろうか、この風雨の中では動きが悪い。
しかしこちらは陸地系に適応したゲシュペンストMK=U、安定感はこちらが上だ。
ブーストを噴かしたまま、ぬかるんだ地面を滑るように移動しながらマニュピレーターに持ったサブマシンガンを上空へ向け、斉射。
風に煽られ弾はバラけてしまうが、ただの牽制だ。本命はベイルが放つライフル。
両手に装備したライフルの弾丸は雨風に負けず一直線に戦闘機に突き刺さり、爆破。
散らばった黒煙の中からはガーリオンが飛来しながらマシンキャノン、そしてバースト・レールガンを連射。
 散弾のように降ってくる弾丸を廃材で作られた即席の盾で防ぎ、レールガンは最小限の動きで回避。
アキトを狙っているガーリオンにベイルのライフルが刺さるが、戦闘機とは装甲の厚さが違う。
 しかし一瞬、一瞬だがベイルに注意を惹かれた。
 アキトはブースターを最大に噴かしジャンプ。
 それに気がついたガーリオンはマシンキャノンで迎撃しようとするが、それは盾に全て塞がれ接近を許してしまう。
 ガチッ。ガーリオンの腹部にマシンガンの銃口を当て、連射。

「エゲツねぇなぁ」

 そう言いながら自身に迫ってくるガーリオンの突撃を交わし、ライフルを腰にマウント。

「先に逝ってろや」

 コールドメタルナイフをコクピットに突き刺し、動きを止める。

「どっちがエゲツナイんだか」

 逃げようとする最後の一機を蹴り落とし、沈黙させる。

「どうにかなりましたねぇ」

「まだ余裕がありそうだが?」

「当たり前でしょうが。こんなんでバテてられるかよ。隊長こそどうなんです」

「ハッ。誰にモノ言ってんだよ」

「さすが隊長。じゃあ、行きましょうや。まだまだ先は長いですよ」

 先に進むに連れ敵機の数は増え、攻撃は激しくなっていく。道中にマシンガンの弾が切れ、ガーリオンからバースト・レールガンを奪取。
攻撃手段は問題ない。問題があるとすれば損傷率だろう。二人ともすでにボロボロの状態だ。特にベイルの状態が芳しくない。

「行けるか?」

「ハッ。誰にモノ言ってんだよ。アンタと一緒に今まで生き残ってきたのはオレだろ」

「フン。なら、奴らはお前がやれ」

「上等ッ! テメェ、帰ったら覚えてやがれよォ!」

 軽口を叩きながら進んでいるが、状態は更に悪くなっていく。このままの状態が続けば二人とも終わりだ。
なんとか打開策を見つけたいが、生憎そんな状態ではなく策もない。二人では限度がある。

 ――あとひとり、隊員がいればな。実戦済みならなおいいんだが……まぁ、ベイルが突っかかって逃げるんだが。

 無事に戻ったらもう少しベイルを教育しようと思うが、いつも思うだけで終わってしまう。
首に縄をつければいいのだろうが、つけられるならばとっくにつけている。それに、縄をつけたベイルなど何の役にも立たない。
縦横無尽に自由に駆けるのがベイルなのだから。
 甘い。そう言われればその通りだ。だが、手綱をいつまでも持っているのは疲れてしまう。
それは掛けられている者もだ。
 だからアキトは敢えて手綱はつけず、力で引っ張っている。圧倒的な力。
ついて来られる者はついてくるし、ついて来られない者は離れていく。
それに、アキトは連邦に属してはいるがDCに属していた時期もある複雑な経歴の持ち主だ。
結果、ついて来たのはベイルだけだったわけだが、後悔はしていない。
 こんな生き方があってもいいだろう。自分の信じた道――祖国を守る――それを歩いているのだから。

 ――でも、それも建前にすぎない、か。

 本当は、ただ暴れたいだけだ。気に入らない。戦うことでしか分かり合えないこの世界が。
そしてその枠に当てはまっている自分自身が。

 ――つくづくだな。

 バカらしい。呆れ果てる。でも、そんなことはわかりきっている。
 自分を変えればいいと思った。しかし変わることは難しい。変わるには強さがいる。
そして同時に、変わらないには変わる強さがいる。
 矛盾していることはわかっている。でも、これが真実だ。そして、アキトにはその強さがない。
ただ流されるだけ。そして、その流れにもうまく乗れず沈んでいる。
 ベイルを矯正しようとしないのは、もしかしたら自分と同じモノを見出しているからなのかもしれない。
ベイルは変わる強さを持っているかはアキトにはわからない。しかし、もし持っていたら、自分はその場に取り残されてしまうのではないか。

 ――寂しいだけ。

 置いて行かれるのが。そばに居てくれないのが。独りぼっちなのが。

 ――だからオレは……。

 ベイルが求めるギリギリの線で手を引き、真に満足させようとしない。
 卑怯。臆病者。自己満足。様々な言葉で表せられる。それは結局――仲間がほしいから。

 ――忘れられる存在、か。

 小さく笑みを作り、ため息をこぼす。本当に、バカらしい。
 自分の望みのためにベイルを引き連れ、いや、引きずり込もうとしている。同じ場で死にたい。独りは寂しいから。

 ――最低だな。まったく。

 だからだろうか。こんな状況――敵に囲まれているというのに落ち着き払っていられるのは。
 耳をつんざく爆音。機体が上げている悲鳴。それらに紛れていたからか、それとも聞きたくなかったからなのか。
ベイルの声は微かにしか聞こえていなかった。
 瞬間、機体を襲う衝撃。コクピットは揺れに揺れ、機体制御を間違えていれば倒れていただろう。
 何が起こったのか。モニターに目をやると、そこにはベイルの機体が膝をついているのが見えた。

「……ベイル?」

 ノイズが混じった映像通信。そこには怒りを滲ませたベイルが写っていた。

「アンタ何やってんだ? さっきからブツブツ言いやがってよォ。死にてぇのか。あ?」

「オレは――」

「アンタはオレに言ったよな。オレと来い、オレを満足させてくれるってよォ。こんなとこで死んで、オレは満足できねぇ。
アンタはどうなんだ。こんなとこで満足か? こんな死様で満足か?」

 歯を食いしばり、絞りだすような声でベイルは続ける。

「ビアン総帥が亡くなって、オレはどうすればいいかわからなかった。他の連中はバン大佐に着いて行った。
でも、オレが着いていたのはビアン総帥なんだ。あの人は凄いよ、でも違うんだ」

「……でも、オレは」

「アンタはオレの夢なんだよ。憧れなんだ。アンタはスゲェ。
あの蒼き獅子<クレイル=ウィンチェスター>とまともにやりあえる奴なんざアンタしかいねぇ。
決着はまだついちゃいねェだろうが。……見せてくれよ。アンタがアイツに勝つとこ、オレに見せてくれよッ」

「ベイル……」

「なぁ、勝ってくれよ。アイツに、蒼き獅子<クレイル=ウィンチェスター>に。
それで言ってくれよ、アンタについていけるのは蒼き獅子<クレイル=ウィンチェスター>じゃねぇ、オレだって!」

 ……結局、似たもの同士だったというわけか。同じ生き方しかできない者同士。
違うのは、方や諦観し、方や羨望している。たったそれだけの違いだ。
 アキトは片手に持っていた盾をベイルに投げ渡し、ベイルが落としたライフルを拾い、そして言った。

「ベイル。見ておけ。これがオレだ。蒼き獅子<クレイル=ウィンチェスター>に打ち勝つ、
命を無視された戦士<ゲシュペンスト・イェーガー>だ」

 ブースターを噴かし、突撃。一見無謀だ。しかし、それに目を食らった敵機体は一瞬だが動きを止めてしまう。
その隙を見逃さずにライフル、バースト・レールガンを斉射。

「二つ」

 左右から迫ってきたガーリオンを最小限の動きでかわし、すれ違い様に撃破。

「四つ」

 前後からマシンキャノンをバラ撒きながら突撃――ソニックブレイカー――をしてくる敵機には飛び上がり、
それを追い上昇してくる際に自分は地面に向いブースターを噴かし急降下。地面スレスレになり反転、両手に構えた銃を発射。

「六つ」

 撃破率はどんどんと上がっているが、キリがない。無傷に見えるが、ところどころに細かいダメージを受けている。
このまま行けば数分と持たずにやられてしまうことは自明の理。
 策などもとよりない。でも、それでも、暴れ続けなければならない。ベイルから敵の目を背けられればそれでいい。
仇などは期待していないが、奴なら何かしらの手段で報復を果たすだろう。それで気が済むのならそれでいい。
命を無視された戦士<ゲシュペンスト・イェーガー>の肩書きは奴にくれてやる。それからどうするかは奴が決めるだろうから。
 だから今は、こんな男に憧れを懐いてくれたバカに少しでも長い夢を見せてやりたい。
自分が着いて行った男はどれだけの奴だったのか。どんなことをしたのか。そいつについていけたのは自分だけだったと、自慢させてやりたい。
 弾は切れ、機体は動けるのが奇跡をいう現状。そして敵は増援が来ている。
こんな状況だというのに、アキトは笑っていた。

 ――なぁ、ベイル。次はお前が夢を見せてやれ。オレみたいなバカ野郎によ。

 狭まる包囲網。万事休す。ゲームオーバー。ベイルがなにか叫んでいるが、もういい。満足だ。

「――オレは満足なんかしていないぞ」

 突如として割り込まれた通信。そして上空からの落下。

「随分勝手な真似してるじゃないか。なに勝手に死のうとしているんだ」

 その機体は蒼い装甲を持ち、操縦者の意思を体現したかのような加熱式実体刃。そして、先ず以て目に入るパイルバンカー。
アルトアイゼン・ナハト。それがこの機体の名。

「蒼き獅子<クレイル=ウィンチェスター>……」

 見間違えるはずがない。誰よりも長く戦い、時に敵対した相手の機体だ。

「なぜ……増援は来ないはずじゃ……」

 アキトの疑問に対して返された回答は嘲笑だった。

「俺が増援や援助なんかするわけがないだろうが」

 じゃあ、なぜ?

「上の方の決定があってな。今お前に死なれると困るとな。それに――」

 クレイルが言い終える前に輸送機からコンテナが投下された。重低音を響かせながらも地に張り付いたように微動だにしない。
二呼吸ほどだろうか、間を置きコンテナが開くとそこには――

「――アークゲイン」

「調整が終わったばかりだ。慣らしには丁度いいだろう。早く乗り換えろ。それまでは俺がコイツらの相手をしてやる」

 そう言うやいなや、クレイルは駆ける。
 アキトは無言で頷き、もはや装甲を意味していないハッチを開き、アークゲインへとひた走る。
 ワイヤー銃を使いコクピットまで上り搭乗すると、すぐに機体に熱が入った。

「アークゲイン……行くぞ」

 降着ポーズから立ち上がり、内部に溜まった余分な熱を排除。少々過敏な反応だが、自分にはこの方があっている。
 動いたのを確認するかのようにアルトアイゼン・ナハトがこちらをチラリと一見する。

 ――見せてみろ、か。いいさ。

 両腕を交差させ、言葉を紡ぐ。

「アークゲイン、リミット解除。コード麒麟――朧ッ!」



「こちらアキト・アイザワ中尉。はい、一帯の敵勢力は無力化しました。お借りしたゲシュペンスト以外は無事です。はい、すみません」

 本部隊に連絡を終えると、アキトは溜まっていたモノを吐き出すように大きなため息をついた。

「どうしたんですか、隊長。浮かない顔ですよ。二人とも無事だったんだからいいじゃねぇか。
まぁ、奴に助けられたってのが癪に障りますがね」

「それもそうだが、そうじゃない。奴が持ってきた辞令書のことだ」

 それを聞き、ベイルはああと呟くと同時にニヤリと笑みを見せた。

「CRBチームでしたっけ? いいじゃねぇですか。実験部隊でも。どうせオレらは出戻りだ。行くとこ行くしかないでしょうが」

 ベイルの上機嫌には訳がある。ベイルの苦手とする男は別の部隊に配属になるということを聞いたからだ。

 ――引き抜く。殺してでも引き抜く。



 あとがき
ユウさんの要望と私の渇望ががっちり握手したので書いてみました。
途中荒くなっているのは力尽きかけていたからです。
2012/06/27(Wed) 22:09:13 [ No.998 ]

◆ なのはAS公開直前短編与太話 投稿者:犬吉  引用する 
芹香(魔女) (ミッド某所のスタジオ。マイクの前には三つの人影)

アリス「皆さんお久しぶりです! 『世界にシスターブームを!』を合言葉に今日も頑張るアリス・ノーランドです!」

リイン「今日も元気にリインフォースUですぅ!」

はやて「機動六課部隊長八神はやてです。……はぁ〜あ」

(夜天の主、何故かテンションが低い。が、進行はそのまま続く)

アリス「今日はいよいよ公開直前となりました『魔法少女リリカルなのはTHE MOVIE 2nd A's』の最後の宣伝を行いたいと思います!」

リイン「最後の夜天の主であるはやてちゃんと、守護騎士のみんな。そして管制人格であるアインスお姉さまとの悲しくも美しい絆の物語です!」

はやて「はぁ〜〜〜あ」

アリス「……ところでリイン曹長? どうして八神部隊長はあんなに溜め息ばっかり吐いているのかしら?」

リイン「あ〜、それはですね……アリスさん、前作と同じように今回もリピート特典があるのは御存知ですか?」

アリス「勿論ですよ。一回見に行くとスタンプ一個と特別待受QRコード付きスタンプカードがセットで。スタンプ二つでなのはちゃん、フェイトちゃん、はやてちゃんの三種類から選べるミニ色紙。
    そして三つで、今回も0号フィルムがゲットできるんですよね。全くどれだけガメつ……ごほん。とにかくそれが何か?」

(亡霊の修道女、パラパラと原稿をめくる)

リイン「実はその色紙のことなのですが……マイスターはやては全国的に自分の色紙だけが残りまくるという悪夢に晒されているのですよ」

アリス「あぁ〜……それは仕方ないですね」

はやて「仕方ないってなんや!? こっちは本気で心配しとるんやで!? これ書いとる作者も本気で心配してて一枚目は私のにしようかとか同情票入れる気やねんで!? CMで『リリカルマジカル頑張ります』とか言っとる場合やないんや!!」

アリス「大丈夫ですよ。StSだったら危ないけど、A'sの頃のはやてちゃんならまだヒロインだから」

リイン「そうですよ! この頃のはやてちゃんならまだ、フェイトさんに次ぐ薄幸系ヒロインのポジションでしたし!!」

はやて「全然、フォローになっとらんわぁーーーーーっ!」

(夜天の主、涙と共に逃走)

アリス「あ、逃げた」

リイン「は、はやてちゃーん! すみませんが後はお願いするのです!! 待って下さい、はやてちゃーん!!」

アリス「ちょっと、リイン曹長までですか!? えっと……と、とにかく『魔法少女リリカルなのはMOVIE 2nd A's』今週末より公開開始です。……余裕があれば、はやてちゃんの色紙、お願いしますね?」

ディアーチェ「尚、用意したミニ色紙にはランダムで我ら紫天一家のイラストが――!」

(いきなり闇王、出現。その頭を、亡霊の修道女がペチンと叩く)

アリス「ありません。そしてエルトリアに帰りなさい。いきなり出てきてデマを流さないでください」

ディアーチェ「き、貴様! 王たる我の頭を叩いたか!!」

レヴィ「ねぇねぇ! アリスってオリジナルそっくりだよね!! 何で何で!?」

(更に雷刃の襲撃者登場。興味津々の目で亡霊の修道女を見上げてくる)

アリス「ちょっ……保護者の方〜っ! これを即時引き取りに来てくださ〜い!!」

(亡霊の修道女、雷刃の襲撃者のテンションにタジタジ)

シュテル「ちなみに海鳴市での上映は予定されておりませんので、海鳴市在住の方は隣町の映画館まで足を運び下さい。さぁ、ディアーチェ、レヴィ、帰りますよ」

(星光の殲滅者。両名の首根っこを掴んで引っ張っていく。二人はジタバタと抵抗するがそのままスタジオの外へ)

アリス「えっと……あ、そろそろ時間ですか? それでは皆様。公開までもう少しお待ちを……」

(亡霊の修道女、静かに頭を下げる。スタジオ暗転)







お久しぶりの犬吉です。もうすぐ劇場版公開ということで、アホな話をちょっと書いてみました。
皆様、はやて色紙を宜しくお願いしますw
2012/07/11(Wed) 02:40:51 [ No.997 ]

◆ 宮本探偵事務所の憂鬱 パート1 投稿者:  引用する 
羽ピン *拍手のネタに便乗しました

某月某日

今日は事務所にいたが、アリサもローゼも買い物に出かけ、依頼人の予約もない。
暇なので、剣の素振りを繰り返してた時にインターホンが鳴った。

玄関を開けたら、目の前にいたのはフッケバインの首領だった。
何を言ってるのかわかry)

すぐに追い出そうと思ったが、メロンを持ってきていたので仕方なく入れてやる事にした。
そう、あくまで仕方なく、だ。

その日は何故か俺の武勇伝を聞いてくる以外何のトラブルのない日だった。
アリサが帰ってくる前に退散したし、今日は珍しく平和だった。


某月某日

またアリサがローゼを連れて出かけた所、はやてが顔を真っ赤にして飛び込んできた。
前に敵方の首領が事務所に来た事で聞きたいことがあるらしい。

とりあえず、ありのままを答えたら、いきなり「ここを第2拠点にする!」とか言い出した!
あわてて待ったをかけるが、鬼気迫る顔をしてるはやてには暖簾に腕押しだった。

またアリサにお仕置きされるのかと走馬灯がよぎった時、突如現れたMIB(メン・イン・ブラック)と、空が地面に落下したかの様な仏頂面の男にはやては連れ出されてしまった。

仏頂面の男は管理局の制服を着ていたので、はやての心配は必要ないだろう。
ただ、制服の色が「赤色」なのが気にかかったが……。


某月某日

昨日は夜更かしした所為で遅めの起床。
リビングに出ると、何故かいる家なき子と、何処からか持ち込んだ黒板を背に何か講義をしているローゼがいた。

この異様な光景は何だと聞いてみたら、「今ジークさんに執事道のなんたるかを講義しているのです」とアホすぎる回答が返ってきた。

家なき子の方も「お師さんの『強さ』を知る為の第一歩だと聞きました!」とこっちからもアホな回答が。

ちなみに、なんで執事かと聞いたら、「アリサ様以外にメイド枠が主にあるのですか?」と言われた。


某月某日

恒例のミミズ退治を終えて事務所に戻ってきたら、執事姿の家なき子が出迎えた。
本当に執事になりやがった。
そして後ろにはバラバラのガジェットの山とボロ雑巾のローゼが倒れていた。
っておい!!?
何があったんだと揺り起こしてみたら、
「まさに新ジャンル、ドジっ娘執事でしたよ……」
と言って再び意識を失った。
あまりの展開に戦慄した。

「あ、安心してくださいお師さん!いっぱい練習したから、ちゃんとご奉仕します!」
こっちもこっちで妙に気合が入ってた。

俺が留守の間に何があった。


某月某日

先日の宣言通り、家なき子は必死に執事を頑張っていた。
ローゼの教育の賜物か、お茶もちゃんと淹れれるし、仕事での着替えや道具も揃えてくれる。
だが、その度に壁や床や天井に穴が空くのは何故だ?
お陰でガジェットが事務所内を忙しなく動き回っていた。


某月某日

妹さんが久々にやってきた。
俺の護衛の筈の彼女が長らく姿を見せなかったのは、どうやら武者修行に行ってたらしい。
何処に行ってたのかと聞いてみると、「神沢、諏訪原、オセロット、アクアエデンetc…」何故か寒気がしたので途中で止めた。
ちなみ今日は家なき子は来ていない。


某月某日

朝起きたら、執事が三人いた。
ローゼと家なき子と…妹さんだった。
何故お前までと聞いてみたら、
「オセロットでは女性のボディーガードも執事を兼ねているそうです」とのこと。
非常識の世界を参考にするなとツッコんだら、「主の方が非常識ですから問題ありません」とアホな返しが来た。
誰が非常識だコラ!

そして、それぞれの用事で執事娘達がいなくなった昼頃、秋葉原の馬鹿二人が突然やってきた。
「いや、三日ぐらい前からこっち来るって連絡してたし、宮本氏も返事返したじゃん」
「女遊びに夢中ですっかり忘れてたんだろう、仕様の無い詐欺師だ」
忘れたのは悪かったが、そんなものに夢中になった覚えはねぇ!
「いや、顔合わせる度にいつも女子絡みのトラブル起こしてるっしょ?」
「フッ、日頃から女共を弄んでいるから無用な騒動を起こすのだ。少しは自重するがいい」
とりあえず、厨二病の方には女絡みでとやかく言われたくなかった。
「オカリンが言えた義理じゃないお」
相方の済んだ瞳が妙に怖かった。

二人が来たのはなにやら注目のアニメやら科学やらのイベントが海鳴で行われるということで、泊り込みでやってきたらしい。
何故そんなイベントが秋葉原や都心でやらないのかというと、
「思いっきり宮本氏が原因だよJK」
さっぱり分からなかった。
萌え文化なんざカケラも知らんつーに。

2013/02/11(Mon) 21:55:37 [ No.993 ]

◆ ロボットもの初戦闘 投稿者:シリウス  引用する 
トーレ


南極事件。

その日、多くの人々は自らの平和が偽りであると知る。

異星人『エアロゲイター』の侵略。

地球連邦政府がその事実を隠蔽していたこと。

驚愕、動揺、怒り、絶望などの感情がたった一つの真実によって溢れだす。

しかし、さまざまな感情が湧きたつ中で民衆は悟る。

平和な時代は終わりを告げ、この地球に逃げ場は存在しないことを―――。

この日、世界は戦乱と混沌が入り混じった時代が幕を開ける。



スーパーロボット大戦OG・アストレイ

第5話『ディバイン・クルセイダーズ』





アキト達は自らの艦の中で画面越しに映る光景を眺めていた。

その視線の先には壇上に立つビアン博士。

否、これからはビアン総帥と呼ばれる人物の姿を片時も離さない。

これから起こる事は彼らは忘れないだろう。

何故なら自分達は地球連邦を相手に戦争を仕掛ける為に宣誓を行うのだから。

そして、ビアンはゆっくりと語りかけるように言葉を発する。


『もはや人類に逃げ場などない!』


ビアンはそのまま起こった出来事を話していく。

エアロゲイターに襲撃されたヒリュウの事件。

その技術力に屈した地球連邦政府上層部の隠蔽。そして、主権委譲による降伏。

多くの隠されてきた真実が明るみにさらされていく。


『地球も、宇宙に上がった人々の暮らすコロニーも等しく侵略という未曽有の危機にさらされている事は事実で

ある! 我々に必要なものは箱舟ではなく、異星人に対抗するための剣である!』


その為に自分達は雌伏の中で暮らしてきたのだから。

その中でリオンなどの多くの兵器を開発し、来るべきに備えてきた。

全てはこの地球圏を護る為に―――。


『本日ここで、我々EOTI機関は『ディバイン・クルセイダーズ』として新生し、地球圏の真の守護者になる

ことを宣言する! そして、腐敗した地球連邦政府を粛清し! 異星からの侵略者を退け! この宇宙に地球人

類の主権を確立するのだ!』

「はっ! 随分と大きく出たもんだな。地球人を主権にするとかよ」

「でも、そうでもしきゃあ結局地球は何度でも襲われることになるからね」

「ええ。それに私達は外宇宙へと飛び立つことが出来ても、その先がどうなっているかが分からない以上、下手

に外へと戦力を送る訳にはいかないでしょ?」

「まあな。侵略している間に地球が落とされました、じゃあ洒落にもならねえからな」


外宇宙に戦争を仕掛ける力は未だに持ち合わせていない事は彼らもまた分かっている。

だからこそ、彼らは迎撃という方法を選んだ。

例え何度戦うことになろうとも、敵の意志が挫けるその日まで。


『侵略の脅威に晒された今の地球圏に必要なものは強大な軍事力を即時かつ的確に行使出来る政権である! だ

が、それは人民を恐怖や独裁で支配するものであってはならない! 我々は護るべき対象である人民に対して刃

を向けるようなことはせん!』

「民間人には攻撃しないか。この辺はビアン総帥とマイヤー総司令の手腕次第か」

「そうですね。一応コロニー側も釘を刺してはいますけど、それでも納得できない者もいるのは確かだから」


リョーヤはコロニーと地球連邦政府が抱える問題を知っている。

その中でも一番根深い事件が『ホープ事件』であった。

多くの犠牲者を出しながら、未だに禍根を残す事となった事件。

コロニー側にとって、あの事件が齎した悲劇は連邦政府に対して深い疑念と憎悪を植え付けられてしまった。

多くの者はその事件で人生を狂わされたのだから。

そして、自分もまたあの事件によって人生を狂わされた一人なのだから。


「リョーヤ。思い出すのは勝手だが、泥沼にハマるなよ。俺達はお前等の私怨に付き合う暇はないぞ」

「分かってます。それに自分にどうこう言える立場にないのは確かですから」

「そうか。それならいいさ (まあ、問題を抱えているのはこちら側も同じか)」


何処の組織も抱える問題は変わらない。

獅子身中の虫も復讐者もビアンやマイヤーの手腕によって何処まで抑えられるか。

あるいは抑えきれずに彼らの方が動き出すのか。

しかし、兵士である自分達にとって上層部の問題だけは関わりたくないのが本音であった。


『ディバイン・クルセイダーズの意志を理解し、地球圏と人類の存続を望む者は、沈黙を以てその意を示せ! 

異議あるものは力を以て、その意を示し、我らDCに立ち向かうがいい!』

「この映像を見て、どれ位の人間がこっちに来るんですかね」

「それこそ俺達じゃあ分からんさ。ただ信念や義憤に駆られて、こっちに来る連中ならまだマシだがな」

「あぁ? そりゃあどういう意味だよ」

「連邦に勝ち目がないと思って、鞍替えするような連中が来られても迷惑って話だよ」


アキトは今後に起こりえる事を懸念する。

このビアンの宣言によって世界は大きく変わっていくことは誰もが予想が着く。

民間人だけではなく、軍人や政府すら秘密にされ続けていた情報が明かされたのだから。

この情報が明かされた時、人々がどういう行動を行うのか。

現政権からの変革を求めて、DCに組するのか。

今ある世界を護る為に地球連邦に組するのか。

それならば護るモノの為に戦うのだから、特に言うことはない。

しかし、問題は信念も大義もなく、勝ち負けや生死しか考えない人間。

彼らに大義はなく、我が身の可愛さで簡単に味方にも敵にも成りえる。

そんな兵士を集めても、結局は烏合の衆でしかない。

真の意味で一つの組織となる以上はこの大義や信念、理想に共感しなければならないのだから。


「総帥が求めているのはそうした人間ではないのは確かね。恐らくこの地球を護る意志を持った人をあの方は待

ち望んでいるんでしょうね」

「地球を護る、か。実際あの人ならそれも頷けるか」

「そう。でも、それは地球連邦じゃない……私達がなるのよ」


所属や理由はどうであれ、自分達は此処に集った。

その為の兵器を開発し、その兵器を扱う技術も身につけてきた。

全てはこの日の為に雌伏の時を歩んできたのだから。


「さて、これより『オペレーション・サザンクロス』及び『オペレーション・カシオペア』を発令します。各自

速やかに持ち場に着き、準備の方を」


オペレーション・サザンクロス。

そして、オペレーション・カシオペア。

その二つのミッションの発令と同時に周囲の顔付きが変わる。

そこに一切の油断もない真剣な表情。しかし、気負いや恐れはない。

セフィリアは彼らの表情に頼もしさを感じるのだった。


「それとアキト中尉。あなた達のコードは『ハウンド』で登録していますから、忘れないで下さい」

「ハウンド……猟犬か。了解」

「では、良き戦争を」

「戦争に良いも悪いもないだろう」

「ふふ、そうですね」


そのままアキト達はブリッジを去っていく。

残されたセフィリアは副長やオペレーターや操縦士などの顔を見つめる。

これから始まる戦争に皆が昂揚し、心のどこかでは恐怖もしているだろう。

だからこそ、自分は常に冷静ならなければならない。

彼らや小隊の命を預かる人間である以上、恐怖や責任に押し潰されないように―――。

ゆっくりと息を吐き、心を落ち着かせていく。

そして、目の前にいる乗組員の声を懸けた。


「さっ、行きましょうか。その基地担当のキラーホエール隊から何時でも繋げれるようにしといてね」

「了解」

「本命の一矢も大事だからこそ、彼らの連繋が必要になるわ」

「ええ。使用される兵器がMAPW(広域戦略兵器)である以上、タイミングを誤らせる訳にはいけませんから」


MAPWから放たれる威力は基地を軽く吹き飛ばす事など容易。

しかし、その前段階としてリオン及びF−32型航空機が迎撃システムを撃破を行わなければならない。

その為、そのMAPWを放つ時間を予め知る必要がある。

MAPWに巻き込まれて、戦死など隊を預かるものとして失格と言える。

そうならない為にも原子力潜水艦『キラーホエール』との連繋が必要不可欠であった。


「まあ、全てはやるべきことはやってからか。少なくともこの程度の局面を乗り切れないようじゃあ、今後なん

てモノは夢のまた夢だろうしね」


初陣で躓くようでは今後の戦争は生きれない。

何故なら自分達の敵はもっと後にも続いているのだから。

セフィリアもこの場所で死ぬ気など毛頭ない。

それは彼らもまた同じだろう。

だからこそ、自分達はこの場に集まり、戦う事を選んだのだから。



★ ★ ★ ★ ★



無音にすら感じる中でアキトは久しぶりの感覚に苦笑する。

恐怖。そして、昂揚。

息を吸う度に、呼吸が重たく感じる。

相反する感情に襲われつつも、心の奥底では待ち望んでいたのかもしれない。


「(結局何も変わらず、か)」


過去の出来事から戦場を離れようと考えた事は何度もあった。

何度も死の恐怖を味わい、その中で生きて帰ってきた。

それこそ味わった地獄など数えきれないかもしれない。

軍から抜け出した時、別の人生を歩めたのかもしれない。


しかし、結局自分は戦う事しか出来ないのだ。


もはや身に着いた習性や血は拭えない以上、戦い続ける事を選んだ。

その果てが何であろうとも―――。


『こちらクイーン1どうぞ』


すると、無音だった空間に響くオペレーターの声。


「こちらハウンド1。どうした?」

『既定のポイントに到着しました。MAPWの時間の確認はよろしいですか?』

「ああ、既に叩き込んでいるさ。ハウンド1から各機、お前達はどうだ?」

『こちらハウンド2。特に問題ない』

『こちらハウンド3。こっちも問題ありません』

「ハウンド4。そんな下らねえ事聞いてんじゃねえよ』


ハウンド1のアキトから順にハヤト、リョーヤ、ベイルと答えていく。

彼らに確認を終えた後、通信を切る。


「だそうだ。こっちの方は問題はないが、向こうの方はちゃんと出来てるんだろうな?」

『……はい。向こう側も問題はないそうです』

「了解した」


アキトは操縦桿をこれから起こる事を噛み締めるように握りしめる。

既に賽は投げられているなら、あとはそれを行うのみ。

ゆっくりと目の前に開かれていくハッチ。

此処を出たら、その先に待っているのは戦場。


『ハッチ開放、カタパルトセット。射線クリア。コントロールを委譲します』

「了解。アイハブコントール……アキト・アイザワ。リオン出るぞ!」


カタパルトより射出されるリオン。

一気にペダルを踏み込むと、呼応するかのようにブースターが噴射する。

そのまま機体は最高速度に達し、上空へ上がっていく。

そのスピードは直ぐに雲海の上に到達すること出来、これほどのスピードを出したのにも関わらず、反動や衝撃

が抑えられている。

改めてこの機体性能にアキトは思わず感心してしまう。

そのまま飛行を続けていると、レーダーより自分の後方より3つの反応があり、直ぐに確認した。

そこには三機のリオン。

直ぐに自分の小隊だと気付き、そのまま回線を開き、彼らに呼び掛けた。


「こちらハウンド1、各機へ。俺達の任務はサザンクロスを上手く活かせる為に基地内の対空銃座やミサイルの

撃破だ。少なくとも深追いはするなよ」

『あぁ? なに甘っちょろい事を言ってんだよ。片っ端からぶっ壊せばいいじゃねえか』

「そういうのはMAPWが勝手にやってくれるさ。俺達の任務はそこまで上手く運んでやることだ」

『それに一々ぶっ壊してたら弾の方が追い付かなくなるだけだぞ』

「そういうことだ。それにMAPWの巻き添えという死に方なんて嫌だろ」

『チッ! 分かったよ』


ベイルはこの日を待ち望んでいた為に、張り切っているのが直ぐに分かった。

その姿に苦笑しつつも、釘だけは刺しておく。

実際限りがある以上は消費は抑えなければならない為、深追いはせず、確実に狙える所から狙う。

それがPTや戦車などの兵器であっても関係ない。

ただ目標を定めて、撃つだけなのだから。


『……どうやら向こうも気付いたようですね』


今度は前方より航空機『メッサー』が3機近づいてくる。

少なくともリオンの敵ではない。

しかし、アキトには別の懸念があった。


「(予想よりも早いな。弾も温存したかったが、仕方ないか)お前等、油断して落とされるなよ」


現状の優先項目は敵の排除。故にその最適解のための行動を思案する。

アキトはペダルを踏み込み、それに呼応するように機体のブースターが唸りをあげる。

その加速を阻むかのようにメッサーはバルカンによる牽制を行い、機関砲の銃声が戦場に響き渡る。

しかし、その牽制のみでは阻む事は出来ず、機体は最高速度へと到達し――

結果、彼らの真下を駆け抜けてゆく。

機体の姿勢と推力の調整を行い制動を掛け、敵機体を射程圏内に捉えると同時に

先ほどの牽制のお返しとばかりに、バルカンが火を噴いた。

装甲の薄い航空機は貫通され、一機は地上に落下しながら爆発。

それを横目に確認すると、今度は旋回しながら向かってくる2機のメッサー。

しかし、その二機を無視し、一気に目標の基地までブースターを加速させる。

2機のメッサーがどうなったか、見るまでもない。


何故なら彼らの背後には既にリオンの銃口が彼らを標的にしていたのだから。


その背後で響き渡る爆発音。

こちらの損傷は特になく、またレーダーを確認しても誰一人撃墜されていない。

問題がない以上、任務である目標地点の迎撃に意識を集中させる。


「これ以上時間を費やす訳にはいかない。発射までの時間は?」

『MAPWの時間は残り15分です』

「15分もあれば十分だな。行くぞ」


4機のリオンは加速を維持したまま、上空より降下していく。

メッサーが迎撃された時点で、連邦軍側も既に防衛システムを機動されていることは予測済みであり、其処には

PT『ゲシュペンスト』の存在も重々承知している。

だからこそ、任務を成功させる為にも不安要素は確実に叩いておく必要がある。

そして、ついに彼らの肉眼でも基地の存在が確認する事が出来る位置に辿りついた。

そのまま加速を維持しながらも、レールガンを常に撃てるように装填する。


しかし、彼らを阻むように対空迎撃用機関砲が火を噴く。


無数の弾幕が迫りくる中で最低限を回避を行いながら、照準を定め―――。

アキトは一切の躊躇いもなく、右手の引き金を引く。

轟音と共に放たれた弾丸はまっすぐと機関砲を貫通し、爆発する。

ベイルもそれに続けと言わんばかりに他の機関砲を撃ち抜いていく。


「ハヤト、リョーヤ、お前等はそのまま迎撃装置を壊し続けろ。俺とベイルはまず敵の足を潰すぞ」

『了解した。なるべく多く壊してこい』

『おいおい、そんな事は言われなくても分かってらぁ』

『まあ、落ちないように気をつけてくれたらそれでいいですよ』


こんな状況下でも何時もの反応にアキトは思わず苦笑する。

むしろこれ位の方が却って頼もしさも出てくるもの。

ペダルを踏み込み、一気に拠点に迫っていく。

そのまま接近しながら今度は右腕に搭載されているホーミング・ミサイルを発射。

ミサイルは基地の滑走路に着弾し、爆発。

一発また一発とミサイルが爆発を起こし、滑走路は破壊されていき、火の海と化していく。

これでメッサーなどの航空機が出撃される恐れも無くなった。

しかし、これではまた足りない。

MAPWを成功させる確率を上げる為にも少しでも多くの兵器や防衛機能を破壊しなければならない。

油断や慢心をすれば戦場で自分で死ぬのは自分であると彼らは自覚しているから―――。


「……ようやく来たか」

『重役出勤御過ぎて、寝ぼけてたんじゃねえのか?』


だからこそ、火の海の中で一つの巨大な影が佇んでいる事を直ぐに察知する事が出来た。

人型機動兵器『量産型ゲシュペンストMKー2』

アキトとベイルはすぐさま間合いを取るべく、上空に浮上する。

少なくとも肉眼で見る限り、長距離狙撃の武装は持っていない。


「(M950マシンガンか。なら、そこまで射程は広くないが……)」


ゲシュペンストの滞空時間も考えても、このリオンで空中戦で戦うことは難しい。

しかし、此処でハヤト達の方に向かわれたら任務に支障が来たす可能性がある。

ならば、自分達の方に引きつけなければならない。

少なくともMAPWが放たれる時間までは―――。


「ベイル、聞こえるか?」

『なんだよ。まさか退けとか言うんじゃねえだろうな?』

「逆だ。今此処でアイツが動かれたら後々厄介だからな」

『へぇ、てっきり無視しろって言うと思ってたぜ』

「だが、熱くなり過ぎるなよ」

『ハッ……んなもんは出来た試しがねえんだよ!』


ベイルの声から喜びの感情を含みながら、彼はそのままゲシュペンストに向かって突撃。

その後を追うようにアキトもペダルを踏み込むと、同時にブーストが唸りを上げる。

まず牽制として右腕に装填されているミサイルを発射。

ミサイルは地面に着弾するも、爆撃は轟音と共にゲシュペンストの周囲を吹き飛ばしていく。

反動と衝撃によりゲシュペンストの足が止まる。

そんな隙を彼らが見逃すわけもなく、追撃のレールガンを放った。

しかし、ゲシュペンストも紙一重で避けると、すぐさま右手に持っているマシンガンを連射した。


「チッ……」


迫りくる弾丸を避けつつ、二人はマシンガンの射程が届かない上空へ浮上していく。

リオンの装甲では被弾次第では命取りに繋がる以上、不用意に突っ込むのではなく、足を止めるだけで良い。

問題は任務の要である迎撃システムがどうなっているか。

すぐに迎撃システムの破壊を担当しているハヤトとリョーヤに回線を繋ぐ。


「おい、敵の迎撃システムはどれ位壊せた?」

『7割弱って所ですね』

「そうか。なら、もう少し掛かりそうか?」

『恐らくな。だが、時間までは片づける』


そういうと、彼らの回線が切れた。

時間を確認すれば、既に残り時間は6分を切っている。

ならば、出来る選択肢が限られてくる。

ベイルに回線を繋ぎ、要点だけを述べた。


「このまま奴をこの場に引きつけるぞ」

『あ? 撃墜すんじゃねえのかよ』

「そうしたいのは山々だが、下手に深追いすれば時間を超えてしまう可能性が出てくるな」

『それまでに決着つけれるんじゃねえのか?』

「出来る可能性は低いがな。ならば、任務の方を優先させるぞ」


有無を言わさぬ命令。

任務優先ということは、ベイルもまた分かっている。

此処で深追いをすれば、自分達もMAPWの被害を喰う可能性が出てくる。

何を優先すべきか等を論じるまでもない。

しかし、そんなことは彼のプライドが許さない。

目の前の状況と任務の狭間で揺れるベイル。

それが分かっているからこそ、アキトは小さくため息を吐き、告げた。


「頭を冷やせベイル・シュノームベルト。お前が望む戦場はこんな所で終わらせるつもりか?」

『……チッ、了解』

「……それに見せ場くらいは容易をしてやるから安心していろ」


再びペダルを踏み込み、目の前のゲシュペンストに向かって加速していく。

今すべきことをあのゲシュペンストの足を止めること。

ならば、右腕に積まれているホーミング・ミサイルの照準をゲシュペンストにセット。

右手の引き金を引くと、同時に6発のミサイルが発射させた。

しかし、そのままミサイルはゲシュペンストに―――届く事はなかった。

ゲシュペンストは迫りくるミサイルをマシンガンの連射で全弾当てて、空中で爆発させた。

衝撃も反動もゲシュペンストには届いていない。

だからこそ、彼は思いっきりペダルを踏み込む。

噴き上がるブーストと襲いかかる加速による衝撃。

そんな事は一切構わずに彼はゲシュペンストに向かいながら―――上空を通りすぎた。

そのままペダルを弱めながら、右側へと操縦桿を振る。

右側へとブースターが振り向き、そのまま一気に旋回した。


「取ったぞ!」


既にその銃口はゲシュペンストに照準が合わせられている。

ゲシュペンストもそれに気づき、半歩を動くことで振り向こうとする。


『遅せえんだよ!』


その隙をベイルは見逃さなかった。

背後から迫りくるミサイルにとっさに防御を取るゲシュペンスト。

しかし、轟音と衝撃、そして、爆炎はゲシュペンストの足を確実に絡み取った。

ほんのわずかな隙。

しかし、そのわずかな隙がゲシュペンストのパイロットの追い込む隙となった。

照準が合わせられた銃口の引き金を引く


燃え盛る炎の中を一直線に迫る弾丸は―――ゲシュペンストの足を貫通した。


うち貫かれた箇所が一気に爆発を起こし、移動不可へと追い込まれる。

だが、それはこちらも同じことだった。


「ハウンド1から各機へ―――撤退だ。これ以上はMAPWの餌食となるぞ」

『了解。迎撃システムについては全て破壊が終わった』

「そうか。あとはこちらも指定の位置まで退くだけだ」


タイムリミットが迫っている以上、深追いをすれば自分達も巻き込まれかねない。

片足を無くしたゲシュペンストの射程圏から離れるように浮上する。

そのままMAPWの爆発に巻き込まれないように指定の位置まで一気にブーストで加速させる。

この基地やゲシュペンストがどうなるかなど興味はない。

既に自分達に果たすべき任務は終わった。

もしその基地の人間やゲシュペンストのパイロットが生きていようとも、戦場で出れば誰であれ撃つだけ。


それこそが自分達、兵士の役目なのだから。


そして、背後に広がる爆発と轟音と共に4機のリオンは空を駆けていく。

次なる戦場を求めて―――。



★ ★ ★ ★ ★



MAPWが連邦軍基地に着弾し、4人が帰還している頃。

その情報を己の戦艦『ストーク』の中で聞いていたセフィリア艦長とレミリス副長は胸をなで下ろす。

信頼や実力は認めているものの、戦場に居れば必ず生き残れる保障はない。

それは4人に限らず、自分達も変わりない。

この戦艦も対艦装備や機関砲も装備されているものの、わずかな損傷ですら乗組員の怪我にも関わりかねない。

少なくとも今は任務も終えて、少し安堵の息を吐く。


「各員、警戒態勢を1から2に変更。彼らが戻り次第、この戦線から離脱します」

「しかし、今回は無事に成功して何よりです」

「そうね。でも、流石にこの程度はこなして貰わないといけないというのは私の期待の持ちすぎかな?」

「さあ。それで彼らが言うことの聞くのでしたら、私は何も言いません」

「まあ、それで言う事を聞くんだったら安いものね」


しかし、それで言うことが聞くのであれば前任者達が上官の絶対命令について聞かせている。

つまり地位とは別のもので彼らに信頼を与えなければならない。

そう―――力や能力などでなければ、彼らからの信頼を得ることは出来ないのだ。


「(高い難易度であるけど、やれない事はないわね)」

「ところで、他の拠点はどうなっているのか、聞いていないか?」

「あの、艦長……」

「どうしたの?」


オペレーターの戸惑いを含んだ声にセフィリアは伺う。

その表情も戸惑いを隠し切れていないようだった。


「ラングレーを襲撃を行っていたテンペスト少佐の部隊から一報が入りました。任務失敗だそうです」


その言葉に周囲はざわめきだす。

テンペスト・ホーカーの実力はコロニー統合軍の中でも上位に入る人材であり、

かつて特殊戦技教導隊というPT用モーションパターンを産み出すほど操縦技術に優れたエリートパイロット達



その一人であるテンペスト少佐の部隊が任務に失敗するという事は周囲とっても驚きを隠せない。


「静かにしろ。で、その詳細は分かっているのか?」

「はい……地球連邦軍の新型2機及び特機、そしてヒリュウ改が実戦投入された後、MAPWを撃墜したとのこ

とです」

「そう―――向こうもただではやられない訳ね」


DCの先駆けと共に暗雲も立ち込めるような予感をセフィリアは隠し切れなかった。

そう―――向こうもまた自分達同様に己の剣を隠し、磨き続けていた。

どちらにしてもラングレーの落とせなかった事は手痛い。

あの地点は北米を護る最重要拠点の一つである為、落とした時の足掛かりも大きい。

しかし、その新型と特機がラングレーの拠点を抑えられては厳しくなるのが目に見えている。

少なくとも特機や新型の情報を見てみない事には後の対策も立てることが出来ない。

そう―――彼らがラングレーから出ていかないという保障など何処にもないのだから。

そして、自分達と戦わないという保障もまた存在しない。

その為にも今は情報を集める事を優先させる。


「今は4人が帰ったら、彼らの情報を共有しあいましょう」

「ですね。とりあえず送られてきた情報は何時でも開示出来るよう準備をしておいてくれ」

「分かりました」

「さて、ラングレーでこれなら他にも隠し玉があるとみていいでしょうね」


セフィリアは他の連邦軍基地にも秘密裏に開発している機体と読んでいる。

今回はゲシュペンスト一機で済んだものの、次はどうなるか分からない。

この日、4匹の猟犬は戦場へと放たれた。

しかし、その先は未だ先行きの見えない暗雲に包まれているのだった。




あとがき
お久しぶりです、シリウスです。
俺の精神力が尽きました。
生まれて初めてのロボットものの戦闘シーン。
正直此処まで難しいとは思ってみませんでした。
まだ始まったばかりなのに俺の方が先行きが不安です。
それでは、またいつの日にか会いましょう
2013/01/20(Sun) 01:06:49 [ No.992 ]

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